当番組は平成元年に始まり、ついに放送回数が777回を向かえました。
その記念すべきお宅です。せひご覧下さい!!

2004年5月15日放送
東京都世田谷区・佐原邸
−母に贈るモダン蔵の家−
2003年7月完成
敷地面積       364平米(110坪)
建築面積        180平米(55坪)
延床面積        255平米(77坪)
木造2階建て


佐原さんのお宅は昭和初期にからある旧家を建替えて完成しました。ご家族は佐原さんご夫婦とお母さんの3人。旧家では質屋を営んでいたこともあり、蔵がありました。ご主人は建築家に旧家で使われていた部材を使用して欲しいと依頼。昔の部材を生かすことで、お母さんの思い出も大切にしています。蔵のようなデザインが施された場所があります。こちらは旧家の蔵が実際に会った場所。かつての佇まいを彷彿させてくれます。

玄関を入った左側には重厚な鉄の扉がありました。実はこの扉、旧家にあった蔵のもの。そして、その中は広さ4.5畳、天井高5.6メートルの和の空間となっていました。丁度、ここはかつての蔵があった場所。外観は蔵のようになっています。和室というよりも居住性を大切にした蔵といった感じでしょうか。しかも、その中心には囲炉裏がありました。

リビング、そして、奥に見えるダイニングは庭側が曲線になっています。庭側は全てガラス張り。もちろん美しい庭が眺められます。そして、庭以外にもとても絵になる場所がありました。それはリビングから見える蔵への眺めです。この眺めはこの家の中でご主人が一番好きな眺めです。

庭は造園をされているご主人のお兄さんが造られました。井戸を引いた所には、大きな石の桶が使用されていました。こちらは石をくり抜いたもので、馬の飼葉入れとして用いられるものだとか。そして、所々にお母さんの好きな花々が植えられていました。晴れた温かい時には縁側に座って一日中、庭を眺める。心が安らぎますね。

キッチンはご主人こだわりのスペース。アイランド側にシンクやよく使うものを入れる収納を設置しています。ご主人曰く、「料理には段取りがあり、火を使うのはちょっとの時間だけ」だとか。火を使うまでの準備や盛り付け、そして、片付けは火を使うのと比べるとどうしても時間がかかる。だからコンロは壁側、シンク・作業スペースは家族と会話のでき、庭まで眺められるダイニング側にしてあります。一番良い場所にシンクなどがあります。シンク近くの一番いい場所の収納には準備の時に必要なものが入っていました。これもご主人が場所を指定されたそうです。

和室は広さ8畳。ここもお母さんのために造ったスペース。お母さんの趣味はお茶。お茶会も開けるように炉も切ってありました。障子は旧家で使われていたものをそのまま使用されています。

浴室の浴槽・壁には水に強い木材・ヒバを使用してます。こちらはお母さんが一番気に入っている場所です。お母さんのことを考えてもちろんバリアフリーになっています。

離れもありました。その2階は壁沿いの棚に多くの本が置かれた読書室となっています。ひとり、静かに読書を楽しむのに最適な空間です。夜はブリキに穴をあけて作った照明が幻想的な空間の演出してくれます。

白鳥 健二

1943年神奈川県生まれ 武蔵工業大学建築学科卒業。パオロ・ソレリ、黒川紀章に師事。その後アトリエCOSMOSを設立。住宅建築を中心に設計活動を続ける。日本建築学会、神奈川県建築コンクール等受賞。「住まいの風姿体」等著書多数。

アトリエCOSMOS
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―幸せな「姿」を設計する―
住まいを考えるとき冬の暖かさと夏の涼しさは最も基本的なこと。日当たりと風通しは絶対的な設計条件といえる。冬は太陽が部屋の奥までさんさんと差し込み、夏は涼風が室内を吹きぬけていく。

佐原さんのお宅は閑静な住宅街に建っている。古き良き時代の情緒も溢れ、人情は厚く近所同士の往来はまだまだ頻繁だ。「玄関は南側がいい」とは建築主のおばあちゃんの希望だった。冬はポカポカと和風庭園を眺めながら部屋で時を過ごし、時には自らお茶会を催すためのお茶会を持つことが昔からの夢だった。苦労の甲斐あって、この度それが実現することとなった。親孝行の息子たちが力をあわせて母に理想の家を作ってあげることとなったからだ。一方、2階の屋上デッキには長椅子が置いてある。椅子の上にはブリーズソレイユ(日除け)が架かっている。肌には涼風を受け、下
町をボーっと見下ろしながら仕事で溜まったストレスをゆっくり癒す若主人がそこにいる。そのとなりにいる美人で優しい奥様は主人のためにのんびりとコーヒーをいれている。

住まいを設計するとき、こんなことまで想像できたらなんと楽しいだろう。

白鳥 健二
 
佐原さんのお宅は緑と建物のバランスが見事です。建物は和洋折衷をベースとし、チベットあたりの美しく気持ちの良い佇まいが取り込まれています。そして、その室内の中には色々な見せ場があります。特に蔵。非常に素晴らしく、落ち着けるスペースです。外観は以前建っていた蔵を思わせます。そして、蔵の重厚な鉄扉を始めとし、以前に建っていた家の部材を使って空間作りをされています。これも家族の歴史と建物自体の新旧のバランスを大切にされているからだと感じました。人間、誰でも来世というものがあります。来世のイメージは良いもので在って欲しいもの。そのイメージも現世が美しい建物、環境でなければイメージし難いものではないでしょうか。生きるのであれば美しい建物、美しい街並みの中で人生を過ごしたいものです。