2004年11月27日(土)放送
湘南特集(3)
神奈川県茅ヶ崎市・岸本邸
-のれんが似合う縁側の家-
2002年3月完成
敷地面積         75平米(23坪)
建築面積         42平米(13坪)
延床面積     84.5平米(25.5坪)
RC造地階+木造2階建て
建築費:1800万円    坪単価:70万円



岸本さんのお宅は湘南に建つ、和のテイストを大切にした、のれんが印象的な建物です。設計は建築家であるご主人が担当。外壁はモルタルにワラを混ぜ、土壁の風合いを演出しています。

入口ののれんをくぐると、奥に見えるのは中庭。周りを濡れ縁が取り囲んでいます。まるで京都の小旅館を思わせる佇まいです。

玄関を入るとすぐそこはダイニングキッチン。シンクと一体になったテーブルが中央に配置されています。広さ5畳と狭いですが、手を伸ばすだけ欲しいものに届き、非常に使い易いそうです。ここからは縁側と庭を眺められるようになっています。

2階のパブリックスペースは客間とリビング。フロアレベルに段差を持たせることで空間を間仕切っています。客間の広さも5畳。とても5畳とは思えない開放感があります。天井を高くしているのとは別にもうひとつその秘訣がありました。それは壁の色。濃紺は奥行きを感じさせる色で、濃紺にするだけで広がりがでるそうです。色をひとつで部屋の広がり変ってくるんですね。


リビングはバルコニーとつながっています。そして、奥にあるのが離れのような形の子供室です。お子さんが思いっきり跳びはね、走り回れる場所です。中庭を挟んで向かいにあるのが客間。間の距離は2.7メートル。お子さんの独立性を尊重しながらコミニュケ-ションも図れる、手が届きそうで届かない距離になっています。


子供室の入口の横にある梯子から天井に上がれます。潮風を感じながら青空をバックにビールを一杯。気持ちよくて美味しい、日々の生活を忘れられる空間です。

キッチンの横にある縁側にはのれんがかけてありました。のれんを一枚かけるだけで、内と外を曖昧に区切れる。これが日本人の知恵です。浴室やトイレ行くのもこの縁側を通らなければなりません。一日中家にいても必ず外気に触れることになります。冬などはとても寒いと思いますが、茅ヶ崎だから暖かく、大丈夫だそうです。

浴室は窓から庭の緑を眺められ、浴槽も槙で作られています。窓からはダイニングキッチンが見え、お風呂に入りながら家族と会話も楽しめます。

岸本 和彦(きしもと かずひこ)

1968年10月   鳥取県出身
1987年4月   東海大学工学部建築学科入学
1991年3月   東海大学工学部建築学科卒業(吉田研介研究室)
TD賞受賞
神奈川県大学卒業設計コンクール 金賞受賞
1991年4月   (株)エーアンドエー建築計画研究所入所
一級建築士免許取得   設計主任
1998年6月   (有)アトリエ・チンク建築研究所設立
代表取締役に就任
【作品暦・受賞暦】
1999年9月   作品「沈黙のカタチ」竣工
2000年8月   Eco-Family House国際設計コンペ 第3席入賞
作品「The House of the Wind The House of the Earth」
2000年8月   あかりフェスタ2000あかりのオブジェ展 入選
作品「蛍」
2001年8月   あかりフェスタ2001あかりのオブジェ展 GIFUクラフト大賞
作品「くるくるくらげ」        
ポピュラー賞  同時受賞
2001年8月   南飛騨国際健康保養地 健康学習センター設計コンペ 28選 選出
2001年12月   作品「風の家・土の家」竣工
2002年3月   作品「空のカタチ」竣工
2002年7月   作品「風景のカタチ」着工
2002年8月   あかりフェスタ2002 あかりのオブジェ展 入選
作品「勇気」
 
アトリエ・チンク建築研究所
〒253-0055 
神奈川県茅ヶ崎市中海岸4-15-40-403号                                           
TEL   0467-57-2232
FAX   0467-57-2129 
E-mail   a-cinqu@mxc.mesh.ne.jp
 
SORANOKATACHI

この家は自分で設計した自宅ですので、いろいろな意味で思い切った事をやりました。例えば5帖しかないダイニングキッチン兼リビング、1.8mしかない天井高さ、外部の濡れ縁を通らないと他の部屋に行けない動線など。しかしそれらはみな、現在の住宅が置き去りにしてきた大切な事を思い出すいいチャンスになります。広すぎるリビング、街も家も明るすぎる住環境、設備に囲まれた便利な室内、それらを「豊か」だという時代は既に終わりました。その場所、住む人にぴったりと合った必要且つ十分な広さと最低限の設備を備えた住宅に今一度戻る必要があります。テクノロジーの助けを借りない生活スタイルを思い出す必要を強く感じます。「和風」の家ではありません。日本という気候風土に建つ日本人の為の家です。スタイルにとらわれない、昔はみなそうだったと思い出せるつくりはいいなと思いますね。

 
岸本さんのお宅は敷地23坪です。わずかな敷地をさいて中庭を設けています。建築面積はその分狭くなり、13坪となりましたが、建物はとても広く豊かに感じられるものとなりました。テイストは「和」。このテイストが趣向に合うということだけでなく、気候風土、この土地での生活のしやすさや豊かさを求めることでたどり着いた結果、このようになったのです。建築家の自邸ということで多分に実験的要素があり、創意工夫が見事に活かされていました。