2007年9月16日(日)放送
茨城県龍ヶ崎市・坂本邸
- 田園を眺めて暮らす 築120年の古民家再生住宅 -
2006年8月完成
敷地面積 1137平米 (344坪)
建築面積 99平米  (30坪)
延床面積 123平米  (37坪)
木造平屋建て
建築費:非公開
坪単価:非公開



長野県の築120年の養蚕農家を解体・移築した建物。玄関先に置かれた古道具も良い感じです。玄関戸は蔵戸です。

内壁は石膏をベースに藁を混ぜた左官材。調湿効果が期待できます。

約25畳の大広間。天井を張らず、古材の梁を露出させています。材の太さ・長さが大迫力で迫って来るようです。

田園風景を楽しみながら食事ができる囲炉裏。1段下げてあるのがポイント。座りやすいです。自在鉤も古い物を探し出して来ました。

囲炉裏の間に隣接する広いテラス。庭には余った古材を置いて、子供たちの遊び道具にしています。

見た目は古民家に合うように、しかし機能は現代的なキッチン。食品庫の扉は元の欄間です。

寝室などに使われる和室。収納の戸は、元の家の鏡戸をそのまま使っています。200年くらい前に作られた物だそうです。

屋根裏風の2階はグラフィックデザインなどをされている奥さんのアトリエ。最近は絵本作りに凝っているそうです。

今井 俊介(いまい しゅんすけ)
1976年   京都大学工学部建築学科卒業
1978年   京大大学院建築学科修士課程修了
1978~81年   株式会社レーモンド設計事務所
1981年   株式会社アカデメイア設立
1997年   NPO 法人日本民家再生リサイクル協会設立
2001年   民家トラスト株式会社設立
2001年   NPO法人日本民家トラスト協会設立
 
株式会社 アカデメイア
連絡先   〒171-0014
東京都豊島区池袋2-24-2-1402
TEL.   03-5911-6481
FAX   03-5911-6482
E-mail   imai@mt-aca.com
URL   http://www.mt-aca.com
 
 「古民家再生」は、大きく3つに分類されます。もっとも簡単なのは、古民家の解体材を活かすもので、「古材活用」といわれます。
「現地再生」は、その言葉どおり、現地で半ば骨組みだけにし、水平垂直を立て直し、新しいプランのもと仕上げ工事を行うもの。「現地再生」の多くは、その持ち主が、さらに今後の100年の家の歴史を刻むためのものなので、再生に際しては、これまでの歴史をも引き継ぎます。最後の「移築再生」は、解体し、別の土地で新しいプランに基づき再建再生されるものです。「移築再生」の多くは、古民家の住人が変わります。従って、それまで延々と育まれてきたその家の歴史は、引き継がれることはありません。新しい持ち主にとっては、「古民家」での「新築」ということになりますが、しかし建築の文化を引き継ぐことになります。
  「龍ヶ崎の家」は、長野県中条村から、茨城県竜ヶ崎市への「移築再生」でした。ここでは前の持ち主の方も、竣工後に龍ヶ崎に来られ、建築の文化だけでなく、その家に対する想いのようなものの受け継ぎもなされた感じがしました。従来、日本の建築は、使い捨てではありませんでした。従って、大工さんは、新材と古材を特に差別することなく、その構造材、仕上げ材としての評価で、同じように扱っていました。随分古い古民家の解体に立ち会うと、さらに古い年代の材が、「古材」として再使用されているのをよく見かけます。木の寿命は数百年から千年です。「住まう」という文化の担い手として木材ほど暖かく優れているものはありません。「古民家」は「解体」を経て、「再生」され、そのプロセスの中で、私たちにとって大切なものを再生し、継承する、住まいとの関わり方はそうありたいものです。
 

田園と里山を眺める、心落ち着く高台の敷地。そこに古民家を再生しました。日本の気候風土と共に永年歩んで来た建物ですから、居心地が良くないはずがありません。癒されます。現代的な生活をスポイルせずに、この雰囲気が味わえるということは大変贅沢なことだと思います。さらに嬉しいのは、近隣との協力により古民家で街並みが形成されていることです。
ル・コルビュジエら欧米の建築家をも惹きつけた日本の民家に、こうしてリアルに住むという夢のような生活です。