2004年5月1日放送
東京都新宿区・高橋邸
-男の書斎主義 こだわりの大地下室-
2003年5月完成
敷地面積        93平米(28坪)
建築面積        56平米(17坪)
延床面積       182平米(55坪)
RC造地階+木造3階建て
建築費:4000万円  坪単価:73万円


高橋さんのお宅は地下1階、地上3階の4層住宅。外側には窓をあまり作らず、中庭に向かって開口部を設け、採光と開放感を確保。中庭を有効活用した都市型住宅です。

地下には本棚で囲まれた部屋がありました。整然と書籍が並べられている本棚には約2000冊の本が収納できます。実はこの部屋、本だけではなくほかにも楽しみがありました。その楽しみは映画。スクリーンとプロジェクターがあり、AVルームにもなります。

地下室にはご主人が仕事をされる書斎がありました。仕事をする厳かな空間となっています。書斎の正面見えるのが中庭。この中庭があることで気持ちよく仕事に集中できそうです。ご主人は大学でフランス演劇の教鞭をとられ、ご自身の著書もこの部屋で執筆中です。

寝室も地下にあります。地下らしく、あなぐらを思わせる落ち着いた空間。ゆっくりと休めそうです。この部屋からも中庭が眺められます。そして、寝室の横にはクロゼットもありました。服もたくさん収納でき、この空間のおかげで部屋もすっきりと片付きます。

2階のリビングは日差しがうれしい明るい空間です。中庭の奥に見えるのがダイニングとキッチン。ダイニングへ行くにはデッキと階段の横の廊下の2つがあります。お子さんはリビング、廊下、ダイニング、デッキと走り回り、この家ができてから、とても元気になったそうです。

2階には他にも家事室があります。ここは奥さんが家事をし易いように設計されたスペース。家事がし易くなるには、洗濯機などが家事に必要なものが揃っていて、動線が動き易いのが大切です。さらにキッチンが扉の奥にありました。料理や洗い物をするキッチンの横にあると使い勝手も抜群に良くなります。

キッチンはドイツ製のシステムキッチン。天板は全て人口大理石。目地が無く、汚れても拭けば綺麗になる為、掃除がとても楽に済むそうです。

ダイニングにもご主人の選んだものが置かれています。中でもダイニングテ-ブルはご主人の大好きなフランス人デザイナー、フィリップス・スタルクの作品です。北側に設置された窓からはお寺とお墓が見えました。実はここに故人となったお父さんのお墓をつくることになったそうです。将来、お母さんとの同居も考えたスペースもあり、お孫さんが大好きだったお父さんも近くにいる。ご両親をとても大切にされているのが姿勢が素晴らしいですね。
本間 至

1956年   東京都生まれ
1979年   日本大学理工学部建築学科卒業
1979~85年   林寛治設計事務所
1986年   本間至建築設計室設立
1994年  

ブライシュティフトに改称
家づくりの会会員

     
本間至/ブライシュティフト
〒156-0044
東京都世田谷区赤堤1-35-5
TEL   03-3321-6723
FAX   03-3321-6287
E-mail   pencil@mbd.ocn.ne.jp

都市の真ん中、軒を連ねて隣家が建つ中で、家族の生活を守るオアシスをどのように実現させるか、そこがこの住宅を設計するにあたっての大きな課題でした。
地階のドライエリアから縦につながる中庭(吹き抜け空間)。それに沿うようにつくられている階段。階段を上り下りする姿は各部屋から見え、また、階段を通して各階の家族の気配が感じ取れるようになっています。
2階のLDKのスペースは階段を中心に配置され、それらを結ぶ動線は、サービス動線・主動線・そして外部(テラス)動線と3つつくられており、いくつもの回遊動線(家の中をぐるぐる廻れる)が存在しています。そのことで、便利である事以上に生活に楽しさをつくり出しているようです。外に対しては、駐車スペースが中庭に抜けており、そこから生活の気配が伝わり、街の環境に程良い関係をつくり出しています。
 
高橋さんのお宅は都心の住宅です。敷地面積28坪に建つ延床面積55坪の機能性を追及した建物となりました。創意工夫は見事で使い易いです。機能性を追求しながら、しっかりと余白となる部分を残されました。その余白は階段や中庭になります。このスペースを有効活用し、開放感を演出しています。ご主人はつながりを意識した建物だとおっしゃっていました。それは近隣の道行く人。そして、北側の墓地で眠る事になる今は亡きお父さんとのつながりでした。その配慮が建築的に新しいものを感じました。