放送したお宅
2008年12月21日(日)放送
東京都板橋区・角田邸
−明かりを導く“フラップ窓” やわらかい光に満たされた家−

2008年3月完成

敷地面積 80平米 (24坪)
建築面積 39平米 (12坪)
延床面積 103平米 (31坪)
木造在来軸組
建築費:2300万円 坪単価:74万円



アプローチ部分を除いて四方を隣家に囲まれた旗竿形敷地。車が縦に2台置ける長いアプローチは砂利敷きです。仕事部屋への出入りし易さを考慮して、玄関土間を広くとっています。

2階はワンルームのLDK。リビングとダイニングの間は小さな段差で緩やかに間仕切ります。上方から光を採り入れる『フラップ窓』が、囲まれた敷地でプライバシーを守りつつ室内を明るくします。

1階と2階、2階と3階の間には小さな段差が設けられています。これは上下階を繋いで、光と風を家中に行き渡らせると同時に、家族が互いの気配を感じられるようにとの配慮です。

シンプルなキッチン。ダイニングとの間の収納を高くする事で、リビングダイニング側からの見た目をスッキリさせます。ここも『フラップ窓』で1日中明るい場所になっています。

ダイニングから約40センチ床を高くしたリビング。ここも『フラップ窓』効果で、1日中安定した光が入ります。吹き抜けを介して3階とも繋がります。

3階の階段を上がってすぐの場所はDEN。子供たちの勉強場所です。さらに1段上がった奥の部屋が、将来、子供たちの寝室になる予定の左右対称の部屋です。

1階奥の寝室にも小さな『フラップ窓』が設けられています。隣接する水回りには、寝室を通らずに出入りできる動線も確保されています。

玄関に最も近い場所が奥さんの仕事室。写真家という仕事柄、機材の出し入れが多いので、玄関に近く、靴を履いたまま出入りできる土間にしました。

建築家のプロフィール
河野 有悟
1969年   東京生まれ
1995年   武蔵野美術大学建築学科卒業
1995年   早川邦彦建築研究室
1998年   武蔵野美術大学建築学科助手
2002年   河野有悟建築計画室設立
2003年〜   武蔵野美術大学非常勤講師

受賞歴    
2008 グッドデザイン賞
2008 平成20年度 日事連建築賞 優秀賞
2008 World Architecture Community Awards 1st Cycle Winners
2008 第34回東京建築賞 住宅部門入賞
2007 日本建築美術工芸協会 第6回芦原義信賞奨励賞受賞
2007 PEN クリエイティブアワード審査員特別賞
2007 第3回竹山実賞   他
 
河野有悟建築計画室
連絡先   東京都台東区東上野6-1-3東京松屋UNITY1101
TEL   03-5948-7320
FAX   03-5948-7321
E-mail   contact@hugo-arc.com
URL   http://www.hugo-arc.com/
 
建築家の一言
周囲を全て隣地の建物に囲まれた住宅密集地。旗竿形状の狭小でもある変形敷地に、風通りのよい、明るく快適な住まいをつくることが要望でもあり、テーマでもありました。
壁をフラップ状に上方に向けてあけた採光(開口)を設けて、床面積を削ることなく、トップライトに代わる明るさを確保しました。開口部の位置や形状は周囲の建物や視線から検討し、場所や階によって変化します。また、この操作がレリーフ状の壁と光の美しいグラデショーンを生みだして住まいを彩ります。 採光と換気の為の窓を役割分けし、また、少しずつレベル差をとった床と床の間を空気が流れ、家全体の通気・換気が十分に保たれます。
壁によって部屋を仕切るのではなく、床のレベルさで場所の用途を定めています。空間に浮ぶ「ひとつの床=ひとつの場所」という考え方で、これによって様々な生活の場面を1体の空間におおらかに包み込んでいます。
 
渡辺篤史の感想
旗竿形の四方を囲まれた小さな敷地です。しかし、この2階に身を置くと、とても広がりを感じます。ユニークな作りの窓のお陰でしょうか。壁面に開口がありません。天に向かって末広がりになった上から光を受け止めます。プライバシーを守ると同時に、柔らかい光が室内を満たします。この淡い光が壁までの距離感を曖昧にして空間の広がりにも貢献しているように感じます。
若い夫婦、そして子供達に希望を与えてくれるような空間になっています。