2003年12月20日放送
東京都・N邸
−アジア流 エスニックモダンの家−
2002年11月完成
敷地面積   739平米(224坪)
建築面積    147平米(44坪)
延床面積    316平米(96坪)
RC+木造 地階+2階建て
建築費:7652万円   坪単価:80万円


Nさんのお宅は原生林のような森林に囲まれています。家を建てる際に樹木をそのまま残すように努力されたとか。玄関までのアプローチは緑で囲まれた趣深い空間となっています。

広々とした玄関ホールからは奥のリビングが見えます。手すりは京都の萬福寺の卍崩しをモチーフにされたとか。その他にもアジアの文化が持つ魅力を取り入れられています。壁と思っていたところが突然開きました。からくり屋敷のような細工もありました。多くのお客さんがくるお茶会などでは、お手伝いさんが出入りしやすく、重宝するそうです。

リビングの床材はカリン。Nさん自ら、漆をかけたそうです。また、薪ストーブがありました。炎にあたって、皮膚のしたから温まる。炎を見ながら暖をとると心も温まる気がしますよね。

リビングの横に和室がありました。段違いの棚と障子に見覚えがあります。それもそのはず、実は銀閣寺にある同仁斎(どうじんさい)を再現されたそうです。何度も銀閣寺に足を運び、寸法を測ったとか。奥の障子をあければ…。そこに原生林の緑が見えます。日本では昔、このように障子をちょっと開けて美しい景色や自然を取り込んでいました。実はこれが掛け軸の始まりなんです。障子の間から見える景色があまりにも美しかったため、それを絵にして部屋に飾った。それが掛け軸となったそうです。

和室の横にはにじり口があり、奥にはオルガンが置かれていました。ここはトップライトから太陽光が入り込み、祭壇のような厳かな空間です。Nさんはここに竹で作ったパイプオルガンを完成させるのが夢だとか。

浴室は露天風呂を思わせる空間です。浴槽の横には象の絵をモザイクタイルで表現しています。使用したタイルは1万個に及ぶとか。友人と4人で4日間徹夜して完成させた力作です。

1階に下りると板の間がありました。こちらには舞台となっています。能舞台として使用されるそうですが、本来の能舞台にはない天井に曲げ木を使用したりしています。アジアの様々な国の特色を取り入れたエスニックモダンな空間となっています。また、庭に生えていた竹をコンクリートに型とって、オブジェにもしています。おもしろい試みもしています。

板の間の横には広さ8畳の和室がありました。ここは舞台を見るときの特等席。この特等席でNさんの舞を拝見させて頂きました。


大島 健二

1965年神戸生まれ。
神戸大学工学部大学院を修了後、日建設計に勤務。
29才で独立し、現在OCM一級建築士事務所主宰。

OCM一級建築士事務所

東京都渋谷区恵比寿1-7-2-33
TEL   03-3441-3499
E-mail   oshima@ocm2000.com

最初に敷地を拝見させていただいたときのことを今でも憶えております。普通の業者さんだったら逃出してしまいそうな崖地に、うっそうと生い茂る武蔵野の原生林と竹やぶ。しかし、私はそこに、そう、かぐや姫でも出てきそうな「何ものかおわしまする…」感じに誘われて、快く設計を引き受けたのであります。そして設計へと突入。
煎茶や地唄舞、バロック音楽という施主自身から引出される強烈な「固有性」に、私が建築家としてのプライド、つまり建築の「構成原理」をそこに与えることができるかどうかがポイントになりました。施主とともに京都に通って一緒に茶室を実測したり、国立劇場で舞う施主の姿から何か手掛かりを引き出そうとしたり…。
結果的には、私と施主の両者の想像を遥かに越えた未知のニッポンの空間がそこに出現しました。
 
Nさんは多くの趣味をお持ちです。しかもその趣味1つ1つがとても深いという感じが致します。Nさんは人生半ばの年齢です。「洋」の文化へのあこがれもあったと思いますが、趣味が「和」の方に収斂されています。色々なことをされていますが、それぞれ達人の域におありで、建築に対しても造形が深いです。形にとらわれず、少し壊しながら新しい解釈でお宅を建てられています。とても勉強になりました。