2007年8月5日(日)放送
東京都中野区・釜田邸
- 建築規制が生んだデザイン 9坪!水晶の家 -
2006年10月完成
敷地面積 45平米 (13坪)
建築面積 31平米  (9坪)
延床面積 86平米 (26坪)
RC造(耐震壁付ラーメン構造)
建築費:3600万円
坪単価:138万円



隕石あるいは鉱物の結晶にも見える不思議な外観。建ぺい率や斜線規制など都市住宅が避けることのできない規制に“素直”な形です。

思いのほか広い玄関ホール。仲の良いご夫婦を象徴するように、ゴルフバッグも自転車も2つずつ並びます。

外観と同様、変型のLDK。大窓、2か所の吹き抜けによる“視線の抜け”が広がりを生んでいます。

構造体と一体化したコンクリート製のキッチン。扉付き収納が無いので、置かれた家電や道具もデザインの良い物が選ばれています。

変型のリビングは、座る位置によって違う表情を見せてくれるのが楽しいですね。構造一体のコンクリート製の棚も2段の角度をずらして空間の広がりに貢献。

3階のユーティリティスペース。北面の壁は前面鏡で、吹き抜けと相まって驚くほどの広がりを感じさせてくれます。

清潔感あふれる洗面・浴室。バスタブ前の窓から、さらに外の3角形の大窓を通して空がよ~く見えます。昼間の入浴が気持ち良さそう。

静謐な印象の地下室。擦りガラスのトップライトから淡い光が落ちて、美しいコントラストを見せます。洗面台があるのも機能的。

山下保博
1960   鹿児島県生まれ
1986   芝浦工業大学大学院工学研究科建設工学修士課程修了(三宅理一研究室)
    齋藤裕建築研究所 勤務
    設計事務所㈱,PANOM 勤務
    近藤春司建築事務所 勤務
1991   山下海建築研究所 設立
1995   アトリエ・天工人に改称
1999   芝浦工業大学非常勤講師(~2007年度)
    Project1000設立
2004   有限会社N・C・S設立(Project1000事務局)
2006   事務所名を一級建築士事務所 株式会社アトリエ・天工人に改称
    現在に至る
 
受賞歴・出版歴
2007   日本建築仕上学会学会賞 「作品賞」『aLuminum-House』
2006   作品集「天工人本」新建築住宅特集
    第1回日本構造デザイン賞『aLuminum-House』(構造設計者:徐光)
2005   ソウルパフォーミングアーツセンター国際設計競技「2等」(韓国)『Floating-Palette』
    「GOOD DSIGN AWARD」2005年度
2004   釜山エコセンター国際設計競技「1等」(韓国)『釜山エコセンター』
    第11回空間デザイン・コンペティション作品部門「金賞」『クリスタル・ブリック』
    ar+d award 2004 「最優秀賞」(イギリス) 『セル・ブリック』
 
一級建築士事務所 株式会社 アトリエ・天工人(テクト)
連絡先   〒113-0021
東京都文京区本駒込6-15-16 #301
TEL.   03-5940-2770
FAX   03-5940-2780
E-mail   info@tekuto.com
URL   http://www.tekuto.com
 

敷地は新宿からバスで10分程度の便利なところあり、廻りの環境は40~50年前に開発された古い木造家屋が密集している住宅地で、区の不燃化推進地域の場所です。
4m弱の2方向からの道路にはさまれた44.62㎡の鋭角な敷地は、南面と東面から道路斜線がかかってきて、北側からも斜線がかかるという都心の中でもあまり条件に恵まれない場所ではあったが、もの作りにとても前向きに考える若いご夫婦と私たちの考え方とが共鳴して、この建物がよりよい計画へ進んでいきました。
若いご夫婦の要望は大きくは3つあり、(1)地上のボリュームを最大限確保すること (2)地下室 (3)1階の駐車スペースに屋根をつけるなど、敷地の周辺環境、室内と外部の関係性を整理した中で、今回の地下に埋まる鉱物が生みだされました。
個人の住宅を作るうえで、常に意識することは所有の敷地と公共の道路の関係性であると考えています。今回、道路側に境界を設けなかったことや、1階がピロティーであることが、この街に小さな変化を与えてくれるのではないかと考えています。

 

外部・内部共に○角形と一口に呼べない不思議な形の建物。狭小地で、より機能的に生活するために生まれた必然の形なんですが、そこここに「余白」が感じられます。それは、もちろん物理的な広さではなく、もっと精神的なものです。
若いご夫婦が家づくりのパートナーとして選んだ建築家が、施主のために一生懸命に設計した。あらゆる部分にそれが感じられる素敵なお宅でした。