2003年10月25日放送
東京都目黒区・山岡邸
-ビストロ きのこの隠れ家南欧風-
1998年7月完成
敷地面積    82平米(25坪)
建築面積    56平米(17坪)
延床面積   175平米(53坪)
混構造地階+3階建て
建築費:3604万円  坪単価:68万円


山岡さんのお宅は南フランスをイメージした建物。ご主人はフランス料理のシェフ、奥さんはフランス料理とお菓子の研究家。ご夫婦共に若い頃にフランスで暮らした経験があります。外壁はモルタルの櫛引き。ところどころのワインのビンを埋め込みました。玄関扉のドアノブはアミガサ茸をモチーフにしました。実はこれ鉄製のオブジェを作っている作家の作品です。

階段は古く使い込まれたようなデザインにし、南フランスの古民家を彷彿とさせる作りになっています。手すりは新品ですが、錆びついたような仕上りにしています。2階に上がると変った形の照明がありました。実はこれ巨大なホイッパーです。フランスで実際に使われているもので、奥さんがフランスで購入してきたとか。それを照明に転用した訳ですね。

2階のLDKは広さ16畳。開口部にはカフェカーテンを付け、プライバシーを守りながら、光を取り込んでいます。また、壁には奥さんが集めたお菓子の型を飾り、オブジェとしても使用しています。

キッチンに置かれた機器のほとんどが業務用です。キッチンがステンレス一色で冷たくならないように白いタイルと、焼き物で有名な町、フランスのアプトの色鮮やかタイルを使用し、キッチンを南仏風にコーディネートしています。

キッチンには料理器具が、キッチンのあちこちに吊るされています。見せながら収納することで普段使用している鍋やホイッパーがオブジェのになっています。他にも棚には奥さんのお菓子の型などがたくさんありました。

お子さんの部屋は3階。広さは6畳。実に明るい部屋となっています。壁の一部は北側斜線規制の影響で斜めなっていて、天井を高くしてハイサイドライトを設けました。このハイサイドライトから太陽光が取りこめます。壁にはお子さんが描いた絵をが飾られています。傾斜を利用してギャラリーのようになっていました。絵の腕前も素晴らしいですね。お子さんの夢は美術の先生だとか。

ご主人の部屋は広さ9畳。ゆったりとくつろぐためのスペースと仕事をする書斎スペースに別れています。お子さんの部屋と同様に北側斜線規制のため、壁が斜めになっています。狭く感じないように天井を高くする事で広がりを確保。斜めの壁と高い天井が屋根裏部屋のような雰囲気を出してくれています。

ご夫婦は料理のプロ。今回はご夫婦に料理とデザートをご馳走して頂きました。ご主人はキノコの王様といわれるセップのプロバンス風ソテーを、奥さんには19世紀の焼き型でワッフルを焼いていただきました。至福の時、どちらもとてもおいしかったです。ごちそうさまでした。


綾野 喜信
 
アヤノ スペースデザイン オフィス

神奈川県南足柄市塚原4642-42
TEL   0465-72-0676
FAX   0465-72-1738

きのこの家
木の子の家とでもいいましょうか。幸せのシンボル きのこ。
木のぬくもり、鉄のぬくもり、壁のぬくもり、そして遊び心たっぷりの道具達。作る喜びで一杯の職人の芸。
動かない建築物にとって、せめて呼吸をする素材達をたっぷりと使った家をと、仲間の職人達と造りました。
本物の素材を使って、しっかりと家を造る “slow house” とでもいいましょうか、そんな時代になってほしいと願っています。
 
今回、ご夫婦に腕を振るっていただいたキッチンは、プロ用機器。これは「美・用・強」つまり丈夫で、使いやすく、そして美しいという、建築でもよく使う言葉に通じるものがあると感じました。山岡さんのキッチンはプロ用ですから使いやすく、丈夫にできています。しかも、全体を見ると美しくデザインされていたんですね。人生をより楽しくということで、そのサービス精神が外観に表れ、中で生活する山岡さんご家族と私のような客人が大変楽しめる建物となっていました。もう一つ感心したのが、お嬢さんの素晴らしい感性のあふれた絵画。プロの料理家の両親から素晴らしい才能を受け継いだと感じました。