2026年5月2日(土)放送

- 街につながる土間のある家 - 東京都江東区・佐藤邸

竣工
2024年9月
敷地面積
63.7㎡(19.3坪)
建築面積
44.5㎡(13.5坪)
延床面積
128.1㎡(38.8坪)
構造
木造在来工法
建築費
-
坪単価
-

北東面 外観

路地の奥にたつ東西に細長い敷地にたつ、間口3.8mの3階建て住宅。1階の出入り口は3本引きの木の框のガラス戸です。

1階 玄関土間

10畳以上の広さの玄関土間。車庫や店舗に転用可能な多目的空間です。幅の狭い耐力壁を向かって左に数多く並べて配置することで、奥行きのある空間を生んでいます。

2階 食堂・台所

2階は階段を挟んで西側が食堂・台所。高さ5mの吹き抜け空間です。1階と同じく幅の狭い構造壁を、南北に設けて強度を確保。間を収納として活用しています。

2階 居間

階段の東側は。低い天井と低い床のソファスペースと、5mの吹き抜けとサイザル敷きの2つの居間があります。スケルトン階段を通して台所まで視線が抜けます。

3階

3階は西端に夫の書斎。吹き抜けを挟んで寝室、東端に妻の書斎を配置しています。間を繋ぐキャットウォークのような廊下は共有のライブラリーとなっています。

屋上テラス

屋上テラスは約6畳大。近隣の建物の屋根を超えて視界が広がります。趣味の多肉植物もここで育てています。

設計者プロフィール

阿蘓俊博

1976年 東京都生まれ
2000年 日本大学理工学部建築学科(本杉省三研究室)卒業
2002年 日本大学大学院理工学研究科建築学専攻(本杉省三研究室)修了
2003-09年 ツナミデザイン一級建築士事務所
2010年 アソトシヒロデザインオフィス 設立
2015-19年 専門学校東京テクニカルカレッジ建築科 非常勤講師
2017年- 門仲オフィス(サテライトオフィス)開設
2024年- 日本大学理工学部建築学科 非常勤講師
事務所名
アソトシヒロデザインオフィス
所在地
東京都練馬区早宮1-18-17-311
電話
03-5934-0127
FAX
-
Eメール
aso@asotoshihiro.com
URL
https://asotoshihiro.com/
SNS
-

設計者のひとこと

この建築は東京都江東区に建つ住宅である。美術館や庭園、カフェやショップ、寺院など多様な建物が点在していることにより、散策でにぎわう街となっている。敷地は散策路から少し離れた袋路の奥にあり、暮らすには静かで良好な環境だが、人の気配は減り、閉じた印象であった。
この地域の背景を調べると、江戸時代の埋め立てから生じた町屋と、海運の良さにより、地方各地から運ばれる物流の拠点として栄え、1階を街に開いた店舗、上階を住居とした蔵屋敷や見世蔵が建ち並び、今と変わらずにぎわう街であったようである。
敷地と要望から住宅の規模は、都市的なフットプリントの小さい3階建てとなる。このような地に建つ住宅はどうあるべきか。これからこの地に建つ住宅と、ここに暮らすクライアントの長い時間を思うと、1階は街に開くことができ、上階は暮らしを支える場とした現代の見世蔵のような、そしてこの地の足跡を継承するような在り方がふさわしいのではないかと考えた。
1階の袋路側は土間を設け、広く街へ開くことができるものとした。土間は近隣住人や友人が集う場、子どもの遊び場、工作場やガレージ、そして将来は見世蔵のように街に開いたギャラリーやショップなどに転用することができる懐の広いものとした。それは住宅が他者に対し完全に閉じるのではなく、他者に開き、関わりながら暮らすことで、この袋路に少しの動きを与える。
1階の一部と2階、3階、屋上階へと上に積まれる暮らしを支える場は、水平な床を単純に重ね、各階を分け隔てたものとはせずに、暮らしの場のそれぞれを構造壁が枠取ることにより緩やかに分け、さらにその場に合せた広さや床高さ、天井高さをもつ段床が伸びやかに連なるものとした。そして平面中央の階段が、1階の土間を含めてひとつに紡ぐ。それは蔵にある多種多様な品々が、その大きさや性質に分けられ、連なり、見渡すことができるように、3階建てという上に積まれた都市的な暮らしに分節と連関、統合を与え、光と風の流れ、家族の居場所とその気配、空間の奥行きとつながりなど、様々な関係性を豊かに広げる。
建築の外形は勾配屋根をもつイエ型とはせずに、シンプルな整形立方体のハコ型とした。それは多様な建物が点在するこの地において、そして現代の見世蔵として、一見してプライバシー性の高い戸建て住宅であることを認識し難くするとともに、将来、ギャラリーやショップに転用した時の姿として相応しいと考えたからである。
この平野という地に住宅を計画すること、そしてこの地に長く暮らすこと。その一つの答えを「土間と段床」で示せていたらうれしい。