2003年9月27日放送
東京都目黒区・白子邸
-2世帯が仲良くなる秘密の部屋-
1999年5月完成
敷地面積   165平米(50坪)
建築面積   116平米(35坪)
延床面積   239平米(72坪)
RC+木造3階建て


白子さんのお宅は家族5人が暮らす2世帯住宅。家の中心に中庭を配置。その中庭にシンボルツリーとなるねむの木を植えています。
白子さんのお宅には芸術家の作品となる陶器がいくつも飾られたギャラリーがありました。ギャラリーを経営されています。いつか自宅にギャラリーを持ちたいと思われていたそうです。お母さんの念願が叶ったわけですね。

2階の中庭挟んで西側は子世帯のスペース。生活の中心となるリビングダイニングは広さ12畳あります。キッチンはカウンター式。奥さんの身長に合わせた設計となっています。

子世帯のりビングの東側には壁のような扉がありました。この扉を開けると…。秘密の部屋がありました。来客時やお子さんの友達が遊びに来たときにリビングとつなげて使え、大変重宝しているそうです。開けてしまえば邪魔になる扉も収納できます。
子世帯の寝室は3階にあります。1・2階はコンクリートですが、3階は木造となっています。ベッドスペースの手前はお子さんの遊び場としても使用しています。更に屋上に出られます。中庭を挟んで右側が親世帯、左側が子世帯となります。

親世帯のLDKも2階にあります。広さは10畳。キッチンはカウンター式になっています。収納はあえて食器を見せるようにしたとか。なかなか使い勝手の良さそうなキッチンです。

和室は広さ6畳。白子さんのお宅で唯一の畳を敷いたスペースです。客間として使用しているそうですが、お孫さんが遊びに来てはここで過されるとか。そして、和室にも壁一面の引き戸が設置されていました。引き戸を開けると…。先程紹介した秘密の部屋につながっていました。

この部屋は親世帯と子世帯の共有スペースとなっていました。使い方によっては子世帯と親世帯のそれぞれに広がりを持たせてくれます。また、2世帯をワンルームのようにつなげてくれたりします。2世帯の間を取り持つ空間です。


阿部 勤

1936年 東京都生まれ
1960年   早稲田大学理工学部建築学科卒業後、坂倉準三建築研究所勤務
1975年   室伏次郎と共にアルテック建築研究所設立
早稲田大学理工学部・東京芸術大学美術部・女子美術短期大学(非常勤講師)を経て現在、日本大学芸術学部非常勤講師
1985年   「蓼科レーネサイドスタンレー」にて第4回日本建築家協会新人賞受賞
   
アルテック

〒153-0053
東京都目黒区五本木1-12-17
TEL   03-3792-4081
FAX   03-3719-0866
E-mail   ezf04351@nifty.com

私は“らしさ”とか“馴染み”という言葉を大切にし、その住まい手らしい又、住まい手、自然環境、社会環境に馴染む住まい造りを心懸けています。
この住まいの大きな特徴は、1階から2階へと展開するパティオです。
この空間は二世帯を隔て適度なプライバシーを確保すると同時に二つの住まいを結び付け、馴染ませる役目も果たしています。又この空間には、好きな陶芸家の器が置かれ、奥様がどうしても欲しいということで探し求めて植えられた“ねむの木”等、緑と光と風に満ち、人との馴染み、自然との馴染みを生み出す空間となっています。この空間は、桜並木の道に、細いトンネル状の空間を通し開かれ、ギャラリーのウィンドウと共にこの住まいの顔とし、この住まいらしさを表現し、街を楽しくしています。建物は、木、土、石といった人類が永いこと馴染んできた気心の知れた自然素材で作られており、時の経過と共に古くなり住まい手や自然と益々馴染み、街の風景となっています。
 
白子さんのお宅は敷地がおよそ50坪。そして、南側に隣家が迫っているため、南側を閉ざさなければ、いけなくなりました。しかし、北側には桜並木。これを味わうように建てられています。条件は他にもありました。2世帯住宅、ギャラリースペース、住宅部分にもギャラリー的スペースを設けるなど大変難問であったと思います。しかし、建築家は見事な住宅を設計されました。設計の中に建築家としての技術と人生経験からくるものの見方、その厚みとが組み合わさってできあがった建物だと実感致しました。