第98回 『舌ビラメ』
10月1日放送
★日本では「下品な魚」
★日本では「下品な魚」
「舌ビラメ」といえばフランス料理の高級食材ですが、実は日本沿岸でも獲れ、学名は「ウシノシタ(牛の舌)」、地方名も「ベロ、ゲタ、クツゾコ…」、フランス語も「Sole(ソル)=靴底」と、姿から連想された呼び名がつけられています。
江戸時代の書物「本草綱目啓蒙」には「早く腐る下品の物、ゆえに京には入荷しない(意訳)」と記されていますが、その後に「味は良い」とも。佐賀県では「クツゾコ」と呼んで煮付けや揚げ物にしますが、残念ながら日本では、それ以上の料理法は生み出されませんでした。
★フランスでは「海の女王」
★フランスでは「海の女王」
ヨーロッパで舌ビラメは最上級の魚の一つ。特に英仏海峡で獲れる「ドーバー産舌ビラメ」は「海の女王」と称えられます。肉厚で泥臭さは微塵もなく、しっかりとした歯ごたえ。大物は60センチ超。10月が旬で、世界的にファンが多く、イギリス人の大好物ですが料理法はグリル一辺倒…逆にフランスには魚料理ではダントツに多いレシピがあります。そのわけは…
★フレンチの命「ソース」
★フレンチの命「ソース」
淡白な舌ビラメの味を引き出す手段に「ソース」があります。バリエーションと情熱でフランス料理に勝る料理はありません。料理人たちは舌平目に合うソース作りにしのぎを削ったのです。「シェ・イノ」(東京)のオーナーシェフ井上旭(のぼる)さんは「ソースの井上」の異名を持つ達人。味のベースにも舌ビラメが欠かせないといいます。看板料理「舌平目のブレゼ ソース・アルベール」作りを通じて、その妙を紹介します。
★美食の誕生
★美食の誕生
歴史的にフレンチが劇的に洗練されたのが17世紀。
実在した宮廷料理人ヴァテールは、まさに時代の申し子でした。主人コンデ大公の政治的窮地を救うため、ベルサイユ宮殿の臣下およそ500名を引き連れて乗り込んできた国王ルイ14世の心を料理で射止めます。しかし、最後の料理の魚が時間に届かなかったため、自ら命を絶ったのです。その食材こそ「ドーバー産舌ビラメ」でした。その再現に挑んだのは、日本のフランス料理の第一人者、故・村上信夫さんでした。
「料理というものは、その国の文化の度合いをも表す重要な尺度の一つである。」
(辻静雄「味の世界史」より)
今週のおすすめレシピ
今週のおすすめレシピ
【舌ビラメのムニエル】
舌ビラメといえば、ムニエル。
濃厚なバターでソースを作れば、家庭でもおいしいフレンチが食べられます。
材料(1人分):
<ムニエル>
舌ビラメ・・・・・・・・・・・1枚
小麦粉・・・・・・・・・・・・適量
サラダ油・・・・・・・・・・・適量
<ソース>
バター・・・・・・・・・・・・20g
ケッパー・・・・・・・・・・・適量
インゲン・・・・・・・・・・・適量
レモン・・・・・・・・・・・・適量
グレービーソース(肉汁)・・・10cc
<ムニエル>
1.舌ビラメを3枚におろして、表と裏の2枚のフィレをとる。
2.舌ビラメのフィレ表と裏2枚を重ね、塩・胡椒をふり、小麦粉をまぶす。
3.熱したフライパンに、サラダ油とバターを敷く。
4.フィレの表は5分(ふん)くらい焼き、色をよくつける。裏は、軽く焼く。
<ソース>
5.ケッパーと、5mm角に切ったインゲン、果肉を細かく刻んだレモンを用意。
6.有塩バターをあたため、5を入れる。
7.バターがはしばみ色(茶色になる手前)になったら、グレービーソース(肉汁)を混ぜる。
取材先
制作担当
【ディレクター】林 英幸(ViViA)
【プロデューサー】加納 満(ViViA)
【プロデューサー】高階秀之(テレビ朝日)