放送したお宅
2008年1月6日(日)放送
奈良県奈良市・山下邸
奈良 人気建築家の自邸シリーズ(1)
- 回廊が結ぶ内と外 木々に溶け込む家 −

2005年2月完成

敷地面積 309平米 (93坪)
建築面積 112平米 (34坪)
延床面積 65平米 (20坪)
木造軸組工法/独立基礎(一部H型鋼杭)+鉄骨造
建築費:1700万円
坪単価:50万円



最大40度という急傾斜地に立つ高床式の建物。奈良伝統の家屋の雰囲気と木に埋もれるような佇まいが特徴です。

玄関ホールはテラスでありながら第2のリビングとも呼べる存在=オープンエアリビングです。目の前の雑木林に手が届きそう。

回廊に囲まれたLDK。敢えて横桟を入れたガラス戸が、かえって奥行き感を強調します。開けば雑木林との一体感が高まります。

生活感を排除する“隠せる”キッチン。このLDKでは時々、三味線のコンサートなども開催されるそうです。

庇の深い山下邸にあって唯一、屋根の無いテラス部分。日差しをたっぷりと浴びられます。回廊の北側はギャラリーやバックヤードとしての機能が、南側は雑木林を愛でる“縁側”です。

全体がモノトーンで統一された中で、引き戸を開けると突然出現する暖かみのある色の和室。障子に映る木の影も美しい。

雑木林に面した開放的な浴室。敢えて照明は無く、遠くの夜景を感じつつ入浴を楽しみます。浴槽は高野槙製。

書斎兼寝室である板の間。文机の下の一人掘り炬燵が楽しい。古道具がたくさん置かれていて、タイムスリップ気分です。

建築家のプロフィール
山下喜明
1963年   大阪府生まれ
1988年   大阪工業大学建築学科卒業
〜92年   木村博昭/ケイズアーキテクツ
1994年   山下喜明建築設計事務所開設
2006年   ycf/山下喜明建築設計事務所に改名
 
ycf/山下喜明建築設計事務所
連絡先   奈良市元林院町40
TEL   0742-24-3600
FAX   0742-24-3600
E-mail   info@yoshiaki-yamashita.com
URL   http://www.yoshiaki-yamashita.com/
 
建築家の一言
奈良公園の北、奈良阪に広がる丘陵地に開かれた住宅地の外周保安林に接する未造成の宅地に建つ自邸です。敷地は新興住宅地内ですが雑木の生い茂る斜度40度を超える急斜面。ここに既存の雑木の伐採を最小限に抑え、残した緑を住まいに最大限取り込めるような建て方を検討しました。元の雑木林としての風景も極力壊したくない。そこで建物の高さを抑えるよう全長20mの東西に細長い平屋としました。更に建物を地盤から切り離して基礎を建物外形より1m程内側に配置し、独立基礎とすることで地盤の掘削面積を最小限に抑え、建物近くの木の根も傷めないよう配慮しました。間取りは、中央の半屋外居間を中心に東を「公」、西を「私」としてLDKと個室を切り離し、二つの個室の間に浴室を配置しました。建築面積の過半数が大屋根で被われた半屋外デッキなのでフラットな庭がなくても(雨の日でさえも)外が楽しめる。それは森を切り開き膨大なコンクリート擁壁で雛壇状に開発するよりもずっと安価なコストで緑に癒され夏を涼しく住まう一つの解法ではないでしょうか。
 
渡辺篤史の感想
緑深い林の中に遠慮しながら立っているように感じる建物です。急斜面の敷地、そこに舟のように暮らす浮遊感も感じます。創意工夫、楽しみが詰まった舟です。各部屋ごとに機能が明確に振り分けられていて、視覚的な変化が楽しめるのも面白いです。
この家の楽しさの源は、自然に対して畏敬の念を持ちつつ慎ましく暮らす、というコンセプトの明快さにあると思います。