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#09 イチロー元年の94年
 顔面にボールを投つけて以来、取材ではいつも挨拶するようになった私とイチローですが、就任1年目の仰木監督から登録名を「イチロー」にすると発表された時は渋い顔をしていた。「実力で有名になりたいっス」と自分を鼓舞する彼にすぐさま野球の神様は微笑んだ。その年、前人未到の200本安打、リーグ最高打率、69試合連続出塁記録。  彼にいつも言われる。「あの時坪井サンのボールで怪我してたらこんな記録だせなかったよなぁ」それを考えると、そらぁ恐ろしい・・・。

◆小宮悦子

 お久しぶりです。  スコットランドとイギリス南西部のコーンウォル、イギリスの「周辺」ばかりを訪ねてきました。そこには、ロンドン近郊には見られない風景が広がっていました。深い森に囲まれた湖に浮かぶ、幽霊のような古い城。あるいは、強風にさらされて樹木も育たない、ムーアと呼ばれる広大な荒れ地。  気候も、全英オープンをごらんになればおわかりの通り、とても夏とは思えない肌寒さ。晴れたかと思えばあっという間に厚い雲に覆われ、冷たい雨が落ちてきます。その気まぐれさときたら、蒸し暑い日本の夏にも閉口しますが、やっかい度では上を行っているようです。  人々はそうした気難しい自然と長い間向き合いながら、独自の文化を育み守り続けてきました。その自負と誇りはうらやましいほどです。美しい森や古い街並を残そうとする良い意味での「保守性」は、もしかしたら、今の私達日本人とは、対極にあるものなのかもしれない、そんな風に思えたのでした。