放送したお宅
2008年1月13日(日)放送
奈良県奈良市・下山邸
奈良 人気建築家の自邸シリーズ(2)
- 30度の傾斜地に立つ 3世代6人の“山荘” −

2005年4月完成

敷地面積 446平米 (135坪)
建築面積 159平米 (48坪)
延床面積 188平米 (57坪)
木造 一部鉄筋コンクリート造・鉄骨造
建築費:3588万円
坪単価:54万円



30度の傾斜地。尾根に沿って立つ「母屋」と「離れ」2棟構成の2世帯住宅です。高床を支える細い鉄柱が印象的。

両世帯共用のアプローチは鉄平石敷き。作業は家族総出で敷いたそうです。壁と同様の設えで、一見入口があるように見えない玄関引き戸も楽しい仕掛けです。

基礎のコンクリートに差し込まれたキャンティレバーの階段も面白いですね。階段上には薪ストーブが置かれています。

子世帯が住む「母屋」は巨大なワンルーム。木の質感を生かした内装仕上げと窓から見える木々で、山小屋にいるように錯覚しそうです。

ダイニングテーブル一体のキッチン。広場に面した日当たりの一番良い場所です。寝室として使用されている個室は置き畳で和室の雰囲気です。

リビングから間仕切られていない子供室。ベッドスペースとして使われているロフトが楽しい。水回りも木の質感を生かした仕上げ。

親世帯が住む「離れ」もほぼワンルームと言っていい間取り。内装仕上げは薩摩中霧島壁です。西向きの窓からは生駒山に沈む夕日が美しい。

近隣10世帯と共同で家づくりを行ったコーポラティブ住宅。中央の共有広場はメンバーの憩いの場です。

建築家のプロフィール
垣内 光司(かきうち こうじ)
1976年   京都市生まれ
1999年   大阪芸術大学芸術学部建築学科 卒業
1999〜2001年   阿久津友嗣事務所 勤務
2002年   八百光設計部 設立
2007年   第23回吉岡賞 受賞『オモヤ・ハナレ(下山邸)』
 
八百光設計部(やおみつ せっけいぶ)
連絡先   京都市伏見区深草西浦町6-47
TEL   075-642-1003
FAX   075-642-1003
E-mail   yaomitsu@ams.odn.ne.jp
URL   http://www2.odn.ne.jp/yaomitsu/
 
建築家の一言
この住宅は、斜度が30度を超える緑豊かな斜面地に10世帯からなる戸建コーポラティブ方式によって建てられました。
コーポラティブとは、住人の方々が組合を結成し、共同で事業計画を定め、土地の取得や建物の設計を行う方式のことをいいます。
自然を残しながら斜面地にどのように住宅を建てるのか?
コミュ二ティを創るとはどういうことなのか?
斜面を駆けずり回り、土まみれのワークショップで確信したのは、素敵な環境(自然、家族、社会、制度…)は与えられるものではなく、自らが獲得するものでるということです。
 
渡辺篤史の感想
10世帯によるコーポラティブ住宅です。その根底に、元からある樹木をできるだけ残していこう、という精神があります。努力の甲斐あって残された雑木林と共有広場が10世帯の関係をうまく取り持ってくれています。
下山邸は3世代6人が住まう家です。核家族が増えた現代においては、大きな家族と言っていいと思いますが、その先にコーポラティブの仲間たちという、さらに大きな「家族」がいます。人間関係が希薄になりがちな現代に、新しい「家族」のありようを示しているようにも感じました。