放送したお宅
2009年1月18日(日)放送
東京都葛飾区・河内邸
−祭りに人が集う 下町・国産木材の家−

2007年8月完成

敷地面積 125平米 (38坪)
建築面積 68平米 (21坪)
延床面積 168平米 (51坪)
木質ラーメン構造
建築費:非公開 坪単価:非公開



東京・下町の建て込んだ住宅地の建物。防火基準を満たすため、左右にセメントボードを張っていますが、構造は木造。しかも、構造部分と床や建具など目に見える部分は全て国産木材を使用しています。

3台分のガレージは、車を出せば宴会場に。こうした宴会を、この辺りでは「土間会」と呼んでいます。お祭りの日は、ここに仲間が集まり、景気を付けてから繰り出します。

床は国産カラマツ材。通常は柱・梁に使われる12cmの角材を敷き詰めています。国産材を使う事が林業の活性化、ひいては日本の森林を守る事に繋がるのだそうです。

建物中央の階段室。周囲の部屋との仕切りを型ガラスにして、採光しています。北側の和室は約12畳大。将来ホームシアターになる予定です。

2階南側は、家族室と名付けられた約20畳大のLDK。人が集まる事が多いので、長さ3.6mの大テーブルと同じ長さの座台を置いています。南面は全面ガラス戸。

キッチンには業務用の設備を使用。かつて料理人を目指していたご主人が腕を振るいます。南側のデッキテラスは周囲を囲って、プライバシーを守りつつ開放感を演出。

2階北側にある水回り。FRP仕上げされた浴室に、檜葉(ヒバ)材の浴槽を置いています。ベランダに隣接していて通風が良いので、メインテナンスも楽だそうです。

3階は、階段室を挟んで対称に2つの個室。弧を描く天井が、屋根裏部屋的な雰囲気を醸します。曲がった梁は、特注のプレス枠に嵌めて作られた物です。

建築家のプロフィール
よしだ きんじ
1962年   東京都葛飾区生まれ
1984年   芝浦工業大学建築学科卒業
1986年   芝浦工業大学大学院建設工学専攻修士課程修了
1986年   一色建築設計事務所勤務
1987年   某建設会社勤務(施工管理)
1989年   フリ−で設計創作活動
1991年   Plan and Do design system主宰(現在に至る)
2003年〜2006年   明治大学工学部非常勤講師
2005年   東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程単位取得退学
2005年〜   足立区まちづくりカウンセラー
2005年〜   日本建築学会最先端情報技術WG委員

受賞歴
1984年   建築学会設計競技 地方入選
1985年   大阪心斎橋筋ア−ケ−ド コンペ コンセプト部門 第1席入選
1996年   住建施工例コンテスト 入選
2004年   千倉駅舎及び周辺広場デザイン計画策定公開コンペ 最優秀賞受賞
 
Plan and Do design system
連絡先   〒120-0005東京都足立区綾瀬3-17-11
TEL   03-5682-2111
E-mail   m@p-d.jp
URL   http://www.p-d.jp/
 
建築家の一言

「木造な都市住宅」と題したこの作品は、木造らしさを感じられる都市住宅の試みです。密集市街地においては、建築基準法等の防火上の観点から、木の部分は燃えない材料でことごとく被覆されてしまい、木造の建物をそのまま木造らしくつくることはとても難しいのが現状です。この建物では、燃え代設計の木質ラーメン構造によって、木造らしい木造建物の実現を試みました。
また、3台分の車庫スペースの要望を受けて、車庫を積極的にコミュニケーションや幅広い活動の場として展開することを提案しています。車が好きな施主が、日常的には、車仲間や近所の友達と、玄関先に腰かけて雑談を楽しみ、また、祭りの日には、車を外に出して、神輿の担ぎ手達が土間で腰をおろし、わいわいがやがや飲んで食べて休憩するところになります。通りすがりの人たちも、大人も子どもも巻き込んで、町中がしゃべり出すような下町ならではの光景が、これからもここで展開されていくことでしょう。
できることなら都会に住む子供達にも、本物でつくった家によって原体験空間を形成してあげたい。ふるさとを持たせてあげたい。木をいとおしく思い暮らすことは、下町をいとおしく思うことに繋がっていき、住む人が、永く大切に住み継ぎたいと思うような家や下町になっていくと思います。
ゴッツイ木の角の上に裸足で載ってみると、伝わってくるのです。街と森は繋がっているということが。

 
渡辺篤史の感想
国産材を最大限使って作られた建物。「コンクリート打ち放し」はよくありますが、河内さんのお宅は「木造打ち放し」と呼びたくなるほど、木の力強さを色濃く感じさせてくれます。
また、多目的土間のある1階、2階の業務用厨房と大テーブルを備えた2階と、大勢の人を招いて共に楽しみたいという建主のサービス精神にも溢れています。
これらの要素が相乗効果を発揮し、とても居心地の良い空間になっていますね。