2004年8月21日放送
東京都国立市・小池邸
-3匹の犬と暮らす 回遊する中庭住宅-
2003年3月完成
敷地面積     186平米(56坪)
建築面積      93平米(28坪)
延床面積     172平米(52坪)
RC造地階+鉄骨造2階建て
建築費:4748万円   坪単価:91万円


小池さんのお宅は外に閉ざし、中は開放的な都市型住宅。外塀はFRPのグレーチングを使用。プライバシーを確保しながら、光と風を通します。

中庭はシンボルツリーの緑が美しい空間。どの部屋からもこの緑が眺められるようになっています。一段上がったデッキ部分ではご夫婦でお茶を楽しまれているそうです。

2階は中庭に面したところを開口部にした明るく開放的な空間。中庭の緑が常に眺められ、ゆったりと生活できます。中庭を中心に回遊できるようになっています。リビングでは愛犬のケン太郎くんとモモ子ちゃんが休んでいました。小池さんご夫婦は3匹の愛犬との生活を楽しまれています。

インテリアは全てデザイナーの作品。デザイナーはチャールズ&レイ・イームズ、アイリーン・グレイ、アルネ・ヤコブセン等々。インテリアを趣味とする奥さんがこだわりぬいて選んだものばかりです。

キッチンは正方形のアイランドが印象的です。アイランドは収納や冷蔵庫などが付いています。ご主人も奥さんも料理好き。友人と会話をしながら調理を楽しむ。広いキッチンならではの楽しみ方です。

2階の水周りは洗面、トイレ、浴室が一体となったスリーインワン。ここからも中庭が眺められ、ゆったりと入浴できます。

地下はご主人の書斎。これぞ男の隠れ家。男性にとっては自分の時間を大切にできる夢の空間です。実はこの場所、意外なところにあるんです。

寝室は落ち着いて休める場所。ここからも美しい緑が眺められます。造り付け収納の中には面白いものが入っていました。

石原 健也 (いしはら けんや)

1959年   山梨県甲府市生まれ
1981年   九州芸術工科大学環境設計学科卒業
1983年   同大学院芸術工学研究科修士課程修了
1983~1988年   仙田満+環境デザイン研究所勤務
1989年   デネフェス計画研究所設立
2001年~   千葉工業大学工学部建築都市環境学科助教授
主な受賞歴    
1988年   第7回SDレビュー入選「雪ヶ谷運送本社屋」
1991年   第10回SDレビュー入選「甲府の家」
1992年   第11回SDレビュー入選「梅園病院新館」
2000年   第26回東京建築賞一般部門 最優秀賞 「老人保健施設 メディケア梅の園」
2003年   第48回神奈川建築コンクール一般建築部門奨励賞
「DNP創発の杜箱根研修センター」
 
株式会社 デネフェス計画研究所
〒101-0041
東京都千代田区神田須田町1-32 福原ビル2F 
TEL   03-5297-5741
FAX   03-5297-5740
E-mail   info@denefes.co.jp
 
 小池さんからの主な要望は、(1)コートハウス形式にしてほしい、(2)突き当たりの敷地なので車が敷地内でターンできるようにしたい、の2点でした。限りある敷地においてこれは難問です。でも何とかどちらも実現したい。構造家に相談しながら、やっと実現案に辿り着きました。結果として住宅規模にはあまり採用されない大胆なキャンティレバー(持ち出し梁)を採用し、キッチン・ダイニングが空中に浮いた建物となったのです。でもそうした技術を殊更強調して表現することに、僕はあまり興味がありません。あくまで自然に建っていてほしいと思いました。
 断面図を描きながら、「これはコートハウスの弱点を補える形式かもしれない」と気付きました。現在の都市環境においてコートハウスのニーズは高まっていますが、(1)風の通り抜けを考慮しないと日本の気候に適合しない、(2)あまりに閉鎖的・防御的になって周辺環境との繋がりが無くなる、という点は日本の気候・文化風土にたいしてこの形式の弱点であると思います。小池さんの住宅は、そのことを考えさせてくれた貴重な経験でした。
 
 小池さんのお宅はとてもモダンな建物です。機能的といっても、そう感じるものは人によって違います。まさに十人十色。この建物は施主であるご夫婦にとっての機能性を徹底的に追及しています。余白を大切にし、中庭をつくることで緑と空を楽しめるようになっています。中庭を囲むように回遊でき、行き止まりのがありません。このことが建物の気持ち良さに貢献しています。インテリアにもこだわり、飾られている全てがよく吟味されています。機能性、心地良さを大切にした、時の流れを豊かに過ごせる建物でした。