食彩の王国 食彩の王国

毎週⼟曜⽇ あさ9時30分から

毎週⼟曜⽇ あさ9時30分から

過去の放送

第65回『山芋』

1月22日放送予定

★冬の野菜「山芋」

★冬の野菜「山芋」

山芋は芋の中でも唯一、生食される芋です。その種類も、粘りの少ないあっさりした長芋から、独特の風味を持つ自然薯など様々。古くは「山うなぎ」とも呼ばれ、秋から冬の食料が不足する時に、栄養をつけてくれる大切な食材でした。

★山のごちそう 自然薯

★山のごちそう 自然薯

冬になり、自然薯の蔓が枯れる頃になると、芋が土の中で熟成し、食べごろになります。
しかし、枯れた蔓を頼りに居場所を見つけるこの時期の自然薯掘りは、目利きがないとできません。千葉県君津市の鈴木さんは、ご近所でも評判の自然薯掘り名人。遠くから枯れた蔓を見つけ、深い山の道なき道を登り、汗びっしょりになって無心に土を掘り起こします。掘った後は穴を元通りにし、翌年、翌々年のために種芋を残す鈴木さん。山で芋を掘るマナーです。そして掘った自然薯は、ほとんどお近所や知り合いの方にあげてしまうのだとか。食べるのよりも掘る方がお好きだとは、さすがは名人です。

★漢方薬 「山薬」

★漢方薬 「山薬」

中国料理で山芋は「山薬」と呼ばれ、生の山芋を乾燥させて、水分を蒸発させた物を水で戻して料理に使います。そもそも「山薬」というのは漢方での山芋の呼び名。「山薬」は胃腸や脾臓の働きを良くし、消化を助けるとされています。山芋を乾燥させて使うのは、成分を凝縮させるためだそうです。

★日本独自の「とろろ」

★日本独自の「とろろ」

日本で山芋といえば、なんといっても、とろろ。江戸の絵師 広重が描いた「東海道五十三次」の鞠子宿の絵にもしっかり鞠子名物であるとろろ汁を食べる旅人が描かれています。でも中国では食べないとろろが、日本ではなぜこんなに好まれているのでしょう。
それは、日本の食文化に深く関係していました。日本人の主食はご飯。しかし、当時の一般庶民が食べていたのは、麦や粟などの雑穀が中心でした。ぱさぱさした雑穀を食べやすくする食材、それがとろろだったのです。

★山芋食品「はんぺん」

★山芋食品「はんぺん」

江戸に入ると、つくね芋や長芋がさかんに栽培されるようになります。そして生まれたのが、冬のおでんにも欠かせないはんぺん。はんぺんのあのふわっとした口当たりを作るのは、実は山芋の力だったのです。

★和菓子

★和菓子

そしてもう一つ山芋が欠かせないのが和菓子の世界。めでたい日に配られる紅白饅頭のしっとりした生地も山芋の仕事。そして日本の四季を表す練切も山芋が使われていました。山芋は見えないところでも私たちの食を豊かなものにしてくれていたのですね。

取材先
制作担当

【プロデューサー】土橋正道  吉岡陽代(テレビマンユニオン)
【ディレクター】椎葉百合子(テレビマンユニオン)
【プロデューサー】高梨聞吉(テレビ朝日)