2004年5月8日放送
東京都台東区・井上邸
-間口3m 奥行き21m 浅草モダン 超細長の家-
2002年12月完成
敷地面積        129平米(39坪)
建築面積        89平米(27坪)
延床面積       198平米(60坪)
鉄骨造3階建て
建築費:3500万円  坪単価:59万円


井上さんのお宅は奥行きが間口3メートル、奥行き21メートルの旗竿敷地に建つ家。この地域は浅草、下町。ご家族はご夫婦と産まれたてのお子さんの3人暮らし。産まれも育ちも浅草というご主人が家族のために建てた家です。玄関前は3台分の車が停められる駐車場となっています。

2階のLDKとご主人の書斎は間仕切りのないワンルーム空間。家族の気配が常に感じられるスペースです。間仕切りを極力無くし、床は下地材に塗装だけで仕上げました。壁はクロスを張らず、ペンキにすることでコストダウンに成功しています。中央に見える四角の大きな箱はキッチンです。

キッチンは家族が通る通路側に窓を設け、キッチンに立つ奥さんと向かい合えるようになっています。ご主人は朝、立ったまま食事を採り仕事に向かうそうです。朝忙しい時間には使い勝手が良さそうです。

リビングの西側は全面ガラス張りの大開口となっています。建物の間口は3メートルなのに幅が狭まく感じません。建築家は圧迫感を感じないように天井を高くし、開放感を演出しました。幅が狭くても、壁の厚さを利用し、ニッチの棚を作りました。奥行きは広く取れませんが、この収納が無いのと在るのとでは、住み易さが全然違ってきます。

ご主人の書斎はLDKよりフロアレベルを高くしています。このおかげで空間に変化が生まれ、ワンルーム空間に境界線ができます。こちらではご主人が映画を楽しまれるそうです。ここからは21メートルの奥行きを感じられる場所でもあります。

浴室は灰色の壁と天井材が印象的な空間。実はこの壁と天井材は外壁材として使用されるサイディングボード。この素材は水に強くてリーズナブル。ユニットバスの5分の1の金額で済んだそうです。

屋上もありました。周囲をよく見るとどこの家や建物にも屋上があります。この屋上が年に1度の大活躍をする時があるとか。その時とは夏に行われる隅田川の花火大会。ここに家族、友人が集まって花火を見ながらの宴が行われるそうです。

1階には奥さんがご近所のお子さんにピアノを教えるピアノ教室と将来、お母さんとの同居にも対応できように設計された客間と茶室があります。
金子 勉(かねこ つとむ)
 
1972年   新潟県生まれ
1995年   千葉大学工学部建築学科卒業
1996年   建設会社勤務 現場監督を経て
1997年   金子勉建築設計事務所 設立
     
主な受賞歴
    2001 グッドデザイン賞 受賞
     
金子勉建築設計事務所
〒103-0016
東京都中央区日本橋小網町18-20-804
TEL&FAX   03-3664-0400
E-mail   design-studio.kaneko@nifty.ne.jp
HP   http://homepage3.nifty.com/kaa/

敷地は老朽化した住宅が密集する「下町」にあります。商業地域に指定されていることから、将来的に周囲の建物がビルなどに建て変わり、環境が激変する可能性がありました。そこで、周辺環境の変化に左右されない住環境を獲得することを設計の目標としました。
採光・通風を確保するため、周囲の変化から影響を受けにくい上空・道路・敷地形状を利用して配置したいくつかの庭へ向けて注意深く窓の計画をすることで、1日を通して家のなかにある全ての窓から日が差し込み、風が通り抜けるよう計画しました。
細長い大きな空間の中を、陽の光が窓から窓へと移動し、ゆっくりと流れる時間を感じられる家になりました。
 
井上さんのお宅は浅草の下町の雰囲気が漂う場所にあります。土地は旗竿型。目の前はとても広い道で交通量が多いです。道路に面しているところは1階が駐車場、2階はバルコニーにし、居住スペースを後退させているため、とても安心感があります。内部は部屋が目的別に分かれていて、どの部屋も他の部屋とのつながりが感じられように設計されていました。お子さんがこれから成長して、どこにいても気配が感じられるようにするための工夫といったところでしょうか。ご主人はヨットが趣味と伺いました。間口3メートルと幅が狭く、どことなく船のような感じが致します。産まれたてのお子さんとご夫婦でこの大きな船にのってゆっくりと素晴らしい人生を進みはじめている。そんな感じが致しました。