放送したお宅
2008年3月30日(日)放送
神奈川県川崎市・向山邸
- 外は小さく 中は大きく 東西に風が抜ける家 -

2007年6月完成

敷地面積 220平米 (66坪)
建築面積 88平米 (27坪)
延床面積 156平米 (47坪)
木造軸組在来工法
建築費:3870万円
坪単価:82万円



開口をほぼ東西に限定。個性的な角度の屋根。天然スレートの屋根材でくるんだような外観。全て、近隣に配慮した結果生まれた、奥ゆかしいデザインです。

玄関に入るとすぐ階段。約1.2mと幅が広く、光に導かれて自然に2階へと足が向かいます。カーペット貼りの柔らかい足触り。

約28畳のリビングダイニング。屋根型そのままの天井が空間に広がりを与えています。1辺が1.5mの正方形の食卓は、気分に合わせて座る位置を変えて楽しめます。

ダイニングからの視線を遮らないよう90cm下げたリビング。作り付けのソファに包まれるように寛げます。東南角の本棚は、大空間を支える構造壁を利用したものです。

奥さんが希望した外が見えるキッチン。テラスに面した開放的なバスルーム。その両方からアクセスできる食品庫は、洗濯機も置かれ、家事動線をコンパクトにまとめています。

2つ目の階段を下りると約10畳の和室。東西の障子とガラス戸は全て引き込めるので、全開すると屋外との一体感が味わえます。壁は土佐和紙張りです。

車庫にもアトリエにもできる多目的な土間。玄関側にも出入り口があります。ドアが当たっても平気なようにと皮で作った郵便受けがお洒落です。

主寝室と子供部屋は「守られた」雰囲気を作るため、階段を2つ設けて玄関からの動線を長くとり、テラスには格子を付けています。

建築家のプロフィール
向山 博
1972年   神奈川県藤沢市生まれ
1995年   東京理科大学工学部建築学科卒業
1995年~1998年   鹿島建設
1998年~2001年   シーラカンスK&H
2003年   向山建築設計事務所 設立
 
向山建築設計事務所
所在地   東京都世田谷区北沢3-15-7-103
TEL   03-5454-0892 090-2224-1920
FAX   03-5454-0892
E-mail   mukoyama@mukoyama-architects.com
URL   http://www.mukoyama-architects.com
 
 
建築家の一言
土地探しから5年とゆっくりとしたペースで設計は進みました。敷地は住宅街でありながら、畑が多く残るのどかな環境にあります。西側は段差で1層分下ったところにブルーベリー畑が広がっている。残された緑地や外気を最大限に室内に取り込めるスペースを1、2階それぞれに確保し、リビングダイニングと和室としました。1階には和室以外にも寝室などの諸室もあるが、1階玄関からは直接行けません。いちど2階のリビングダイニングへあがり、もうひとつ別の階段で1階に降りることで1階諸室に行ける。それは限られたスペースをひろく感じるために、あえて動線をつなげて一本にし、移動距離を長くしている。家の中の移動をむしろ楽しみたいと考えました。全体像が簡単にみえてしまうような構成にせず、移動のなかでの空間体験が蓄積してパズルのように全体像が作られていければと考えていました。
 
渡辺篤史の感想
周囲に緑の多い良い環境の敷地です。それを愛でるための大窓ですが、設けた位置が絶妙です。近隣のプライバシーを侵さず、また、自らのプライバシーも守っています。
室内も良く考えられていて、食堂からの視線を遮らないよう居間を下げているんですが、その効果は抜群で「抜け」の良い空間が生まれています。
近隣にも配慮がされた建物は、住み心地が良いでしょうし、また、そういう奥ゆかしい気持ちが滲み出ているんでしょうね、建物の表情も良く見えます。