2004年3月27日放送
東京都杉並区・手下(てが)邸
-母も笑顔 七色で遊ぶ木造大空間-
2003年5月完成
敷地面積      92平米(28坪)
建築面積     55平米(16.5坪)
延床面積     126平米(38坪)
木造3階建て
建築費:2380万円  坪単価:62万円


手下(てが)さんのお宅は白い外壁が印象的な木造3階建て。外壁には漆喰を使用しています。手下さんご夫婦とご主人のお母さんの3人暮らしです。通り沿いの植栽はお母さんが植えられたそうです。

玄関は白色をベースに上がり框(かまち)の赤と下駄箱の扉の青がアクセントとなった空間です。鮮やかな色が帰ってきた住人、遊びにきた客人を迎えてくれます。上がり框は2枚のガラスで赤い布を挟んだ構造になっています。下にはライトを置き、ライトアップすると赤色が引き立つようになっています。これこそ上がり框(かまち)ならぬ、明かり框(かまち)。

2階の居間兼食堂は広さ32畳の大空間。本来、木造でこの空間を作るためには何本もの柱が必要となります。その難題をクリアしたのが、いくつもの筋交い。大切な構造材がアクセントにもなっています。

居間兼食堂は南と東が全てガラス張り。ガラスのおかげでとても開放的な空間となっています。ダイニングテーブルやソファーセットは新築の家に合わせて購入されたそうです。新しい家具選び、とても楽しかったとか。気に入った家具で朝陽を浴びながら朝食を採る。とても気持ちがいいでしょうね。

キッチンは階段室のガラスの囲まれたL字型の空間。壁に使用しているのはピンク色のモザイクタイル。ではなく、全て小さなガラスだそうです。これは意外な素材でした。収納も多くのスペースを確保。入れるもの全ての寸法を測り、どこに何を入れるか決めていたそうです。

キッチンの突き当たりには黄色の壁に白いドアがありました。そして、その扉をあけるとオレンジ色の壁とクリスマスツリーに使う電飾が壁にレイアウトされていました。しかも、電飾は光るパターンがいくつもあります。この空間、実はトイレとなっていました。とても色鮮やかなトイレです。ついついトイレに入る時間が長くなってしまいそうです。

3階の和室は広さ8畳。こちらはお母さんが洋裁をする趣味室となっています。フラメンコ・ダンサーであるご長女(ご主人の姉)の衣装もお母さんが仕立てています。外光が入り、明るいところで洋裁ができるとお母さん、大喜び。外にはバルコニーがありました。外に出て驚いたのが外壁の漆喰の色。なんと黒色となっていました。外壁は白色だったはずでしたが、玄関先から見えていたのは1・2階部分のみ。だから黒色の3階部分が見えず、「外壁は白」という印象が強くなっていました。この意外性が面白いですね。

1階の寝室は広さ7.5畳。この部屋には面白い細工がありました。それはご主人の大切なコレクションの漫画が置かれた本棚。一見、何の変哲も無い本棚ですが、実は動きます。本棚が動くと隠れ部屋のようにクロゼットが出現。実に面白いアイデアです。棚を本棚兼引き戸として使用していました。
萩原 保司 (はぎわら やすし)

1958年   東京生まれ
1981年   東京理科大学建築学科卒業
1982年   剛保建設株式会社入社
1984年   前衛建築集団「空間実験室」を結成するも仕事全くなく、すぐに解散。
1984年   スタジオ・ゴーを設立。
2003年   剛保建設株式会社代表取締役社長
     
剛保建設株式会社一級建築士事務所
STUDIO GOH(スタジオ・ゴー)

〒162-0072
東京都新宿区富久町16-12
TEL   03-3357-6431
FAX   03-3357-6440
E-mail   goho@rio.odn.ne.jp

合板やモルタルや布――単純でありきたりで安価な素材。そこにちょっとだけフェイントをかければ、物は違って見えてきます。シンプルでミニマム。何もないデザイン。吹き抜けもなければ、トップライトもない。でも何かが違う!デュシャンが「便器」を展覧会に持ち込み「泉」と呼んだように…。全体の構成は、四角い漆喰の箱の中にガラスで囲まれた階段室があるだけ。玄関はモルタル、上がり框は布製。鉄の登山コップはダウンライトになり、養生用ポリベニヤは、光のグラデーションを演出している。施主自身が施工した1個35円の韓国製煉瓦も、施工のヘタウマさゆえに?しっとりした趣さえ感じます。単純で普通すぎるくらいの平面構成でありながら、計算された視覚効果と透明感が同居した不思議な建築に仕上がっています。
 
手下さんのお宅は文人、墨客が愛した街に建っています。街並みは車社会以前に形成された住宅密集地。手下さんはこの土地に住宅を建替えられました。新しい住宅はできるだけ広がりのある明るい家を希望され、その希望が見事に叶いました。リビングダイニングは色んなアイデアがありました。キッチンは階段室を生かした広いスペースなっています。キッチン奥のトイレは電飾が輝き、トイレが長くなりそうです。夫婦の寝室のクロゼットは本棚を扉になっている。アイデアの数々、挙げればきりがありません。手下さんがお住まいになって、まだ、1年足らず。まだまだこの建物には新たな発見がありそうです。