2004年5月22日放送
埼玉県さいたま市・加藤邸
-白が好き 宙に浮かぶ3つの部屋-
2003年12月完成
敷地面積       157平米(48坪)
建築面積        60平米(18坪)
延床面積       132平米(40坪)
木造2階建て
建築費:2480万円  坪単価:62万円


加藤さんのお宅は真っ白な四角い建物。玄関に入ると二匹のワンちゃん、アクセルとシルクが迎えてくれました。アクセルとシルクのスペースの柵も建築家が作ってくれたそうです。

LDKは白色で統一した空間。白色はご主人のこだわりの色。選んだソファーも白。この白いソファーが似合う空間を作って欲しいと建築家に依頼されたそうです。このソファーはドイツ人デザイナー、マルセル・ブロイヤーの作品。壁は下地材のラワン合板にペンキを塗り、拭きとったそうです。キッチンの上には部屋のような空間が見えます。

キッチンは2つのカウンターで構成されています。スッキリと片付いた空間ですが、これは奥さんの努力と建築家の設計した収納のおかげだとか。シンク下にはゴミ箱が隠されていました。普通、表に出ているものも隠せるようになっているため、片付けやすくなっています。

加藤さんのお宅には3つの浮かぶ部屋があるそうです。その1つ目が2階への階段の横にある浴室でした。水周りを空中に浮かべてしまうとは大胆な発想です。階段側の窓を開けると外の景色が眺められます。

2階の中心にあるのが階段室。壁のほとんどが扉になっていました。その扉の奥は収納や部屋となっています。この部屋から色々な部屋へ移動できます。

階段室の1つの扉を開けると広さ5畳の和室がありました。ここからリビングを見下ろせます。実はここがキッチンの上に見えた部屋となっていました。ここが2つ目の浮かぶ部屋。

ご主人の書斎の床はアクリル板を使用しています。透明な素材のため、下の玄関が丸見えになります。ここからは愛犬のアクセルとシルクの姿がいつでも見えます。ここは空中に浮いていることを一番感じられる空間。もちろん3つ目の浮かぶ部屋です。

2階の階段室にあるらせん階段は1階に下りられます。階段を下りるとそこは白いカーテンに囲まれた不思議な空間となっていました。カーテンの開けると収納棚が出現。ここは外に出したくないものを収納するのために作られた部屋でした。この部屋のおかげで家中がスッキリと片付きます。

古見 演良

1955年   東京生まれ
1979年   東京電機大学 工学部 建築学科 卒業
1979~81年   計画・環境建築 YAS都市研究所
1981~83年   DEN住宅研究室
1984年   千包建築研究所 一級建築士事務所 開設
2002年   プラステイク 一級建築士事務所 開設
     
1993~96年   東京電機大学 非常勤講師
1997年~   東海大学 非常勤講師
     
主な受賞歴
1998年   建築士会「住宅建築賞」最優秀賞受賞(F-HOUSE 2)
1999年   建築士会「住宅建築賞」連続受賞  (F-HOUSE 3)
日本建築学会「作品選奨」 受賞  (F-HOUSE 2)
2001年   和歌山県「きのくにデザインコンペティション」受賞
     
プラステイク 千包建築研究所 一級建築士事務所
〒157-0072
東京都 世田谷区 祖師谷 3-36-21 ビラステラ 205号
TEL   03-3483-5661
FAX   03-3483-5942
E-mail   plastake@mx10.ttcn.ne.jp
 
家に対する固定観念をはずすと生活はいろいろと自由になるのです。この家では大きく2つの固定観念を開放しています。収納-生活、方位-光、です。
家の中心の大きな空間を収納ゾーンとして、その周りに1階をリビングフロア、2階をスリーピングフロアとしています。中心に巨大な物入れをおくことで、その周りでは物があふれない、快適な生活があらわれます。また1階・2階ともに、ワンルームのように視線が連続しているのに、中心に巨大な物入れがあることにより、いろいろな場所がむきだしではない落ち着きのあるフロアになっています。
このような空間構成にしたことで、光を南から取り入れることに執着せず、どの場所もいろいろな方向から光りを入れ、均質な明るさにしました。南からの光に頼ることは、必ず北の暗い場所をつくるということを意味しているのです。この家では、全ての場所で快適に生活することができます。
 
建築は美・用・強が基本と言われます。美しく、機能的で、丈夫であるということは言うまでもなく、基本的なことを大切した上で、更に何かが要求されます。加藤さんのお宅を設計した建築家の作品は当番組で数軒紹介しました。先ほど、挙げた基本を大切にした上で、いつも新しいものを見せてくれます。加藤さんのお宅での新しいものは浮いた部屋ではないでしょうか。浮いた部屋が3つ在りましたが、特に和室が気に入りました。和室の窓から外を見ると外部空間でなく、リビングが見える。部屋の中に部屋がある構成になっています。和室はいくつもの皮膜で守られた空間なっています。このおかげでとても安心感が得られます。現在は寝室として使用されているようですが、茶室にも瞑想空間にもなります。身を置いてみなければ分からない、思いがけない発見、良い意味での裏切りがこの建物にはいくつもありました。