2003年2月1日放送
東京都小平市・飯島邸
-自然素材 伝統を守る木組みの家-

2002年2月 完成
敷地面積   105平米(32坪)
建築面積  42平米(12.5坪)
延床面積   109平米(33坪)
木造2階建て
建築費: 2149万円 坪単価: 65万円


飯島さんのお宅は敷地32坪に建つ木造2階建て。東側の外壁はわずかにカーブしているのが印象的な鎧壁。この壁は静岡県にある掛川城を施工した左官屋さんの仕上げです。腕の良い職人さんならではの技ですね。外構はご主人の力作。京都のお寺を思わせる瓦と砂利の組み合わせは見事ですよね。


1階LDKは広さ18畳。ムクの木材がふんだんに使われているため、木のいい香りが心を落ち着かせてくれます。剥き出しの太い梁はアカマツ。実は飯島さんのお宅は日本の伝統的な「木組み」工法で建てられています。太い梁がしっかりと家を支えている様子が良く分かります。しかも家族総出で柿渋を塗ぬられたそうです。


太いダイニングテーブルは長さ2.5メートル。モミの木の一枚板を使用しています。大根を思わせる太い脚を寝かせれば低机にもなる優れもの。照明は蛍光灯。蛍光灯に障子を張り、デザイン的にも家の雰囲気と合うようにされたとか。家を新築する以前から使用されていたものを再利用するためのアイデアです。

キッチンはカウンター式。造り付けではなく、システムキッチンを使用されています。このキッチンはモデルルームなどで使用されていたもの。使わなくなったものを安く売ってくれる業者から購入。通常100万円以上は掛かるものがなんと27万円で済んだとか。

システムキッチンをそのまま使用せず、家の雰囲気と合うようにキッチン周りを大工さんと家族で施工されました。背面の収納扉は廃材を利用して、ご主人が取り付けたとか。ガスレンジ横の壁も一枚60円のタイルを買ってきて奥さんが施工されたそうです。

2階の子供室は広さ13畳。ここではダイナミックな木組みを見上げられます。丈夫な木組みを利用して作られたブランコ。木組みをよじ登ったり、ブランコではしゃいだりとお子さんの友人が遊びに来たときには大騒ぎだとか。

ロフトはお子さんの寝室兼収納となっています。お子さん3人で仲良く布団を並べ、川の字になって寝ているとか。広々としているため、お子さんの遊び場、収納として便利な場所となっています。こちらには三角の窓を設置。ここから外を見えるのがいいですよね。

寝室は広さ8畳。こちらはには物干しとしてデッキも設置されています。普段は襖を開けているため、子供室の延長として使用しているとか。


高橋 昌巳

1953年東京生まれ。                                                     芝浦工業大学工学部建築学科卒業。                                          1987年シティ環境建築設計設立

シティ環境建築設計

TEL:03-3978-0604
E-mail  city@minos.ocn.ne.jp


木や土や紙など自然素材の特徴を生かした家づくりを、建て主の直営というスタイルで続けています。これは、限られた事業費を最大限有効に使うため、使用する素材を自分達で確認してもらうため、そして大工さんや左官屋さんなどの職人さん達と楽しく工事を進めていくために続けている家づくりです。今回も建て主の家族には、柱や梁などの材木に柿渋塗ることや部分的な泥壁付けなど、できることは直接工事に参加してもらいました。この家も、栗の土台、杉の7寸角の通し柱、赤松の太い梁など国産材を適材適所に用いた丈夫な構造で設計してあります。壁は竹小舞を掻いて泥壁を塗り、土佐漆喰塗りで仕上げてあり、時間とともに味わいが増していくはずです。地域の景観をよりよくするためには、そして住み手に愛されて長持ちする家であることが重要なことなので、「3代もつ家づくり」を合言葉に、じっくりと時間をかけた仕事を楽しみながら行っています。

飯島さんは家造りを終えられてからひとつのアルバムを作られました。この敷地が更地だった頃や家造りに参加されているお子さん、この家造りに携わった職人さん達の写真もあります。多くの方々が集まり1つの家を完成させたんですね。それが思い出として大切にされています。そして今回、実感したのは在来工法のあり方ですよね。今は経済効率優先で、一見無駄に見えながら実は大事なものを切り捨てしまいます。その切れっぱしにこそ人と人とのつながり、温もりがあり、そこにこそ良さがあるような感じが致しましたね。