第174回『布海苔(フノリ)』
4月28日放送
■ニッポンの暮らしを支えた玉藻!
■ニッポンの暮らしを支えた玉藻!
ニッポンが世界に誇る食文化・・・「海藻」。今回は、みちのく早春の海から「布海苔」をお届けします。フノリは、溶かすとトロトロのノリ状になります。古くから漆喰の外壁や土壁のつなぎに使われました。洗濯ノリ、織物糸に撚りをもたせるノリ付けにも欠かせません。衣食住に関わる大切な恵み。東大寺正倉院にある文書には「布乃利(フノリ)」の文字もみられます。万葉の昔、海藻類は『玉藻』と尊称され、『玉藻刈る』人々の姿と共にたくさんの歌が詠まれました。海藻が人々の暮らしに深く関わっていたことがうかがえます。
時つ風吹くべくなりぬ香椎潟潮干の浦に玉藻刈りてな ― 小野老
■玉藻刈る人々・・・
■玉藻刈る人々・・・
青森県下北半島に位置する風間浦村では毎年『布海苔採りツアー』が行われています。浜の人の合図でいっせいに渚におりて、旬の味を摘みとるイベント。冷凍しておけば、なんと1年中食べられます。コリコリした歯ごたえ、香り。湯にくぐらせると緑色に・・・。熱をかけると、とろみもでます。油で揚げるとカリカリに・・・。「サラダ」「味噌汁」「焼き物」幅広い見事な調理法をご覧下さい。この地にはフノリを巡る特別な物語も眠っていました。ひとりの男がフノリで貧しい人々を救ったというお話です。
■海の草を食べて生きてきた
■海の草を食べて生きてきた
<<飢饉は海から来る>> 岩手をはじめ、みちのくでは昔から「ヤマセ」による冷害に悩まされてきました。すさまじい海の冷気は真夏でも大地をむしばみ、作物を死においやります。ヤマセは人々に耐え難い飢えの苦しみをもたらしました。山の草木根を食べ尽くしても生きられない地獄。度重なる飢饉に備え、食材の保存の知恵が育まれました。『磯菜』、フノリはとりわけ雪降り積もる1月から芽を出し、春までとれます。冷たい岩礁にぎっしり実る海の野菜は、命をつなぐ海の草・・・。今では1年中食べられる「乾燥フノリ」。先人たちの暮らしを救い、支え続けてくれたフノリに感謝・・・。
■伊達家に伝わる「ふのり」の味・・・
■伊達家に伝わる「ふのり」の味・・・
勇猛果敢な武将!独眼竜・伊達政宗。大変な文化人で食通だったことでも知られる政宗公は、朝夕・毎日の献立も自ら考えました。<<少しも料理心のなきは、つたなき心なり>>
400年前から伝わる伊達家元日ご祝儀の膳。そこには「ふのり」が3度も登場します。いったいどんな料理だったのでしょうか?残された古文書からひもときます。「玉藻」と称された海藻類。この美しい言葉には深い恵みがつまっています。たかが布海苔というなかれ・・・布海苔がくれた大切な食文化をたどります。
取材先
制作担当
【ディレクター】 伊藤 浩子(ViViA)
【プロデューサー】 加納 満(ViViA)
【プロデューサー】 高階 秀之(テレビ朝日)