2004年1月31日放送
東京都品川区・高瀬邸
-快適回廊 1200年の知恵 スノコ床-
1999年8月完成
敷地面積    113平米(34坪)
建築面積     66平米(20坪)
延床面積    113平米(34坪)
RC+木造 地階+2階建て
建築費:2800万円  坪単価:82万円


高瀬さんのお宅は敷地34坪に建つ地下1階、地上2階、更にロフトもある4層住宅です。庭には多くの樹木を植えてます。この緑は施主である高瀬さんをなごませるのはもちろん、建て込んだ袋小路の奥にホッとする空間を生みだしています。

玄関に一歩入ると天井から光が入り込む美しい空間。天井と床はヒノキのスノコで作られています。スノコは1200年前の平安時代から水切りの板として使われてきたそうです。そのスノコを使用することで、すき間から光、風、音が通り抜け、室内に居ながら、外を感じさせる家になっています。

寝室は下地材に使われるラーチ合板を使用。東と南側をガラス張りにし、採光を確保。窓には、半畳のピッチで柱を建ててあります。それによって、窓のサッシの目隠しにもなり、又、通常より数の多い柱のお陰で囲まれた感じが生まれています。

高瀬邸には地下室が?さてその入口は?なんと床の下に隠されていました。しかも、左右段違いの階段です。この階段にすると階段が急でも下りやすいという長所があります。スペースが有効に使えますね。天井はもちろんスノコです。湿気がこもりません。

2階のリビングは広さ8畳の和室。部屋の中心には掘り炬燵を置きました。掘り炬燵でお茶を飲みながら外の緑を眺めたり、お日さまを眺めたり・・・。ここでは自然を感じながらゆったりとした時間を過ごせるそうです。

2階の廊下の床や天井も1階と同様にスノコでできています。リビングの外側にはバルコニーを設置。2階の廊下と繋がっていてリビングを囲む回廊となっています。

ダイニングは広さ4畳。西側の壁沿いにはベンチを造り付けました。このベンチは収納にもなっています。デッドスペースの有効活用です。

ロフトの床もスノコです。近年「高気密」という気密性の高いの家が増えています。高瀬さんのお宅はその逆をゆく「隙間」の家。ロフトの外にはテラスがあります。テラスは壁で囲まれているため、ここから眺める空は、まるで「自分だけの空」。

室伏 次郎 (むろふし  じろう) スタジオ アルテック代表 一級建築士 第58680号
 
1963年   早稲田大学理工学部建築学科卒業
1963年   坂倉準三建築研究所入所
1971年   坂倉準三建築研究所より独立、建築研究所アーキヴィジョン設立
1975年   アルテック建築研究所設立を経て
1984年   スタジオ アルテック設立、今日に至る
1992年   「岡村スタジオ」にてSDレヴュー1992入選
1993年   「ダイキンオー・ド・シェル蓼科」にて日本建築学会賞作品部門受賞
1994年   神奈川大学工学部建築学科教授
1996年   「大井町の家」にて日本建築学会作品撰奨受賞
1997年   「成城の家」にて第空間デザイン・コンペティション[ガラスブロック]作品例部門金賞受賞
1998年   「牛久保の家」にJUKEN実施作品コンペ高齢者のための空間 金賞受賞
2001年   「武蔵小山の家」にて第5回TEPCO快適住宅コンテスト 佳作受賞
2001年   横浜市立科学技術高等学校(仮称)建設工事」設計業務プロポーザルにて最優秀賞
2002年   2002年度「山手町の家」にて神奈川建築コンクール住宅部門優秀賞
     
主要著書  
  「現代建築/空間と方法」 1986/同朋舎出版刊
「埋め込まれた建築」 1989/住まいの図書館出版局刊
「<いい家>をつくりたい」 1999/光芒社刊
     
(株)スタジオ アルテック
一級建築士事務所 神奈川県知事登録 第9747号

神奈川県横浜市中区南仲通4-43
TEL   045-662-3772
FAX   045-662-3760

住居とは「人生の歴史的時間の容れ物」であると考えます。
モノとして永い時間に耐えるとともに、必ずやってくる生活の変化に対して、柔軟に対応できると同時に明確な骨格を持った空間-原型-であることを大切にしたいと思っています。そして、四季の自然を感じる場ー構築された外部ーと、その家に固有のストーリーをもった、四つの原型的な空間ー光を導かれた地下、囲われた地上、浮遊感のある空中、天と交感する場ーを持つ家でありたいと思っています。
この家は高密な住宅地の路地に面しています。永くこの地に住まわれた施主の努力と工夫によってこの一角は路地のなかで、ほっと出来る緑豊かな場所を作っていました。新しい家もその心を大切にしつつ、高齢期を安心と自然の豊かさのなかに過ごす場としたいと考えました。
高瀬さんのお宅は今、主流の高気密とは正反対の建物です。家中に使われたスノコ。その隙間にとても大事な意味があります。それは家の中にいながら、外の自然を感じ、味わい、共に生きるということです。外を感じられる分、冬寒いという事もあるでしょうが、個室はきちんと扉が閉まり冷暖房も十分です。色々あった人生も半ばを過ぎ、熟年を迎えれば、終の棲家で豊かに過ごしたいものです。自然を感じ、静かな生活というのは、こういう事かと、学ぶべき点がたくさんありました。