2003年6月28日放送
東京都世田谷区・田邉邸
-フランス家具と広い家事室-
2001年6月完成
敷地面積    190平米(57坪)
建築面積     77平米(23坪)
延床面積   144平米(43.5坪)
木造2階建て
建築費:2600万円    坪単価:60万円


田邉さんのお宅は敷地58坪に建てられた白色を基調とした建物。隣りには奥様のお父さんの家があり、両家の間にはプライバシーと通風を確保するために中庭を設けました。

玄関ホールは広々としていてお子さんの遊び場としても最適です。玄関の床には上がり框を設けず、全て同じタイルを敷きつめました。統一することで更に広がりを感じられるようになっています。

ご主人が集中して勉強できるように書斎を玄関脇に確保しました。造り付けの本棚には書籍が並んでいます。書斎の床はリビングと同じタイルを使用しました。

居間兼食堂に置かれた家具はご夫婦がフランス在住時に購入されたもの。田邉さんご夫婦はフランスに6年暮らしました。その時、購入した家具が大気に入り、建築家にはフランス家具が似合う家を希望しました。中にフランス出身の有名デザイナー、フィリップ・スタルクの作品もあります。

キッチンは大人2人で立っても使用できるスペースを確保。ご主人も料理好きのため、ご夫婦揃って、キッチンに立つことが多いとか。キッチンで作業中にちょっと腰かけるためにアルミ製のスツールを置きました。実はこのスツールもフィリップ・スタルクのデザインです。

奥さんは建築家に家事室を希望しました。フランスではキッチンの奥や地下室に広々とした家事室があったそうです。雑然とした生活雑貨を置いたり、洗濯する場所が必ずあったとか。2階の脱衣所から衣服やタオルを洗濯機横に落とすダストシュートも設けました。

寝室には大きなベットを置いてあります。お子さん3人とご夫婦の家族5人が一緒に休まれるそうです。こちらにもウォークイン・クローゼットを設けました。衣服などがいっぱい入り、とても重宝しているそうです。

子供室は将来2部屋に分けられるように設計してあります。家を建てたときにはお子さんも2人でしたが、今ではもう1人産まれ、将来もう1部屋作るか、この子供室を3つに分けるか、思案中だそうです。親にとっては全てのお子さんが平等に可愛いもの。3人とも個室が得られるといいですよね。


横畠 啓介(よこはた けいすけ)

1954年 東京に生れる
1977年   武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業
1979年 武蔵野美術大学大学院修士課程修了
1979年~1987年   一級建築士事務所 第一工房 に勤務
1987年   一級建築士事務所 ワークスアソシエイツ  設立
1994年   東京建築士会住宅建築賞「金賞」受賞
1995年~2002年   武蔵野美術大学建築学科非常勤講師
   
一級建築士事務所 ワークスアソシエイツ

東京都目黒区目黒 2-15-15 岡地ビル6階
TEL   03-3715-5181
FAX   03-3715-5182
E-mail   works@ops.dti.ne.jp

この住宅は、都内の良好な住宅地に位置します。
敷地は、南に庭・北に道路がある、南北に長い矩形です。
計画にあたり、「明るく開放感のある空間とすること」「動線計画・収納計画
等、生活を充分に配慮すること」「シンプルで飽きのこない空間とすること」に
留意しました。
いわば「基本に忠実な住宅」を意図したわけです。

仕事室としての書斎を、玄関からつづく「土間」に設けることにより、子供たちが中心となる生活ゾーンから「距離」をとりました。
キッチン・ユーティリティーが使い易いよう、行止りにならない(サーキュレーションできる)動線も意図した点です。
光と風を取込む中庭とゆとりのある天井高さによって「のびやかな空間」を、仕上げ材料の種類を限定することによって「シンプルな空間」を実現できたと思います。
 
田邉さんのお宅は家族5人がほほえましく生活できる建物です。ご夫婦の希望はシンプルで、機能的な家。その希望が見事に実現されました。シンプルな建物の力で、人と物が見事にひきたっています。もう一つ感心したのは中庭の働き、中庭の一本の緑が、とても豊かな空間を生みだしました。この様にシンプルという中にも色々な工夫が見て取れるお宅です。シンプルというものは装飾的なものよりも大変時間が必要で、難しいものかもしれませんね。また、ご夫婦共にフランスで、人生は楽しむためにあるという考え方を得られました。その考え方をこの建物で実戦しながら生活されるんですね。