2003年5月10日放送
東京都新宿区・田島邸
-半地下で悠々生活29坪の2世帯住宅-
2002年12月 完成
敷地面積  96平米(29坪)
建築面積  57平米(17坪)
延床面積 160平米(48坪)
RC造地階+鉄骨造2階建て
建築費:3600万円         坪単価:74万円


田島さんのお宅は住宅密集地、敷地29坪に建つ住宅。田島さんは建築家に家族5人が快適に暮らせる住宅を希望しました。外壁にはガルバリウムを使用。

大型の駐車場は幅5メートル。車2台分停められます。奥さんのお父さんは青果業。お店をすでに閉じていますが、お得意さんに今でも配達を続けています。大事な商品を保存する冷蔵庫も設置。駐車場からは直接、地下の親世帯のスペースに移動できます。

地下の親世帯のスペースは広さ12畳。床の一部には畳を敷き、ゆったりとくつろげるように配慮されています。部屋の隅に設置された縦長のものは冷暖房機器、輻射熱によって冬には暖かく、夏には涼しく暮らせるようにしてくれます。

1階に上がると田島さんのお宅の構造が良く分かります。各フロアに高低差をつけたスキップフロアになっています。こうすることで空間を有効利用できるんですね。

キッチンは広さ6畳。広々としたスペースを確保しています。圧巻はこのシステムキッチンの収納力。家族5人のものが悠々と納められますよね。キッチンにかかった費用は車一台分。これはご主人から奥さんとお母さんへのプレゼントだとか。

リビングは広さ10畳。南側は全面開口となっています。田島さんのお宅は住宅密集地に建っています。明るく生活するための窓を設置したいが、プライバシーも確保したもの。そこで建築家は細かい穴が空いた波型のプレートを南側に設けました。視界が抜けそうで抜けない、明かりが入る工夫です。

浴室は白色で統一した空間。タイルには一枚一枚、波打ったデザインになっています。明かりによって美しく光ります。バスタブにはジェットバスを取り付けています。一日の疲れを癒してくれる優れものです。

寝室は広さ6畳。天井は北側斜線規制を受けて斜めにカットされた形になっています。まるで屋根裏部屋のような空間。開口部のブラインドを閉めると落ち着いた空間となり、ゆっくり休めるとか。


藤田 征樹

1967年 富山県生まれ
1991年   新潟大學工学部建築学科 卒業
1991~99年   菊竹清訓建築設計事務所 勤務
1995~99年   同事務所 チーフアーキテクト
1999年~   藤田征樹建築設計事務所 主宰
   
藤田征樹建築設計事務所

〒161-0033 東京都新宿区下落合3-14-21目白ビル902
TEL:03-3565-5201 FAX:03-3565-5202
E.mail:mf-archi@beige.plala.or.jp

約29坪の敷地に、二世帯であることや、2台の車庫などの要望を(とりわけ大きな要望が“広く、広く”ということでした)満たした上で、実際の床面積からは考えられないような空間の広がりを感じ取れる住宅ができないものかということがテーマでした。外観は道路斜線など法規制から切り取られた最大のボリュームをガルバリウム鋼板で覆い、必要な開口を自然な感じに設けました。その中に自由でおおらかな雰囲気で日光の燦々と入る広場のような内部空間を目指しました。また、大きなガラス面、各部屋の天井高の変化、少しづつスキップさせたフロア、テラスなどの外部空間を適宜設けることなどで、さらに視覚的広がりを感じられるようにしました。

田島さんのお宅は住宅密集地29坪の敷地に建っています。中に入ってみますと実に大きな建物に感じます。建蔽率、容積率ともに緩やかだということだけではない気が致します。田島さんは昔からこの土地にお住まいですが、以前建っていた建物はごく普通のもので、暗い空間での生活を強いられていた都言うことなんですね。新しい建物はできるだけ明るい空間を確保できるように設計されており、その答えが随所に見られます。同じ敷地に建っていても設計次第で居住空間は変わるということです。採光のほかに駐車場2台分確保しなければいけない、2世帯住宅でなければいけない等の色々な難問がありました。しかし、その難問を見事に解決した建物と言えるのではないでしょうか?