2004年10月2日(土)放送
東京都武蔵野市・杉野邸
-王様は青 王女は赤 2つのキッチン 色彩の宮殿-
2004年1月完成
敷地面積    245平米(74坪)
建築面積     98平米(30坪)
延床面積    246平米(74坪)
RC+鉄骨造   地階+2階建て
建築費:7500万円    坪単価:101万円


杉野さんのお宅は地下1階、地上2階の3層住宅。1階のリビングダイニングは明るく開放的な空間。床は大理石。テラスにも同じ素材を使用し、目地をそろえることで空間の広がりを演出しています。

LDKは白色をベースにし、色々な色が引き立つようになっています。ダイニングテーブルは鮮やかな赤色。この色はフェラーリと同じ「フェラーリレッド」となっています。

キッチンは円柱の中に納まったようなデザイン。そして、その中は青一色。この色はルイ14世が愛した「ブルーロワイヤル」だとか。時には青空、時には海の中にいるような気分を味わえます。冷蔵庫にはシートを貼り、色を統一しています。

地下には3つの部屋がありました。まず1つ目はシアタールーム。色は「ピーチオ レンジ」。ヴィコ・マジストレッティがデザインした「ヴェランダ」の色に合わせた そうです。すわり心地抜群のソファに身を預け、ゆっくりと映画を楽しめます。

地下の2つ目の部屋はご主人の書斎。1階のキッチンの真下に位置します。大好きな音楽を聴きながら、自分の世界に没頭できる空間です。

地下の3つ目の部屋は寝室。ドライエリア沿いの壁はガラス張り。外部からの明るい光が入り込み、地下とは思えない空間となっています。壁の一部にはピンクを配色。こちらの色は「サーモンピンク」。ドライエリアへ出るとそこは広々とした開放的なスペースとなっていました。とてもドライエリアとは思えません。

2階にはもう一つキッチンがありました。こちらは二人のお嬢さんのためもの。料理好きなお嬢さんが料理やお菓子づくりに熱中できる場所です。色もお嬢さんが選んだ「ピンクパンサー・ピンク」。

2階の廊下沿いに4つの扉があり、それぞれ全て違った色となっていました。奥さんと二人のお嬢さんの部屋や浴室となります。扉の色は自分の好きな色。「エメラルドグリーン」、「スカイブルー」、「ルージュレッド」、「レモンイエロー」と鮮やかな色ばかり。鮮やかな色をセンス良く配色しています。

榎本 弘之(えのもと ひろゆき)

1955年   東京に生まれる
1977年   東京大学工学部建築学科卒業
~83年   東京大学大学院修士・博士課程
1981~84年   東京電機大学非常勤講師
1994~99年   日本大学理工学部海洋建築学科非常勤講師
2003年~   日本大学理工学部建築学科非常勤講師
1979~95年   (株)設計組織アモルフ 代表取締役 
1995年   (株)榎本弘之建築研究所 代表取締役
 
株式会社 榎本弘之建築研究所
〒150-0043 
東京都渋谷区道玄坂1-21-6 南平台東急ビル91号
TEL   03-3770-6688
FAX   03-3770-6650
E-mail   enomoto@enomoto-architects.co.jp
 
いかに広く・明るく・伸びやかに住まうことが出来るか--それが都市住宅の永遠 にして最大のテーマだと思います。杉野邸の場合も、敷地は74坪と広く周囲も緑 多い高級住宅地とはいえ、やはり隣家は境界近くまで迫っていました。そこで、 敷地境界沿いにコンクリートの塀を建て、1階はその中が全て一つの大きなミク ロコスモスとなるような空間を構想しました。実際の内部空間は2階に浮いた寝 室の箱の下だけですが、その外へと床を延ばし、外部の部屋《アウターリビン グ》をしつらえて、ガラスで内部との一体化を目指したのです。これは丁度、日 本の伝統的な武家屋敷の形式にも近く、豊かな光と拡がりを得られる、最もシン プルで日本に適した方法ではないかと考えています。
内部は生活の背景とすべく自己主張の少ないモノトーンとし、ここぞという部分 だけにビビッドな色彩を配して、生活に喜びを与えるメリハリを生み出そうとしました。
 
杉野さんのお宅はゆったりとした敷地に建つ大らかな建物です。円形のアールの中は1階が奥さんこだわりのキッチン、地下がご主人の趣味の部屋となっています。他にもお嬢さんの専用のキッチン、映画や音楽を存分に楽しめるシアタールームもありました。家を建てるときにできれば設けたい空間が数多くありました。少し豊かな建物をつくるときにこそ、周囲から注目されます。内部には明るい色を用いながら、周囲の事を考えて外壁は落ち付いた色合いにしている。この配慮は嬉しいですね。