2006年10月15日(日)放送
東京都渋谷区・伯耆邸
- 都心に大人のオアシス 水ゆらぐ中庭の家 -
2006年3月完成
敷地面積 133平米(40坪)
建築面積 53平米(16坪)
延床面積 127平米(38坪)
鉄筋コンクリート造(地下)+木造在来工法
建築費:4090万円
坪単価:84万円



旗竿敷地の「竿」の部分に少し突き出した玄関。クシ引きの壁がやさしい表情を見せます。大きな引き戸は下駄箱かと思ったら本棚でした。

低い位置の窓からゆらめく水盤が見えます。階段の手すりは鉄製で凝ったデザイン。こだわりが感じられます。

リビングと一体というより、それ自体がリビングのような中庭。モミジも、この庭に似合う枝ぶりのものを吟味したそうです。

落ち着いた色と素材は大人の雰囲気。中庭との一体感は抜群で、実際の面積を遥かに上回る広さを感じます。


板ガラスを利用した洗面台。5角形の湯船。世界に1つ、この家のためにデザインされた水回りです。


1階のタイルから打って変わって絨毯敷きの2階。建築家がデザインし、奥さんのお母さんが製作したステンドグラスがやさしい光を落とします。

吹き抜けに面したワークスペースは、居間との関係性も良いです。寝室でも坪庭の竹が楽しめます。

地階はご主人の趣味のスタジオ。自作の真空管アンプでオーディオを楽しんだり、バンドの練習をしたりします。

廣部剛司(ひろべ・たけし)
1968年   神奈川県出身
1991年   日本大学 理工学部 海洋建築工学科 卒業
1991~98年   芦原建築設計研究所
1998年   建築巡礼の旅
1999年   廣部剛司 建築設計室 設立
2005年~   日本大学 理工学部 海洋建築工学科 非常勤講師
2006年~   明治大学 理工学部 建築学科 兼任講師
著書:   「サイドウェイ 建築への旅」(TOTO出版)
     
 
受賞歴:
第2回木質建築空間デザインコンテスト「茶畑の家」住宅部門 入賞
日本建築家協会 優秀建築選2005 「Barcarolle」入選
2005住宅建築賞・奨励賞 「茶畑の家」
JCDデザイン賞 2002 入選 「Sentimento MARK」
第7回 空間デザインコンペティション 作品例部門 「諏訪の家」  佳作入選

廣部 剛司 建築設計室
住所   〒213-0004 神奈川県川崎市高津区諏訪 1-13-2 広佐ビル2F
TEL   044-833-9798
E-mail   hirobe@luna.email.ne.jp
URL   www.ne.jp/asahi/hirobe/architect/
 
7月に上梓しました著書「サイドウェイ 建築への旅」は建築家として独立する前にした長い旅を中心に、建築やそれにまつわることについて執筆したものですが、伯耆さんにも1冊謹呈させていただきました。そして、頂いた本の感想コメントの中に「日差しが強い今日、開け放した中庭でサイドウェイを読了しました。美しい本でした。」という言葉がありました。
いつも住宅設計をするときには、その場所やご家族の趣向などを考えながら、<自分でも住みたい場所>をつくりたいと思っています。ですから、あの中庭は私にとっても自分だけの空があり、柔らかな風が抜け、周囲から守られた心地よい生活空間のイメージとしてあります。その場所で本を読了してくださった・・・そのこと自体がとても嬉しいことでした。
建築は長い時間をかけて<育って>いきます。伯耆さんのお宅がその生活との対話を繰り返しながら、これからどう育っていくのか? これからも見守っていきたいと思っています。
 
旗竿形敷地なので、外からは玄関の辺りがほんの少し見えるだけ。内部にこんなに豊かな空間が広がっているとは予想外でした。物理的にはタイトな空間を「建築のマジック」とでも申しましょうか、巧みなデザインで精神的に余裕が感じられるものにしています。本当は都心なのに、高めの塀の外には緑が広がっているような錯覚を覚えます。
細部のデザイン性にまでこだわった、建築好きにはたまらない建物でした。