2004年1月24日放送
東京都目黒区・松原/水城邸
-夢ロマン デッキがつなぐ2世帯住宅-
2001年3月完成
敷地面積    190平米(57坪)
建築面積    113平米(34坪)
延床面積    276平米(83坪)
RC造地階+木造3階建て
建築費:7771万円  坪単価:93万円


松原さんご自身が設計されたのは、地下1階、地上3階建ての完全分離型の2世帯住宅。1階は親世帯、2・3階は子世帯のスペースとなっています。建物は上になればなるほどボリュ-ムが出るようなデザインです。

リビングは明るい落ち着くスペース。白い造り付けの収納扉を開くと奥のキッチンと繋がり料理を出し入れできます。いちいちキッチンに移動せずに済むのがいいですね。

親世帯キッチンはカウンター式。カウンターの素材は練り込み磁器タイルを使用しました。タイルに水が染み込まないように、お手入れはサラダ油を塗って磨きます。こうすることで色合いも徐々に落ち着きのあるものになっていくそうです。シンクはドイツ製のダブルシンクを採用。

ご主人の書斎は広さ13畳、天井高5メートルの空間。デッキに面するところは全てガラス張り。特注のガラスの折戸を全て開放すれば、デッキ部分と一体化して、大空間が広がります。

デッキは船の甲板をイメージ。テーブルの上には、白い帆布の日除けが設置されています。ガーデン用のテーブルは、気分に応じて向きをかえてセッティング。壁際におかれた段差がちょうどベンチ代わりに使えます。

子世帯のキッチンもカウンター式。親世帯同様に練り込み磁器タイルを使用しています。階段下スペースを利用して、収納を設け、洗濯機、食洗機を置きました。家事機能が集中することは、奥様の希望だったそうです。

3階は水城さんご夫妻が収集している骨董品が置かれているスペース。ここでお酒を飲むのがご夫婦の楽しい時間だとか。圧巻は船底をイメージして作った迫力の船底天井。使われている木材の形が1本ずつ違うという力作です。

屋上にはデッキと芝生のスペースをつくりました。息子の大ちゃんの遊び場です。ここからは3階の天井が目の前に見えます。緩やかな曲線は、松原さんが手描きで曲線を描いた設計通りとのこと。CADでは描ききれない微妙な曲線だということです。

松原 忠策
1939年   東京生れ
1961年   早稲田大学第1理工学部建築学科卒業
(株)松田平田設計事務所(現松田平田設計)入社
1986年   取締役設計部長
1993年   常務取締役
1996年   専務取締役
2002年   取締役副社長を経て現在、特別常任顧問
     
1998年~
2000年 
  (社)日本建築学会副会長
2002年   (社)日本建築家協会理事 関東甲信越支部支部長
     
受賞暦    
1980年   あさひ・マルハビル 建築業協会賞(BCS賞) 
1986年   報徳会館(結婚式場) 福島県建築文化賞
1994年   大宮センタービル  大宮市景観賞
2000年   茨城県庁舎 建築業協会賞(BCS賞)・茨城県建築文化賞
     
論文    
1987年   中小ビルの設計動向(新建築)
2001年   QBS設計者選定の新しい試み(新建築)
     
松田平田設計

東京都港区元赤坂1-5-17
TEL   03-3403-6161
TFAX   03-3423-9364
E-mail   chusaku_matsubara@mhs.co.jp

市街地に建つ住宅は、京都の町屋のように建物の外壁が敷地の境界となって、それぞれの家は中庭を囲むように部屋を配置し、そこから風や陽光を家の中に取り込み、室内と庭が一体となって狭い敷地を有効に利用できる建て方が、私の好みで、そのような考え方でいくつか住宅を設計してきました。この住宅は30年前に立てた自宅の建て替で、最初の住宅は北側と東側に外壁を寄せたL型の平面で、西側いっぱいに建っていた隣家の外壁との間の庭は、サザンカの垣根とアメリカハナミズキの木立に囲まれた芝生の庭でした。この庭で子育てを終えて、その子の家族が加わった2世代住宅がこの建てものです。ここでも中庭と屋上の庭が重要な役割を演じていて、第1世代の住まいである1階の床は、バリヤフリーで内外とも同じレベルとし、路地空間のイメージで中庭をつくりました。2・3階の第2世代の住まいは3階の茶の間から路地の上にかかった橋をわたって木のスケルトンで囲った屋上に出られます。ここはスノコを貼った部分と芝生が植えられた庭で、ここで遊ぶ孫とのコミュニケーションが第1世代の生きがいにもなります。
 
2世帯住宅の松原・水城邸で驚いたのは子世帯の巨大船底天井です。とても力強く、かつ美しい曲線が見事です。もう一つは松原さんの書斎と、隣接するデッキスペース。これは折戸で仕切られ、全て開け放つことができるという構造的にすごく難しい設計になっています。松原さんは64歳。歳をとると保守的になりがちですが、松原さんの設計したこのお宅を見るかぎり、未だチャレンジする精神に満ちあふれています。このお宅のどこに身を置いても居心地はいいのですが、私は特に子世帯の茶の間が好きです。例えて言えば熱いコーヒーにクリームが溶けるような心地よさ。