第60回『チーズ』
12月11日放送予定

フランス料理のディナーでは、メインディッシュの後にチーズのサービスが待っています。白カビにおおわれた”カマンベール”、青カビのブルーが美しい“ロックフォール”、そして通好みの山羊のチーズなどなど、好みのワインに合わせて選択肢は様々。フランスには「ひとつの村にひとつのチーズ」という言葉があり、フランスだけでも数百種類のチーズが作られています。また、世界中となるとその種類は千を超え、欧州はもちろん、中近東、中央アジアなど世界各地に深くチーズ文化は根付いています。

たとえば、イランの朝食にはチーズは欠かせないと言います。種類も豊富で、クリームチーズから10年も保存できるカチカチの石のような珍しいチーズもあります。そのまま食べても美味しいチーズは、料理にも多用され、その個性にあわせてメインにもデザートにも使われる優秀な食材。千を超えるチーズの世界には多くの物語が秘められているのです。

チーズを作る過程はその種類によって変わりますが、まず必要なのは原料となる乳。その乳を乳酸菌が発酵させ、酵素が固めると、乳の風味と形が変わり、保存のきく食べ物に生まれ変わります。種類によっては熟成させ、完成までに1年以上もかかるチーズもあります。乳酸菌も酵素も自然界にあるもの。人間は乳酸菌や酵素が仕事をしやすいようにちょっと手助けをするだけ。チーズの発祥は偶然がもたらしたものだという、数千年前のアラブ民話も残されています。

明治の庶民にとって、チーズはまったく馴染みのないものでした。日本人はチーズの主要な栄養源であるたんぱく質を豆腐などの大豆製品で摂っていたため、長い間、乳を利用する習慣がありませんでした。

ところが、奈良・平安時代の文献に“蘇(そ)”、“醍醐(だいご)”という乳製品の記録が多く残されています。蘇の作り方は牛乳を10分の1に煮詰めるということはわかっていますが、醍醐の作り方は残されていません。日本人が最初に出会ったチーズとは、蘇を発酵させた醍醐かもしれないという説もあります。

しかし、平安の後期には蘇が作られなくなり、その後の数百年間、日本人はチーズとは無縁の食生活を送ってきました。
チーズなどの乳製品が国内で再び製造されるようになったのは明治維新以降のこと。その後、昭和に入ると、日本人のチーズ利用は年々増加し定着していきます。和の食材をもひきたてるチーズ。その楽しみ方は今でも広がり続けているのです。
取材先
制作担当
【プロデューサー】土橋正道(テレビマンユニオン)
【ディレクター】河野あや子(テレビマンユニオン)
【プロデューサー】高梨聞吉、高階秀之(テレビ朝日)





