2003年4月19日放送
東京都世田谷区・藤原邸
-地下は別世界!大家族都会の家-

2002年1月 完成
敷地面積 83平米(25坪)
建築面積  49平米(15坪)
延床面積 170平米(51坪)
RC造地階+木造2階建て
建築費:4100万円         坪単価:80万円


藤原さんのお宅は住宅密集地に建つ2世帯家族5人が住まう建物。建築家のご主人が自ら設計されました。3方を家で囲まれた広さ25坪の敷地に家族5人、各々の個室を設けました。間口全面に折り戸を採用しました。開け放つことも、締め切ることもでき、使い勝手も良さそうですよね。

地下室は広さ23畳の居間兼食堂とキッチンになっています。こちらでは奥さんとお子さんがピアノを弾かれるとか。天井に岩綿吸音板を使用し、防音対策も万全!飾ってある絵画は全てご主人が描いたもの。

明かりの演出にも工夫があります。ダイニングテーブルの下に照明を埋め込み、テーブルをライトアップ。机は透明アクリルとムクのナラ材を交互に張り合わせたものになっているため、下からの光を通します。壁沿いの収納の内側にも照明を設置しました。

キッチンは広さ3畳。完全オーダー式のシステムキッチンとなっています。色から寸法まで指定ができるとか。シンク奥の壁には耐熱性の強化ガラスを使用しました。このおかげで汚れやすい壁も簡単に掃除できます。

お母さんの部屋は1階の一番陽当たりの良い場所にあります。道路側に面した部屋は洋裁教室として使用。立て替え以前は、この土地にお母さんがご夫妻でお住まいでした。娘世帯と同居となった立て替え後も、以前、自分が使っていたと同じ場所に部屋を設け、環境の変化を極力少なくするよう配慮されました。

洋裁教室の奥には4畳半の茶の間と2畳のキッチンも確保されています。洋裁教室と茶の間の間に引き戸を設置。開けて使えば、14.5畳の広々とした空間となります。

寝室は広さ8畳。ベッドの奥にはカウンターを設けました。こうすることで寝ている時に頭部に圧迫感を感じずに済みます。ちょっとした物も置け、使い勝手がいいですよね。壁沿いには家を建てる以前から使用している棚を置きました。その棚に合わせて作った机もご主人のデザイン。

子供室は同じデザインのスペースが2つあります。お子さんの部屋は壁や床の色までお子さんの要望を最大限生かしました。採光と眺望を確保するよう、広いはめ殺しの窓が設けられています。


藤原 成暁

1953年東京生まれ。 武蔵野美術大学 建築学科卒業後、鬼頭梓建築設計事務所などを経て、1990年に藤原成暁設計室開設。

現在、同設計室代表、一級建築士、一級建築施工管理技士、インテリアプランナー。
日本工学院八王子専門学校非常勤講師 東京設計学校非常勤講師。日本建築家協会、日本建築学会、東京建築士会会員。


(株)一級建築士事務所 藤原成暁設計室

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「コミュニティーとプライヴァシーを重視  ~高齢化を視野に入れた都市型二世帯住宅~」
現代は、高齢化社会と言われます。今世紀初頭の「2020年に4人に1人が高齢者(65歳以上)」が今や、さらに少子化が拍車をかけて加速し、超高齢化社会に推移している様です。この様な時代
を視野に入れながら、都市型二世帯住宅の一つの在り方を提案しています。

1. 全国平均の敷地面積25坪に家族6人+大型犬1匹のそれぞれの個室を用意すること。
2. 家族全員が集えるスペースをつくること(世代間の交流)。
3. 都市型住宅のため来客が多く、これに対応したプランとする
(例えば、来客が他の家族のプライバシーを犯すことなく出入りできること)。
4. 親世帯の居住環境を第一優先にする。また高齢者の環境を建て替前と努めて変わらない様にする。
5. 二世帯それぞれが独立して食事が出来るようにする
(食事の時間帯が異なる二世帯の生活ペースを守る)。


藤原さんのお宅は建築家の自邸ということで創意工夫の数々でした。ご主人は絵も書も書かれ、とても繊細でいらっしゃいます。ご主人が書として書かれたものの中に「飛鳥工人の口伝」がありました。これは飛鳥の大工の棟梁が師匠から弟へと代々伝えてきた建築についての心構えです。その中に「地域伽藍造営 四神相応地択(ちいきがらんぞうえい ししんそうおうのちをえらぶべし)」とあります。簡単に訳すとその地域に合った、その地域の風景になるような建物を建てるようということです。ご主人はこの考え方を大切にし、狭いと敷地を有効活用した大胆にして繊細な設計をされました。この建物は地域を大切にしながら建っているという感じが致しました。