2005年1月15日(土)放送
東京都目黒区・井手邸
-見せる暮らし 7坪ガラスの家-
2004年2月完成
敷地面積     40平米(12坪)
建築面積      24平米(7坪)
延床面積   77.5平米(24坪)
鉄骨造地階+3階建て
建築費:2200万円    坪単価:94万円



井手さんのお宅は敷地12坪に建てられた建築面積7坪の建物。北側はガラス張りの全面開口。窓越しに生活の様子が丸見えになります。外壁は積み上げられたコンクリートブロック。このブロックの壁一枚で外壁も内壁も兼ねています。

1階の玄関は広さ5畳。階段を上がって奥に見えるのがリビングです。棚は広がりを考慮してオープなつくりにし、ものをお洒落に置いています。ここは玄関というよりギャラリースペースです。

1階のリビングは広さ7畳、天井高4.8メートルの空間。南側の壁はガラスブロック。ガラスブロック越しに入ってくる太陽の日差しが室内を厳かな空間へと導いてくれます。驚いたのは建築面積7坪とは思えないこの開放感。その秘訣はスキップフロアーにありました。空間を遮ることなく、フロアレベルの違いによって部屋部屋を仕切る。空間がつながっているから開放感を演出できます。建築家の腕の見せ所です。

リビングにはモダンな家具ばかりが置かれていました。チャールズ&レイ・イームズのラウンジチェアーとオットマン、イサム・ノグチのプラズマティック・テーブル。そして、ヘリット・トーマス・リートフェルトの直立肘掛椅子。こちらは1958年に再制作された椅子だとか。大変貴重な椅子に座らせて頂きました。まるで背骨がとろけるようでした。


2階のキッチンは広さ5畳。ガスコンロを設備したステンレス製のアイランドはダイニングテーブルでもあります。キッチンに立つ人と椅子に座って待つ人の距離が非常に近く、新鮮です。食事の時には仲良く並んで食べる。会話も弾みそうですね。


3階へ続く階段の踊り場はなんとDJブースとなっていました。ここは奥さん専用のスペース。友人たちとクラブを借り切ってパーティーを開き、そこでDJを楽んでいたこともあるそうです。今ではこの家がスタジオ。いつでも趣味を楽しめます。

3階の寝室は5畳。見晴らしが良く、開放感が魅力的です。目覚めと共にすぐに外が眺められるのがいいですよね。

寝室は南側開口となっています。テラスには竹を植え、外からの視線を遮っています。洋風の家に竹がとても似合っています。窓は開放でき、露天風呂気分も味わえます。

熊倉 洋介(くまくら ようすけ)

1962年   東京都生まれ
1993年  

東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻博士課程修了(博士・工学)

1994年  

熊倉洋介建築設計事務所設立

1995~2001年   みかんぐみ一級建築士事務所共同主宰
2001年   東京電機大学工学部建築学科専任講師
 
<事務所の連絡先>
有限会社 熊倉洋介建築設計事務所
神奈川県鎌倉市西御門1-17-9                                       
TEL&FAX   0467-60-4906
     
東京電機大学熊倉研究室
TEL   03-5280-3617
FAX   03-5280-3671
     
<施工会社の連絡先>                              
滝澤建設株式会社
TEL   03-5289-9010
     
株式会社高橋工業
TEL   0226-27-3943
 
土地探しから設計、工事監理まで施主とともに取り組んだ都市住宅です。12坪という極限の敷地に法規いっぱいの4層の高さのワンルーム空間を確保し、その中にスキップフロアで様々な視点をもつ床を挿入し、生活の場所を設定しています。従来の狭小住宅が閉鎖的な箱に閉じこもっていたのに対して、この家のガラス張りの外壁は、住宅と都市空間を視覚的に連続させ、街を家に引き込んでいます。カフェでくつろいでいるような、新たな都市の住まいのスタイルの提案です。鉄骨とブロックの構造部材を隠さずに見せることは荒々しい感じに思われますが、近寄って見ると、溶接の跡やブロック目地の左官の仕上がりぐあいなど、肌理に職人さんの手技が残っていて、以外と手作りっぽい柔らかな印象が感じられます。家具やアートに興味を持っている、施主のコレクションが映えるモノトーンのシンプルな空間は、モダニズムのロフトといった雰囲気です。
 
井手さんのお宅は敷地面積12坪、建築面積7坪です。建物はスキップフロアーと北側全面開口で開放感を演出した、普通では考えられない大胆な設計となっています。建築家が良い家を設計しても、住み方次第で予想を裏切られることもあります。井手さんご夫婦は建築家の意図をよく理解し、センス良く住みこなしていらっしゃいます。建築家が訪ねてきたら、とても喜ぶのではないでしょか。井手さんが選んだチャールズ&レイ・イームズやリートフェルトの椅子がこの建物にとても似合っていました。