第70回『公魚(わかさぎ)』
2月26日放送
★公魚(わかさぎ)の穴釣り
★公魚(わかさぎ)の穴釣り
冬が旬の公魚。冬の風物詩の一つ公魚の穴釣りが北海道網走湖で行われている。氷の下に穴を開けて行う穴釣りは、氷に開けられた穴から光が差し込み、そこに集まるプランクトンを春の産卵に備え食べに来る公魚を釣るという公魚の生態を利用した釣りである。氷の下の水温は、意外と温かく、湖底では6度近くもあり、公魚はそこを住処とし元気に泳ぎ回っている。
★公魚の歴史
★公魚の歴史
公魚の名前は、幼いことを意味する「ワカ」と細かな魚を意味する「サギ」をあわせたもの。450年前に書かれた「運歩色葉」には桜魚という別名で公魚が登場する。現代ではワカサギに「公魚」の漢字をあてるが、それは徳川十一代将軍家斉公に献上し、公儀御用の魚「公魚」の字をあてるようになったと言われている。公魚と言えばてんぷらや佃煮が有名だが、島根県・松江では公魚を照り焼きにし、ご飯の上にのせ熱い煎茶をかけて食べる「柳かけ」と呼ばれるお茶漬けがある。また唐揚げにし野菜とあえた南蛮漬けも人気である。
★諏訪湖の公魚物語
★諏訪湖の公魚物語
長野県・諏訪湖は日本でも有数の公魚産地である。漁の方法は、泥舟と呼ばれる小さな舟に乗り行われる投網漁。公魚は、海や汽水域に生息する魚で山に囲まれた諏訪湖には実は、公魚はかつていなかった。諏訪湖で捕れるようになったのには一人の漁師の苦悩と努力があった。その漁師の名は、「小松伝八」。明治時代、漁が自由化され鯉や鮒の乱獲により諏訪湖の魚が激減。漁師の生活と山に住む人々の貴重なタンパク源を補うため伝八は、霞ヶ浦から公魚の卵を運び諏訪湖で孵化させることを思いつく。大正4年、3日掛りで400万粒の卵を汽車を乗り継ぎ諏訪湖に運ぶが凍りつき失敗。翌年、再度チャレンジし見事に成功したのである。その成功により日本中の湖に公魚は移されるようになった。しかし最近では漁師の高齢化により、これからの諏訪湖の公魚漁を危ぶむ声もある。
★諏訪の公魚料理
★諏訪の公魚料理
諏訪湖の湖畔にその日捕れた公魚だけを使って佃煮を作る老舗の「えびす屋」がある。そこのこだわりは、タレだけで煮込み最後に梅肉を入れる「紅梅煮」。おばあちゃんの知恵が詰まった一品である。一方、若い世代にも公魚は受け疲れている。レストラン「セレーノ」では、「公魚の揚げ春巻」が人気のメニューである。
★網走湖の氷下曳き網漁
★網走湖の氷下曳き網漁
北海道・網走湖。ここには今年高校を卒業し親の後を継いで漁師になる決意をした杉山裕介君がいた。ここの漁は、「氷下曳き網漁」と呼ばれるもので氷の張る前にワイヤーに仕掛けておき氷の張った今の時期にワイヤーに網を通して公魚を一網打尽にする漁である。捕れた公魚は、お母さんとおばあちゃんにより佃煮にされる。ここでは公魚が家族の絆になっていた。
取材先
制作担当
【ディレクター】張 相烈(アサオカワークス)
【プロデューサー】柴野幸雄 (アサオカワークス) 加納満 (VIVIA)
【プロデューサー】高梨聞吉、高階秀之(テレビ朝日)