放送したお宅
2008年11月2日(日)放送
東京都武蔵野市・伊藤邸
− 商店街の真ん中で畑仕事? 空中菜園のある家 −

2007年11月完成

敷地面積 81平米 (25坪)
建築面積 57平米 (17坪)
延床面積 156平米 (47坪)
鉄筋コンクリート造
建築費:5320万円 坪単価:112万円



商店街の真っ只中。間口約5m×奥行き約16mの所謂「ウナギの寝床」形敷地。以前はご両親が寿司屋を営んでいた思い出のある場所です。

3角形の土間を広い玄関ホール。中が下足箱になった作り付けベンチは現代の縁側。壁に飾られた「千社額」はお寿司屋さんだった時代の思い出の品です。

3階のLDK。斜線規制のために傾斜した西側の壁が空間に変化を与えています。南の窓外には小さなガーデンがあり、3階でも植栽を楽しめます。

コンパクトな「コ」の字形キッチン。明るく開放的な場所。屋上に繋がる階段に近く、収穫した野菜をすぐに調理できるベストポジションです。

2か所のバルコニーに面した明るい水回り。浴室の内壁の一部にガルバリウム製の外壁材を張ることで、外部空間=露天風呂のようにも感じられます。

地上から9mに設けられた「空中菜園」では、20種類以上の作物が育っています。土の深さは約15cm。断熱性能の向上にも寄与します。

2階南側が長男室、北側が主寝室です。廊下には家族の作品が飾られ、ギャラリーのような空間になっています。

1階は母親室。ミニキッチンやトイレがあり、2世帯住宅的な使い方も可能です。地階は長女室。ドライエリアから光が差し込みます。

建築家のプロフィール
増田 政一
1976年   長崎総合科学大学建築学科卒業
    ゼネコン設計部、ハウスメーカー、黒川紀章建築都市設計事務所等を経て
1987年   (株)アルクデザインパートナーズを3人共同で設立 代表取締役
1998年   (有)アルクデザイン 増田政一 一級建築士事務所設立 
現在に至る
 
有)アルクデザイン増田政一 一級建築士事務所
連絡先   東京都目黒区自由が丘1-21-7,204
TEL   03-3724-3993
FAX   03-3724-3994
E-mail   masuda@arc-masuda.co.jp
URL   http:/www.arc-masuda.co.jp
 
建築家の一言
伊藤さんの設計を引き受けることになったのは2005年に建もの探訪で放送されたYさん宅をご覧になったのが、きっかけでした。
敷地は南側道路に面した,狭い間口の南北に細長い矩形の平坦な土地です。ここに、ご夫婦と子供2人、御主人のお母様の5人3世代が快適に住むための住宅を希望されました。奥様は野菜作りができるように屋上菜園のスペースを希望され、屋上を全面利用して屋上緑化の仕様として設計しています。鉄筋コンクリート造の床は屋上緑化のおかげで断熱性能が向上して四季を通じて快適です。3階天井はコンクリート打ち放しとし天井材を張らないで済み天井の高さも高くすることができました。敷地が狭いため地下も有効利用して居室1室と、奥に納戸を設けています。部屋は玄関ポーチのドライエリアから光が差し込み地下室と思えない明るさです。地下から3階までの階段はスリットからさし込む光や景色やグリーンを眺めながら心地よく移動できます。夜の階段も間接照明で演出された空間として,上下の移動目的だけの無味乾燥な場所にならないように設計しました。LDKは隣家が迫っているため3階に配置し3カ所のサッシやトップライトで明るく開放的な空間です。洗面、浴室は南側の開口と北側の坪庭との連続ある空間で光と風が十分取り込めます。
これからも、できる限り光、緑、風等の自然を取り入れた快適な生活空間を創造して行きたいと思います。
 
渡辺篤史の感想
商店街の中の元はお寿司屋さんだったという狭小地に立つモダンなコンクリート打ち放し住宅です。3世代同居ということで、それそれの部屋を確保しつつも、余白的な部分が残されているのがうれしいですね。3階のダイニングキッチンは、屋上の菜園で採れた野菜をすぐ調理し楽しめる場所。都会で暮らす生活の便利さだけでなく、人生を楽しむための器になる建物です。