2004年4月10日放送
神奈川県川崎市・手嶋邸
-現役60歳夫婦 丘の上のSOHO-
2003年4月完成
敷地面積     119平米(36坪)
建築面積      57平米(17坪)
延床面積     104平米(32坪)
RC+木造 地階+1階建て
建築費:2740万円  坪単価:87万円


手嶋さんのお宅は鉄筋コンクリートと木造の箱で構成した建物。北側、正面から見るとまるで鉄筋コンクリートの壁。「これが家?」と思えるコンパクトな外観となっています。ご家族は還暦を迎えられるご夫婦とご長男の3人。手塚さんご夫婦は若い感性の中で暮らしたいと思い、若い建築家に設計を依頼されたそうです。

1階の玄関の扉はプラスチックハニカムという素材を使用。この素材は軽量ながら強度があり、航空宇宙向けに開発されたものです。玄関は幅は1メートル、天井高は1.9メートルの狭い通路となっていました。

地下のLDKは広さ31畳、南側が吹抜けた天井高5.3メートルの大空間となっていました。さらに南側は全てガラス張り。コンパクトな外観からは想像できない素晴らしい空間です。

手嶋さんのお宅は北から南に向かって土地が低くなる丘陵地に建っています。建物は地階と1階で構成。1階北側の外観と玄関をコンパクトにまとめ、地下のLDKを開放的にしました。1階と地下の間にギャップを与え、それを利用することで地下空間のダイナミックさをさらに強調しています。もちろん丘陵地ならではの景色も取り入れています。

リビングの天井には大きな木造のボックスが見えます。こう見るとコンクリートの大きな箱の中に小さな木の箱が入っているようです。実はこの木のボックスは鉄筋コンクリートの天井に吊ってあります。吊ることで空中に浮いているように見え、デザイン性も高くなっています。

オープン型のキッチンは白色を基調とした空間。こちらのキッチンのコンロはIH。IHのコンロに建築家がデザインした蓋をつけ、使わないときにはよりスッキリと見えるようなってします。

LDKのカーテンの中身はデスクが2つ並んでいました。実はここ、奥さんと仕事場兼ご主人の書斎。地域アドバイザーをされている奥さんは平日にここでお仕事をされ、ご主人は休みの日に趣味の絵を描いたり、持ち帰った仕事をされるそうです。手嶋さんのお宅は生活の場でありながら、仕事場でもあるSOHOとなっています。高台のからの景色を楽しみながら仕事や趣味に打ち込む。とても気持ちがいいでしょうね。

木のボックスの中はご長男の部屋とご夫婦の寝室となっていました。ともに南側に開けられた小さな窓から景色が眺められます。
納谷 学   納谷 新

納谷 学  
1961年   秋田県生まれ
1985年   芝浦工業大学卒業
1985年   黒川雅之建築設計事務所
1987~88年   野沢正光建築工房
1993年   納谷建築設計事務所設立
     
納谷 新  
1966年   秋田県生まれ
1991年   芝浦工業大学卒業
1991~93年   山本理顕設計工場
1993年   納谷建築設計事務所設立
     
納谷 学+納谷 新/納谷建築設計事務所
〒211-0002
神奈川県川崎市中原区上丸子山王町2-1376-1F
TEL   044-411-7934
FAX   044-411-7935
E-mail   m-a.naya@f2.dion.ne.jp

建物の構成は、コンクリート構造による大きな箱のなかに、木造による小さな箱を入れ子状に吊り込むかたちになっています。一見シンプルな構成に見えますが、小さな箱を吊り込むことで、下の階は柱のない自由なプランニングが可能な計画としました。またその配置によって、まわりには5つの隙間のような空間が生まれます。具体的には玄関からのアプローチや、居間に下りていく階段、そして居間や台所に光と風を呼び込む吹抜け、下面はアトリエ・LDKとしました。敷地は崖地の南斜面にあり眺望もよく、道路からのヴォリュームをできる限り低く抑えることで、地下への階段の吹き抜けにたどり着いた時に感じられる空間のギャップの大きさが、景色の広がりをよりダイナミックに伝えます。二つの箱と平面的に幅を狭めたり広げたり、断面的に天井高をおさえたり上げたりといった単純な操作でこのような空間は生まれました。
 
手嶋さんのお宅は大変眺めがいいお宅です。日常の生活の場であり、ギャラリーであり、仕事場でもある。SOHOという言葉もあります。まさにそういう建物です。手嶋さんのお宅はコンクリートのしっかりとした大きな箱の中に木の箱を吊るす構成となっています。1階の寝室やご長男の部屋、玄関をコンパクトにまとめ、階段を下りると広く開放的な地下のパブリックスペースがむかえてくれる。狭い空間から広い空間へ移行する事でダイナミックさをより強調しています。そして、この建物に住まわれるご夫婦、ご長男ともにとてもセンスがいいです。インテリアは教養といわれます。建物、そして、街並みに対しての意識も教養と言われる時代になりましたね。