2004年6月19日放送
東京都杉並区・星澤邸
-45度の家 世界のデザイン大集合-
2003年1月完成
敷地面積        58平米(18坪)
建築面積      35平米(10.5坪)
延床面積        85平米(26坪)
RC造地階+鉄骨造2階建て
建築費:2930万円     坪単価:114万円


星澤さんのお宅は敷地18坪に建つ二等辺三角形の建物。前面道路に面しているところの傾斜は45度。その中央にはガラスがはめ込んであります。外壁はペットボトルを再生してできた断熱材にゴアテックスを貼り付けたもの。光を通す壁となっています。夜になると家全体が光のオブジェのように浮かび上がります。

1階のLDKは広さ21畳の空間。天井は2階・ロフトつなぐ吹抜けとなっています。鉄骨の構造材は隠すことなく、剥き出しになっていました。家全体を支える構造材は家を支えるだけでなく、デザイン性に優れているため、室内にインパクトを与えています。そして、外壁からは太陽光がうっすらと入り込み、部屋を明るくしています。

星澤さんはインテリアにこだわりました。全てご自身が気に入ったデザイン性の高いものを選ばれています。ダイニングの机とイスはアメリカを代表するデザインナー夫婦、チャールズ・イームズとレイ・イームズがデザインしたオリジナルです。壁にかけられた照明はデンマークを代表する建築家兼デザイナーのアルネ・ヤコブセンの作品。しかも、星澤さんのお宅はこの照明を取り扱う世界有数の照明会社、ルイスポールセン社の世界向けカタログでも紹介されていました。これは本当に名誉あることです。

星澤さんはご夫婦二人暮し。ご主人がこの家を建てた後に結婚されたそうです。キッチンにあるもの全てを選んだのはご主人。デザイン性を重視して選んだ冷蔵庫はモーター音がうすさいと奥さんに評判が悪いそうです。ご主人のこだわりはインテリアだけなく、他にもありました。それは、お米を炊くお釜と炊き上がったごはんを入れるおひつ。ご主人は独身時代からこのお釜とおひつを愛用されてきたそうです。お釜で炊き、おひつに入れるとごはんが本当に美味しくなるんですよね。

2階の寝室にもモダンな家具が置かれていました。テレビはイタリアのブリオンベガ社。テレビが置かれている台はタバコの「ピース」のパケージをデザインしたレイモンド・ローウィの作品です。

水周りにもこだわりのものがありました。イスはアルネ・ヤコブセン、洗面のシンクはデザイン界のスーパースター、フィリップ・スタルクの作品。トイレの便器はアメリカのコーラー社がヨーロッパ輸出向けに販売しているものだそうです。

浴室の浴槽は据え置き型。黒色のスツールは日本人デザイナー、柳宗理がデザインしたエレファントスツール、シャワーをはじめとする水栓はアルネ・ヤコブセンの作品。

最上階となるロフトは予備室として使用しています。ここから吹抜けを見下ろすととてもダイナミックな空間が広がっていました。45度の屋根に付けられたスリット窓のカーテンを開けると空と街並みを一望できます。開放感も抜群!

遠藤 政樹(えんどう まさき)  池田 昌弘(いけだ まさひろ)

遠藤 政樹(えんどう まさき)
1963年   東京都生まれ
1987年   東京理科大学理工学部建築学科卒業
1989年   同大学大学院修士課程修了
1989~94年   難波和彦+界工作舎
1994年   EDH遠藤設計室設立
1999年~現在   東京理科大学非常勤講師
主な受賞歴
1997年   東京都都市計画局長賞受賞
東京建築士会住宅建築賞受賞
東京都建築士事務所協会東京建築賞受賞
以上[初台のアパート]
1998年   SDレビュー入選
以上[ナチュラルユニット]
2000年   第16回吉岡賞受賞
東京建築士会住宅建築賞受賞
以上[ナチュラルシェルター]
2003年   2003年度日本建築家協会新人賞受賞
以上[ナチュラルエリップス]
2004年   2004年日本建築学会作品選奨受賞
以上[ナチュラルスラット]

池田 昌弘(いけだ まさひろ)
1964年   静岡県生まれ
1987年   名古屋大学工学部建築学科卒業
1989年   同大学大学院修士課程修了
1989~91年   木村俊彦構造設計事務所
1991~94年   佐々木睦朗構造計画研究所
1994年   池田昌弘建築研究所設立
主な受賞歴
2000年   第16回吉岡賞
東京建築士会住宅建築賞受賞
以上[ナチュラルシェルター](遠藤政樹と共同)
2001年   松井源吾賞受賞
以上[有田陶芸倶楽部]
2001年   第18回吉岡賞受賞
日本建築家協会(JIA)新人賞受賞
以上[屋根の家](手塚建築研究所と共同)
     
EDH遠藤設計室 一級建築士事務所
東京都渋谷区本町2-13-8-101 
TEL&FAX   03-3377-6293
E-mail   edh-endoh@mvi.biglobe.ne.jp
 
この建物は東京都杉並区、側の道路に面した15坪程度の敷地にあります。設計するにあたり、広く明るい内部空間にすること、妥協のない斬新なデザインを追求してほしいということが星澤さんの条件でした。しかし敷地の南側に隣家があり、北側道路からでは十分な採光が望めず、いかに光を取り込むかが問題となりました。その結果生まれたのが断熱性能をもち透光性もある壁の開発です。それは、内外をガラスの壁にして、その中にペットボトル再生繊維断熱材と耐水透湿シートゴアテックス等の建築以外の製品を使ったものです。内部は3層吹き抜けのワンルーム、三角形の形態に沿った空気循環システムをつくり熱環境も非常に安定したものとしました。コストと照らし合わせながら検討を進め、長い期間にわたり星澤さんとコミュニケーションがとれたことでデザインの追求の達成ができました。
 
星澤さんのお宅は新しい町家の提案という感じが致しました。ダイナミックな部分もあれば繊細な部分もあり、この繊細なデイテールが建物を作っているのではないでしょうか。住み手のご主人、奥さん共にデザインをとても深く理解し、家具などは本当に吟味したものばかりです。この建物は選び抜かれた家具やご夫婦を見事に包み込んでいました。音楽を聴きながら時を過ごすと次第に心地良く感じるものです。この建物も同じような事が言る気がします。星澤さんのお宅はなんともいえない包容力と安心感があり、時を過ごす事で何ともいえない心地良さを得られる。とても気持ちの良い建物でした。