2004年7月3日放送
東京都目黒区・鈴木邸
-明暗の家 白の居間と黒の寝室-
2003年12月完成
敷地面積        83平米(25坪)
建築面積        50平米(15坪)
延床面積       130平米(39坪)
RC+鉄骨造 地階+2階建て
建築費:3745万円     坪単価:95万円


鈴木さんのお宅は敷地25坪に建つ3層住宅。コンクリートに巨大なガラスの開口部、間口が狭く奥に細い建物です。キャンティーレバーのアプローチ兼駐車場の奥にあるのが玄関となっています。

玄関ドアと2層目の窓は鉄製の網になっていました。まさに「半野外空間」。建築家の室伏次郎さん曰く、ここは「構築された外部」。光と風、雨までもが家の中に入り込み、室内にいながら外気を感じられます。

寝室は天井、壁、床を黒色で統一。明かりを消せば、本当に真っ暗になる「暗闇の寝室」。ゆっくりと落ち着いて休めそうです。ベッドの上部の壁の奥は書斎スペースとなっていました。

浴室の壁、床は白いタイルに青色の目地となっていました。目地は大体は色味がなく、カビや水垢で汚れやすいもの。敢えて青色にすることで、汚れが目立たず、明るく感じられるようになっています。面白いのが照明でした。シャワー・ノズルのような形をしています。光ファイバー製なので、湯船につけることもできます。

最上階の3層目はLDKとなっています。この空間の壁の半分がガラス張り。自然の恵を余すことなく取り入れた「光の箱」です。「暗闇の寝室」「半野外空間」「光の箱」で構成された明と暗、白と黒を楽しめる建物。ロールスクリーンを閉めれば雰囲気も一変します。

キッチンはカウンター式。奥さんは料理をしながら常に光を感じられる空間を希望されました。コンロは電気とガスの両方を設置。用途に合わせて使い分けられ使い勝手もいいそうです。

リビングには大きなソファとテレビが置かれていました。このソファは背もたれが曲げられる優れもの。TVや映画を楽しみながら、ゆっくりとくつろげます。

屋上もありました。目を引くのが植栽と水盤。水盤は断熱効果もあり、眺めているだけで心を和ませてくれます。光や風だけでなく、緑や水を感じられるスペースも用意してあるのが嬉しいですね。リフレッシュ効果も期待できます。

室伏 次郎 (むろふし  じろう) スタジオ アルテック代表 一級建築士 第58680号

1963年   早稲田大学理工学部建築学科卒業
1963年   坂倉準三建築研究所入所
1971年   坂倉準三建築研究所より独立、建築研究所アーキヴィジョン設立
1975年   アルテック建築研究所設立を経て
1984年   スタジオ アルテック設立、今日に至る
主な受賞歴
1992年   「岡村スタジオ」にてSDレヴュー1992入選
1993年   「ダイキンオー・ド・シェル蓼科」にて日本建築学会賞作品部門受賞
1994年   神奈川大学工学部建築学科教授
1996年   「大井町の家」にて日本建築学会作品撰奨受賞
1997年   「成城の家」にて第空間デザイン・コンペティション[ガラスブロック]作品例部門金賞受賞
1998年   「牛久保の家」にJUKEN実施作品コンペ高齢者のための空間 金賞受賞
2001年   「武蔵小山の家」にて第5回TEPCO快適住宅コンテスト 佳作受賞
2001年   横浜市立科学技術高等学校(仮称)建設工事」設計業務プロポーザルにて最優秀賞
2002年   2002年度「山手町の家」にて神奈川建築コンクール住宅部門優秀賞
主要著書
    「現代建築/空間と方法」 1986/同朋舎出版刊
    「埋め込まれた建築」 1989/住まいの図書館出版局刊
    「<いい家>をつくりたい」 1999/光芒社刊
 
 
(株)スタジオ アルテック
一級建築士事務所 神奈川県知事登録 第9747号
〒231-0006
神奈川県横浜市中区南仲通4-43
TEL   045-662-3772
FAX   045-662-3760
 
今、私たちの生活はあまりに人工気候の中にあります。エアコンディショニングされた空気に慣れすぎて、それがあたりまえになってしまい空気の異常さに気づくという人間本来の生物的能力を見失うまでになっています。
暑いにつけ寒いにつけ、自然の空気の変化、流れを感じてそれに応答する(あえて適応するといわずに)身体的能力を大切にする、という当たり前の生活感を取り戻さなくてはならないと思います。
風と光に満ちた空間というキーワードがもてはやされながら、「美しいはめ殺しガラス」のエアコンディショニングされた空間のいかに多いことか。生きてゆくことの原点を支える住居の空間こそ、できるだけ自然の空気のままにある工夫に満ちた場でありたい。
住居の中に取り込まれた外気の空間=構築された外部
 
鈴木さんのお宅はコンクリートと鉄骨の混構造になっています。建築家は家族4人と愛犬のための住まいを若いご夫婦の意見を取り入れ、コラボレーションしながら設計しました。明るい箱と暗い箱、この対比が面白いです。人生を送りながら、人間は色々な局面に出くわします。その事を考慮し、住人を囲んで守ってくれる部分と、逆に突き放したような自然を感じられる部分で構成されています。明と暗、白と黒などスペースによって全く違った空間を味わえ、他にも挙げたらきりがないくらい建物の楽しみが詰まった家です。人間は皆、神様から色々な才能を与えられて生きています。鈴木さんのお宅を設計した建築家は神様から金の粉をかけられて、励ましを受けて仕事をしている。そんな感じが致しました。