放送したお宅
2008年2月10日(日)放送
東京都町田市・富永邸
− 離れて繋がる シニア夫婦の小さな家 −

2007年5月完成

敷地面積 107平米 (32坪)
建築面積 43平米 (13坪)
延床面積 95平米 (29坪)
鉄筋コンクリート造+鉄骨造
建築費:2650万円
坪単価:92万円



キャンティレバーが特徴のモダンな外観。2階に設けた大窓は向かいの「母屋」とコミュニケーションを取る為、夜には綺麗に光が漏れ出します。

1階は夫婦の共有スペース。床の一部がグレーチング、天井の一部が強化ガラスになっていて2階と地階を視覚的に繋げています。造り付けの壁には海外生活の長かったご主人のコレクションが並びます。

外に階段を出し、室内の移動は全てエレベーター。バリアーフリーの水回りからエレベーターの動きが見えるのがユニーク。浴室の壁はコンクリートです。

2階、西側は奥さんの部屋。大窓からは元々住んでいた「母屋」が見えます。床の一部がガラスなので1階のグレーチングを通して、地階にいるご主人の様子が分かります。

2階、東側はリビングダイニング。普段はそれぞれのスペースで楽しむご夫婦ですが、食事の時はもちろん一緒。奥の開口からは街並みを眺めることもできます。

お花の教室を開いている奥さん。この家の建築家でもある息子さんが設計した大きなダイニングテーブルのおかげで大人数が来ても対応できます。横スリットのハイサイドライトからは一日中太陽の光が射し込みます。

動線がすっきりしたコの字型キッチン。ここからもエレベーターの動きが分かります。外階段は勝手口に繋がっています。

地階は約10畳のご主人のスペース。ヨーロッパ風の中庭を眺めながら、海外の友人とメールのやり取りを楽しんでいます。

建築家のプロフィール
富永哲史(とみながてつし)
1967年   東京に生まれる。
1990年   東海大学工学部建築学科卒業
1992年   東海大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程終了
株式会社 計画・環境建築 YAS都市研究所入所
2001年   株式会社 計画・環境建築退所
2002年〜   株式会社 富永事務所一級建築士事務所を設立
スタジオとして富永哲史建築設計室を設立
2006年〜   東海大学非常勤講師
 
株式会社富永事務所 一級建築士事務所 富永哲史建築設計室
所在地   東京都町田市玉川学園1-25-27
TEL   042-739-3591
FAX   042-739-3593
E-mail   t.tominaga@tomiarc.com
URL   http://tomiarc.com/
 
 
建築家の一言
高齢化した夫婦のために新しい形の最小単位居住空間を提案し、構築しました。夫婦の距離感はそれぞれ皆異なり、時間の経過と共にも変化していくものです。最小単位の空間といっても従来のLDKタイプを構築するのではなく、その距離感にあった空間づくりが必要と考えました。ここでは二人の理想的な趣味のスペースを作ることにより、その微妙な「距離」を生み出し、そこで各々が過ごす時間と共に過ごす時間が新鮮で心地よく大切に感じられるよう、単純な2つの箱型空間を操作することにより理想的な形を導きました。結果として、それぞれの空間を持ちながら高齢者が安心して生活できるスペースになったと思います。
 
渡辺篤史の感想
息子が年老いた両親のために設計したコンクリートのしっかりした建物です。父親のスペースを地階、母親のスペースを2階と分けたことでそれぞれの生活ペースを尊重した間取りです。1階の床の一部にグレーチング、天井の一部にガラスを使用したことで視覚的な「抜け」が生じさせることで、離れていても繋がっている感覚でいられる、この仕掛けが見事です。2階のハイサイドライト、バリアフリーの水回り、そしてエレベーターなどモダンな建物の中にも見受けられる両親のことを考えて設計された要素が、実は世代を越えて普遍的なことなのかも知れませんね。