第206回『寒ブリ』
12月15日放送
■冬の魚介の王様、寒ブリ!
■冬の魚介の王様、寒ブリ!
11月末から1月にかけての寒い時期に獲れる寒ブリははちきれんばかりに脂が乗り、大きさはなんと10キロを超えます。身がしまり霜降り肉のような脂・・・。刺身にはもちろん煮ても焼いても最高の味わいで、まさに人々にこよなく愛されている冬の魚介の王様です。ブリは漢字で「鰤」と書きます。その由来は12月(師走)によく食べることから「鰤」になったと言われています。そして昔から出世魚のブリは縁起が良いとされ、富山県では今でも娘を持つ家庭でお婿さんの出世を願い嫁ぎ先にブリを送るという風習があります。
■美食の冬の始まりを告げる雷鳴
■美食の冬の始まりを告げる雷鳴
ブリは九州の沖で卵を産んだあとエサを求めて北海道周辺まで北上します。ここで豊富なエサをたっぷりと食べて栄養を脂肪として蓄えるのです。丸々と太ったブリは秋になると南へ向かいます。そこで一番脂が乗ったブリを待ち受けているのが今回紹介する氷見なのです。11月下旬、富山湾では決まって海が荒れ、雷が鳴りはじめます。地元の人たちはこの雷を「鰤おこし」と言います。漁師たちが待ちわびたブリの豊漁を告げる冬の合図です。これを寒ブリ漁の幕開けとし、翌年の3月まで漁で賑わいます。そんな日本一の氷見ブリを無駄なくおいしく食べてやりたい、内臓までも最後まで食べつくす、地元ならではの寒ブリ料理がありました。手間ヒマかけた料理人の技は必見です。
■400年の歴史を誇る定置網漁
■400年の歴史を誇る定置網漁
氷見の海面には不思議な模様が描かれています。それは定置網です。大きなものは長さ700メートルにも及び、この網を使って寒ブリ漁は行われます。漁は沖に向かって逃げようとするブリを待ち受けて網を張ります。定置網漁の仕組みは回遊しているブリの通り道を遮り、その習性を巧みに利用して、網の奥へ奥へと誘い込みます。この漁は、氷見が発祥の地と言われています。そして加賀藩祖前田利家の時代から寒ブリ漁が盛んだったことを示す文書が残されていました。当時の漁法も定置網だったと言われています。いかに効率よく珍重されている寒ブリを獲るか、氷見の寒ブリ漁の歴史を追いました。
■海と百万石の文化が作る・・・加賀料理
■海と百万石の文化が作る・・・加賀料理
石川の郷土料理を表現するとき、『加賀料理』という表現が使われます。加賀料理と呼ばれるメニューのほとんどは、もともとは庶民的な郷土料理、おふくろの味です。地元でとれた食材を日常的においしく食べる工夫をしてきた金沢の人々・・・その食材の中にはもちろん寒ブリも!料理と器の絶妙のマッチングが加賀料理の雅を生み出しています。さらに冬の金沢には欠かすことの出来ない珍味、かぶら寿司。明治の文豪、泉鏡花が師である尾崎紅葉にかぶら寿司を贈ったところ、大変喜ばれたという一説があります。冬が来るたびに凍てつく寒さの中でかぶらずしは作られ、人々はその気品ある味わいを楽しみました。厳しい風土が育んだ海の恵みと山の幸、そして丁寧な仕込みと熟成の時。寒ブリの入ったかぶら寿司は雪の金沢の味です。
取材先
制作担当
【ディレクター】乙黒 剛士(ViViA)
【プロデューサー】加納 満(ViViA)
【プロデューサー】高階 秀之(テレビ朝日)