放送したお宅
2008年7月13日(日)放送
千葉県匝瑳市・小関邸
− 6代の歴史をつなぐ 築130年の再生古民家 −

2007年6月完成

敷地面積 1866平米 (616坪)
建築面積 143平米 (47坪)
延床面積 162平米 (53坪)
木造伝統工法
建築費:3700万円
(解体費136万円含む)
坪単価:69万円



背景に屋敷林のある約600坪の敷地。5代に渡って住み続けられた築130年の古民家を再生した建物です。一旦完全に解体し、新材と組み合わせて建て直されました。

古い蔵戸を使った玄関を入ると広い土間。ハーレーとバーカウンターがアメリカンな空気を醸します。土間には床暖房が入っていて、冬でも快適。

カウンターの向かいは台所。ヘビーデューティな業務用の設備です。家全体を見渡せる場所にあります。「お茶ノ間」と呼びたくなる食堂は掘り炬燵式。

5mの吹き抜けを設けた廊下。高窓から光を取り込んで家中を明るくします。日本家屋の弱点を克服する設えです。

板張りの居間。高い天井を走る梁が力強い表情を見せます。壁も昔ながらの土壁。自在鉤など和風の物に混じって薪ストーブなど洋風の物も違和感なく置かれています。

薪ストーブの下は大谷石張り。煙突は廊下の吹き抜けから屋根に抜けています。建具は以前の家の物が数多く流用されていて、家族の歴史を伝えます。

北側は奥さんの部屋。趣味のアジアン雑貨が並びます。西の端は息子さんの部屋。こちらは、レゲエやヒップホップ。家族それぞれの趣味の場所が確保されています。

主寝室は2階。吹き抜けに面した明るい屋根裏部屋のような設えです。お風呂はモダンな空間。入浴しながら屋敷林の緑が楽しめます。

建築家のプロフィール
山田 哲矢
平成8年3月   福井大学大学院博士前期過程修了
平成8年4月   (株)日立建設設計入社
平成11年4月   (株)文化財保存計画協会入社
平成12年10月   建築設計事務所 山田屋 設立

 
建築設計事務所 山田屋
連絡先   東京都八王子市北野台1-11-2
TEL   042-635-5636
FAX   042-635-5636
E-mail   yamadaya_jp@nifty.com
URL   http://homepage2.nifty.com/yamadaya/index.html
 
建築家の一言
この大寺の家は、築130年の萱葺き民家であった。
古民家の軸組には手を入れず、これと整合性を取った軸組を増築し、新たな家として構築した。
伝統木造の醍醐味は、力の伝達がそのまま形として現れること。木という素材に愛情を注げること、と私自身は感じている。
木の架構をいかに美しく見せることができるか。それでいて、はしゃいだデザインをしてしまってはいけない、まるで、工芸品を造り上げるのと似ているのかも知れない。
先人から受け継いだものを次代に繋ぐことを念頭に設計作業を行った。
ベタ基礎の上に、土台を敷かず礎石建ちとし、足固め、差鴨居、梁折置き(腮組)、とした。また、通し貫を入れ、必要箇所に合板による耐力壁を最小限で配している。(地震時に仕口を傷めても困るので)
中廊下に出桁の2階を入れ込むことで、路地風情の見せ場としている。余白に意味を持たせ、建物に大らかさを付与したかった。
伝統木造が少しづつ見直されつつある今だからこそ、誠実に技術や意志を継承しようと思う。
職方、施主、設計士が三位一体となったからこそ、竣工した今、喜びと充実感を分かち合えることができた。
 
渡辺篤史の感想
周囲を大樹や竹林に囲まれていて、それらが気持ち良い空気を運んでくれます。素晴らしい環境です。 古民家を再生したお宅です。古い材と新しい材が手を結んで、これまた気持ちの良い空間を生み出しています。古い物を大切に長く使うという事は環境にやさしいんですが、小関さんのお宅は熱環境にも優れていて、冬は薪ストーブだけ、夏は窓の開け閉めだけで快適に過ごせるそうです。周囲の環境、建物、日本の伝統の良い所をもう一回考えるきっかけになる建物でした。