2006年9月10日(日)放送
神奈川県横浜市・今泉邸
- 35度の急傾斜地 全室ハーバービューの家 -
2006年1月完成
敷地面積
207平米(63坪)
建築面積
82平米(25坪)
延床面積
138平米(42坪)
鉄骨造
建築費:5760万円
坪単価:138万円



崖下側から見ると、樹木の陰に階段のような形が見てとれます。玄関は地下にもぐるような形。外観をすっきりと見せます。

玄関を入るとすぐにキッチン。最初は違和感を感じた奥さんも、今は使い勝手が良いので大のお気に入り。何より人に見られても恥ずかしくないグッドデザインです。

港の風景を見ながら食事できるダイニング。並みのレストランより遥かに眺望が良いです。

眺望を良くするため、少し床を高くしたバスルーム。まさに展望風呂。ご主人のお風呂が長くなったそうです。


65インチのプラズマTVが大きく見えない広々リビング。上階のダイニングとも空間的に繋がっていてコミュニケーションがとれます。畳コーナーもくつろげますね。


リビング一体のテラス。ここで、お茶やバーベキューを楽しんでいるそう。住宅街の一角にいることを忘れてしまう眺めです。

息子さんたちの個室からも港を見おろせます。ご次男はトップクラスのアマチュアサーファーです。

眺めが最高の最上階はご夫婦の寝室。斜線規制のために斜めになった梁と屋根が面白い空間を生んでいます。

谷尻 誠
 
谷尻 誠
1974年   広島県生まれ
1994年   穴吹デザイン専門学校卒業
1994年~1999年   本兼建築設計事務所
1999年~2000年   HAL建築工房
2000年   建築設計事務所Suppose design office 設立
現在   同事務所代表
穴吹デザイン専門学校非常勤講師
   
 
受賞歴
2002年   JCDデザインアワード 入選
2003年   JCDデザインアワード 新人賞受賞
2003年   GOOD DESIGN賞受賞
2004年   ひろしま街づくりデザイン賞受賞
2004年   JCDデザインアワード 奨励賞受賞
2005年   JCDデザインアワード 奨励賞W受賞
2005年   JCDデザインアワード 入選
2005年   INAXデザインコンテスト部門賞受賞
     
suppose design office (サポーズデザインオフィス)
連絡先   〒730-0812 広島市中区加古町13-2-3F
TEL   082-247-1152
FAX   082-247-1152
E-mail   info@suppose.jp
URL   http://www.suppose.jp
 
敷地は、わずかな平らな部分を残し80%が傾斜35°という斜面になっており、作業の難しさ・危険性が予測されました。

この場に今泉さんは豊かな眺望を確保することを望まれていました。斜面という不自由である場だからこそ実現できる豊かさを目指し、我々は登り窯の様なシンプルな構造体を繰り返すといった単純性の追求によって施工性への配慮・斜面を活かした空気の対流・斜面にあわせた形態での眺望の確保など可能な限りの合理化を図った建築を提案しました。

この建築の形態によって夏期においては海からの空気が傾斜に沿って下階から上階へと通り抜け涼しくゆっくりと空気の流れる場となり、機械設備に依存しない快適な住環境を目指しました。また、冬場は傾斜に沿って太陽は差し込み暖かい空気を上層のリビング・ダイニング・寝室で扱うことで自然の力を利用した快適な住環境を目指しました。

斜面という一般的には悪条件として扱われる敷地に潜む自然の豊かさを、登り窯建築によって豊かな環境に一変させる事で、新たな敷地の価値観を生むことが出来たのではないかと思います。

不自由である事が、時として豊かさを実現するという、敷地に潜んだ豊かさを今後も提案していきたいと考えています。
 
今泉さんは最初にこの土地をご覧になった時、こんなところに家が建つのだろうかと心配なったそうです。そのくらい大変な急傾斜地で、普通の建物は建てられない。そこで建築家に『既成概念を超えるような建物を』と依頼して、この悪条件を見事に克服した家ができました。まさに既成概念を超えた開放感のある空間です。この建物を設計したのは若干30歳(設計時)の青年建築家。今後の活躍が楽しみです。