2005年3月12日(土)放送
千葉県八街市・篠﨑邸
-感動の名作! 北欧家具と暖炉の家-
2002年7月完成
敷地面積     169平米(51坪)
建築面積       86平米(26坪)
延床面積      126平米(38坪)
木造2階建て
建築費:3200万円    坪単価:84万円



篠﨑さんのお宅はボックスをいくつも積み上げたような建物。外観はどこから見ても全て黒色。実に存在感のある外観です。ご家族はご夫婦に3人のお嬢さん。ご主人と建築家がこだわりにこだわり抜いて建てた家です。

1階のリビングは広さ15畳。室内は外壁の黒色と打って変って白色を基調とした明るい空間となっています。南側の開口部からは白い砂利を敷き詰めた庭が見え、引き戸は障子、簾戸(すど)、ガラス戸が設置してありました。。もちろん全て引き込み式。引き戸のない開放感も楽しめます。

ご主人は大のインテリア好き。フィンランドのイルマリ・タピオヴァーラがデザインした「ピルッカ・チェア」、ハンス・J・ウェグナーの最高作品といわれる「ザ・チェア」、そして、ポール・ケアホルムの名作、「PK22」とひとつひとつはご主人が厳選したものばかり。中でも「PK22」への思い入れが強く、このイスが似合うリビングを作って欲しいと建築家へ依頼したそうです。

ダイニングはリビングから1段あがったところにあります。こちらに置かれた家具もご主人がこだわりました。ダイニングテーブルに選んだのはイルマリ・タピオヴァーラーがデザインしたピルッカ・テーブル。リビングやダイニングに置かれている家具を作ったのはフィンランドやデンマークなどのデザイナーばかり。本当に北欧家具が大好きなんですね。


ダイニングの奥には暖炉室がありました。名前の通りに暖炉の温かい炎を眺められる一切の無駄を排したモダンな部屋です。ご主人は建築家に一切の妥協はしないで欲しいと話したとか。建築家はご主人の思いに設計で応えましたね。リビングからダイニング、そして、暖炉室までの空間の構成力は言葉では表現できない素晴らしさです。私もあまりの嬉しさに涙ぐんでしまいました。


和室は広さ4畳半。こちらの天井・壁は和紙左官となっています。しかも、左官屋さんが和紙左官の経験が無く、建築家自ら施工したそうです。職人ができないなら自分でやる。ここにもこだわりと建築への熱い思いを感じますね。にじり口の奥には、更に1畳ほどのスペースがありました。こちらからはリビングから見えた白色の砂利を敷き詰めた庭が眺めれれます。ご主人が一番好きな場所だそうです。

2階の子供室は広さ15畳。現在は家族みんなの寝室としても使用しています。北側の勉強机は3人分のスペースを確保。姉妹3人並んで勉強する日も近いですね。

篠﨑さんのお宅には他にも美容室がありました。美容室は隠れ家を意識した、日々のストレスから開放されるような癒しの空間となっていました。

 新関 謙一郎 (にいぜき けんいちろう)
   
1969年   東京生まれ
1995年   明治大学大学院修士課程修了
1996年   一級建築士事務所 きき 設立
2004年   NIIZEKI STUDIO に改組
 

NIIZEKI STUDIO


180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-12-3-402                                 
TEL   0422-22-2110
FAX   0422-22-4110
E-mail   studio@niizekistudio.com
 
千葉の郊外にできた小さな美容室併設の住宅です。どこにでもあるような住宅街の一角に建ち、やや異彩を放つ黒い外壁のこの建物は、施主である美容師さんひとりとそのお客さんひとりのための小さな空間と施主家族が生活するための空間からできています。建物も空間も日常とは少し違う空気を感じられるような特別な場所になること、仕事や生活を通し1日中この敷地内で過ごす施主にとってできるだけ変化にとんだ空間になることを心がけて計画しました。外観の印象とは異なり、内部は中庭や天窓から陽が差し込み風が吹き抜ける空間が連なって様々なシーンをつくっています。この建物と共にお施主さんの暮らしがゆっくりと時を重ね、この街の風景となってゆければと思っています。
 
土木・建築行為は自然を壊して、人間が創造する。だから前提として美しくなければいけない。しかし、その美しさ、色々な感じ方があります。篠﨑さんのお宅は黒いキューブ型。素材が木で色合いがモノトーンだから周囲のもの、人、植物を生かしてくれます。内部は随所に篠﨑さんの意向をくんでの細かい配慮が見られます。そして、建築の新しい可能性も感じられ、経年変化が楽しみな家です。この住宅を設計した建築家は当時32歳だったそうです。若い才能の息吹きを感じました。