第92回 『瓜』
8月13日放送予定
★暑気を払い、涼を呼ぶ

★暑気を払い、涼を呼ぶ
「瓜売りが 瓜売りに来て、瓜売り残し 売り売り帰る 瓜売りの声」
江戸下町では、金魚売りと並んで「うり売り」が夏の風物詩でした。
日本の瓜には2種類あります。熟した実を生で食べる「マクワウリ」と未熟な実を料理・漬物とする「シロウリ」、ともにメロンの変種です。
アフリカ原産のメロンが、栽培植物としてシルクロードを伝わってくるうちに、
「ウリ」となりましたが、米が伝播したときにはすでにあった歴史の古い作物です。
★中世の全国ブランド

★中世の全国ブランド
1300年前、奈良の都で酒造りが盛んになると、酒粕を使った瓜の漬物が考案され、「奈良漬」の名で全国の粕漬けの代名詞となります。今が漬け込みの最盛期。
「ほんのりと嫁 なら漬の舟に酔い」
ちなみに日本美人の代名詞である「うりざね顔」は「瓜実顔」。瓜の種のように色白で面長な人を指す言葉。「うりふたつ」も真っ二つに切った実の様子からきています。戦国の英雄、織田信長も瓜にぞっこんで自ら選んだものを朝廷への貢物としました。それが岐阜真桑村の瓜。「真桑瓜(まくわうり)」として全国ブランドとなりました。
★磨かれた涼味

★磨かれた涼味
奈良から京へ都が移ると洗練された瓜料理が登場してきます。
「雷干」は瓜をくり貫きらせん状にしたものを風干して作る、夏の京料理に欠かせない素材。バリバリとした食感が夏の雷の音にも似ています。
「菊乃井」主人、村田吉弘さんによる目にも涼やかな京懐石の世界。
大阪でも伝統の瓜が復活。玉造稲荷神社では、境内で伝統の「玉造黒門越瓜(たまつくりくろもんしろうり)」を作り、夏祭りで料理して参拝客にふるまっています。
「黒門といえども色はあおによし奈良漬にして味をしろうり」
法善寺横丁の浪速割烹「きがわ」主人、上野修さんもこの瓜に惚れ込んだ一人。
その料理は関西で夏の魚として人気の高い「あこう(キジハタ)」を使った逸品。
★瓜からメロン

★瓜からメロン
昭和30年代、皇太子御成婚で日本中が沸いた頃、画期的なフルーツ「プリンスメロン」が登場。マクワウリとヨーロッパ種メロンを交配した甘くて安価な新品種でした。開発したのは種苗会社「サカタのタネ」創業者、故・坂田武雄さん。
「メロンを安く供給し、誰もが食べられるようにしたい」
試行錯誤の末、昭和37年ついに青年の日の夢は実ったのです。
今週のおすすめレシピ

今週のおすすめレシピ
【しろうりとおあげの煮物】
しろうりを使った手軽で簡単な家庭料理。さくさくしたウリの歯ざわりと味のよく染みた柔らかなおあげがよく合います。おかずにも酒の肴にも。
1.鍋に、だし・醤油・みりんを入れ、油揚げを煮る
2.油揚げを取り出し、その煮汁で皮をむいたしろうりの薄切りを炊く
3.砂糖を加え、箸がスッと入るようになったら火を止める
4.油揚げと一緒に盛り付ける
しろうりは、小ぶりなものなら半分程度。油揚げと砂糖の量はお好みで。
取材先
制作担当
【ディレクター】林 英幸(ViViA)
【プロデューサー】加納 満 (ViViA)
【プロデューサー】高階秀之(テレビ朝日)





