放送したお宅
2008年12月14日(日)放送
東京都目黒区・釜井邸
-家を隅切り木を植える 4角い敷地に7角形の家-

2007年12月完成

敷地面積 68平米 (21坪)
建築面積 34平米 (10坪)
延床面積 97平米 (29坪)
木造在来工法(地下鉄筋コンクリート造)
建築費:3100万円 坪単価:105万円



ほぼ正方形の敷地の中央に7角形の建物。4隅にできた坪庭に植栽を施しています。込み入った住宅地で、緑に囲まれた環境を生み出し、全ての窓から緑を楽しめます。

玄関から上階への階段は、パンチングメタルで軽やかな印象。北西面の高窓からは植栽のメグスリノキが見えます。地階は、2000冊以上の本が収まる図書室。

高い位置の水平スリットから植栽を見上げて楽しめます。中央の細い柱は、床が「盛り上がって」くるのを防ぐ構造上重要なものです。

地階の一角は主寝室。枕元に採光用の窓が設けられています。1階東南角の長男室からも緑を楽しめます。

1階北東は水回り。ゆがんだ5角形の部屋に、洗面室と浴室を機能的に配置。浴室の窓からも、やはり緑を楽しめます。

2階は、約20畳大ワンルームのLDKです。ソファ正面の横長の窓は、隣地の屋敷林を借景。南東位置にある窓からは庭のマテバシイが正面に見えます。

「コ」の字形レイアウトのキッチン。背後の大窓からの採光と、正面の窓からの借景を楽しみつつ炊事ができます。南西のテラスにある階段は屋上へのアクセス。

低層住居専用地域のため、屋上からは近隣の建物の屋根を越えて景色が広がります。軽やかなデザインの手摺りは、建築家の「自信作」です。

建築家のプロフィール
石原 健也
1959年生まれ
1983年   九州芸術工科大学大学院修了
1989年   仙田満+環境デザイン研究所勤務後
デネフェス計画研究所設立
現在   千葉工業大学工学部建築都市環境学科准教授
 
株式会社 デネフェス計画研究所
連絡先   〒101-0041 東京都千代田区神田須田町1-32福原ビル2階
TEL   03-5297-5741
FAX   03-5297-5740
E-mail   info@denefes.co.jp
URL   http://www.denefes.co.jp
 
建築家の一言
狭小な建ペイ率50%の住宅地にどんな提案ができるだろうか、と考えたのが設計の始まりでした。「本に囲まれて生活したい」というご主人、「まわりの緑を眺めながら暮らしたい」という奥様。そのためには常識的な家のかたちをしていなくても構わないと考えたご夫妻のチャレンジ精神によって、この住宅は生まれたのだと思います。
狭い敷地に、大きな家と変わらぬイメージを持ち込んだ小住宅がひしめき合うことで、住宅地の景観は悲惨なものになっていきます。限りある空地を小さな庭として独占しようとするのではなく、周囲との連続において考え、つくることができれば、小住宅にはもっと積極的な価値が見いだせるのではないかと考えています。
 
渡辺篤史の感想
敷地面積が20坪、建ぺい率は50%ですから、建物を建てられるのは、わずか10坪です。ここに7角形平面の建物が計画されました。多角形にすることで、同じ面積の方形の建物に比べ、多様な空間が生まれているように感じます。窓の穿ち方も見事です。景色を上手く切り取って、住宅街にもかかわらず緑の風景を存分に楽しめます。
“プロフェッショナルな設計家は建主のためにこれだけ一所懸命に考えるものである”という証のような建物でした。