放送したお宅
2008年3月2日(日)放送
東京都・会田邸
- 飾らないデザイン 木のぬくもり 家具の中に暮らす家 -

2007年7月完成

敷地面積 121平米 (37坪)
建築面積 36平米 (11坪)
延床面積 64平米 (19坪)
木造
建築費:1900万円
坪単価:98万円



フランスのル・トロネ修道院からイメージした外壁はまさに大地の色。建築面積わずか11坪のシンプルな外観。

入口の高さは180cm、幅は60cmとあえて狭くした玄関は室内の広がりを強調するため。内壁には月桃紙を使用。

天井4.7mの吹き抜けダイニング。装飾を最小限に抑えた「ミニマル」なデザイン。メキシコを代表する建築家ルイス・バラガン邸をイメージしたという階段とフランスのアンティークランプが空間を引き締めます。

対面式のキッチン。カウンターは床材にも使用しているカリン材。作業台には手元を白熱灯が照らします。

家具デザイナーでもある建築家のデザインした家具を置くことで、見事に家と調和しています。

ダイニングの奥にある和室。吹き抜けになっているダイニングとの天井の高低差が落ち着いた雰囲気を演出。アコーディオンカーテンで仕切ることも出来ます。

2階はリビング。引き締まった1階に比べ、くつろげる空間になっています。北側の壁は唯一の収納スペース。

リビングの奥に寝室。吹き抜けで1階と繋がっています。

建築家のプロフィール
小泉 誠
1960年   東京都生まれ
1985~90年   デザイナー 原兆英・原成光に師事
1990年   Koizumi Studio 設立
2003年   こいずみ道具店併設
 
Koizumi Studio
所在地   〒186-0003東京都国立市富士見台2-2-5-104
TEL   042-574-1458
FAX   042-575-3646
E-mail   koizumistudio@vega.ocn.ne.jp
URL   http://www.koizumi-studio.jp
 
 
建築家の一言
隣地には木々に囲まれた古くからのお宅が建ち、虫や鳥の気配がいつも感じる良い場所だ。30代の施主夫婦は今後の生活環境の変化に対応できる家づくりを希望しながらも、今現在を元気に気持ちよく暮らせる住まいを思い描いていた。将来的な生活環境の変化に対しては、現状の環境をコンパクトにまとめることで敷地に余白を残し、後に増築可能な計画とした。その為に今を無駄なく潔く暮らせる気持ちを共有する事からこの家づくりが始まった。そして出来上がった家は、点在した暮らしの機能を階段の上り下りや壁の隙間を超えたりすることで曖昧に仕切り、トイレ以外には建具のない大らかな家となっている。
計画の途中、施主夫妻から幾つかの言葉が出て来た。「部屋は常に明るくなく暗さも感じたい」との話から、この家の主光源となるよう計画した西側のハイサイドライトに内板戸を取り付け、建築的な調光装置として機能するようにした。「照明はこいずみ道具店で使っているアンティークランプがいい!」との思いから、パリの街中で骨董市や古道具を幾つもめぐり、ようやく古い白磁のバランサーを見つけ出した。ランプシェードは友人のガラス作家に吹いてもらい、ひとつの道具が出来上がった。
「フランスのル・トロネ修道院って知っていますか?」の問いかけから、外壁にル・トロネ修道院の色の考えを提案した。数年前にル・トロネ修道院を訪れ、修道院自体がその町の石で出来ているため、地と一体化した美しいオレンジピンクの世界だった。そしてその町で拾った石ころが手元にあり、その石ころをもとにこの場所との関係を見ながら外壁の色が決まった。そんな話をいくつも積み重ねながら、家の中のひとつひとつの事柄に思いと意識を共有した。そんな積み重ねがこれから暮らし始めるという意識の拍車をかけたようだ。引渡しの日には小雨模様にもかかわらず、駐車場のアプローチの枕木を埋める為、自らスコップを持ち出し脇目もふらずにひたすら地面を掘り続けるご主人の姿があった。
 
渡辺篤史の感想
ル・トロネ修道院、ルイス・バラガン邸の階段、またフランスのペンダントライトなど新旧の感じさせるものをうまく取り入れています。それをオリジナリティの高い建築家が設計した建物に散りばめることで非常にきちんとした印象を受けます。色んな国の要素を入れる精神性、普遍性を感じさせる落ち着いた建物です。若いご夫婦が生活する営みの場なんですけれども、こんな建物に住むことができて幸せですね。