2004年8月14日放送
神奈川県横浜市・高野邸
−40畳のアトリエ 美術館に暮らす−
2003年12月完成
敷地面積     95平米(29坪)
建築面積     66平米(20坪)
延床面積    160平米(48坪)
RC造3階建て
建築費:4000万円   坪単価:83万円


高野さんのお宅は幹線道路と電車・新幹線の線路沿いに建っています。環状線沿いの東側は曲面となっています。車の騒音対策を考慮した設計です。オフィスビルやホテルなどを専門にする設計会社に勤務するご主人が設計されました。ご主人のお母さんと育ち盛りのお子さん二人を含めた5人家族が暮らす2世帯住宅です。

2階は広さ40畳、天井高5.5メートルの吹抜けの大空間。南側の開口からは線路と幹線道路がよく見えます。ご主人は建築を志したときから自分の家を自ら設計したいと思ってきたそうです。その夢が見事に叶いました。設計するのなら自分のやりたい事をしたい。ご家族に自分のやりたい事を話し、納得してもらったそうです。

2階の北側はアトリエとなっています。壁には油絵が飾ってありました。この油絵はご主人とお子さんが描いたもの。ご主人は100号の油絵を見事に描く腕前の持ち主。お子さんにも絵を教えています。また、奥さんもグラスリッツェンを趣味とし、お友達にも手ほどきをされています。ご家族は芸術への理解と創作意欲があり、壁には作品が飾られています。家全体がギャラリー。まるで美術館です。

2階の南側はご家族が集うLDKとなっています。こちらの壁にも主人の力作が飾られていました。置かれた家具はデザイナーの作品ばかり。ダイニングテーブルはハラー・テーブル、イスはスパゲッティー チェアー、ソファーはエアーフレーム ミッドソファー。どれも素晴らしい作品です。

キッチンはシステムキッチンを採用されました。奥さんが希望した吊り収納は作ってもらえなかったとか。しかし、できあがったのは圧迫感の無い開放的なキッチン。今ではすっかりご主人の意図をしっかりと理解されています。コンロはIHを使用。火が出なくて安全に調理できます。

3階はお子さんの部屋となっています。らせん階段から見て、右がお姉さんのスペース。左が弟さんのスペース。ここからは2階全体が見下ろせ、家族の気配をいつでも感じられます。

1階の母の部屋はお母さんの要望を取り入れ、和室となっています。畳は普通い草を使用していますが、この畳は全く別の素材を使用していました。

洗面、浴室などの水周りはご主人がこだわったスペース。テーマは黒。黒い色を美味く活かし、モダンな空間に仕上げています。意外だったのはその素材。ホテル設計のノウハウが活きた設計になっていました。

高野 勝也(たかの かつや)

1962年   石川県生まれ
1983年   石川高専建築学科
1983年   株式会社日建設計入社
 
E-mail   takano@tc4.so-net.ne.jp
 
この建物は「家族の気配が常に感じられる空間にしたい」という妻の夢を形にしました。設計者のこだわりを作る人達にも一緒に共有してもらい、手の痕跡が残る満足の行く建物ができたと思います。
設計は、幹線道路と線路に面した敷地であり、音と振動を抑えるため、構造は鉄筋コンクリート造と決めてスタートしました。
家族の気配が感じられる空間は、2階のリビング・アトリエと3階の子供室を吹抜けの一体空間とし、それらをらせん階段でつなぐことで実現しました。空間に柔らかさを与えるため、コンクリート打放の曲面壁にこだわり、風と光を効率良く取り込めるように工夫しました。
初めての住宅建築ですが、家族はとても気に入ってくれているようです。
 
高野さんのお宅はごく普通の住宅でありながら、非日常的でダイナミックな建物です。車、新幹線などの騒音が発生する方向に対して閉ざしがちですが、逆に開放しています。ご主人は普段オフィスビルやホテルの設計をされています。今回、そのノウハウを活かし、見事なご自邸を完成されました。ご夫婦そろって多趣味で、その成果が美術館を思わせるようなギャラリースペースを生み出しました。ご家族5人で時には非日常的な気分を味わい、機能的なこの家であたたかく生活されていく。そんな感じが致しました。