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医療者の情熱と先進の医療が、不可能を可能にする――。
今回のSmaクリニックでは、そんな奇跡の医療を徹底リポートしていきます。
 先月15日、太平洋上を飛行中のロサンゼルス発成田行き大韓航空2便の機内でのこと。風邪気味だった1歳2カ月の女の子が意識を失いました。乗り合わせていた日本人看護師の女性2人が応急処置にあたったものの、容体は悪化。海上を飛行中だったため、付近に緊急着陸できる空港もありません。そこで、機長が近くを飛んでいた大韓航空18便に専用無線で問い合わせると、幸運にもひとりの医師が乗り合わせていました。医師はすぐに操縦室に入り、機長や乗務員らの通訳を交えて無線で看護師と交信。女の子の容態を診察し、急性肺炎と診断しました。無線を通じて医師から出される指示に従って、看護師らが応急処置をし、女の子は危機を回避。成田空港に着陸後、待機した救急車で近くの病院に運ばれ、ただちに入院し、一命を取り留めたのです。
 このように、瀕死の患者を見事に生還させた例は他にもたくさんあります。そして、そんな奇跡を起こす手助けとなる医療技術はどんどん登場しているのです。
 火事で大やけどを負ってしまったとき、皮膚の移植手術しますが、自分の皮膚だけではやけどのすべてをフォロー仕切れない場合があります。そこで、登場したのが「スキンバンク」。これはドナーの体から採取した皮膚をシート状にし、-196℃で冷やして保存した移植用の皮膚のことです。ただ、スキンバンクはあくまで他人の皮膚。体に貼り付けても拒絶反応が起こるので、数週間すると剥がれてしまいます。登場したのが、この弱点を克服する最新の技術「培養皮膚」。病院に搬送された段階で、切手サイズの正常な皮膚を切り取り、これを培養液につけておきます。1カ月もすると、その切手大の皮膚が、はがきサイズのシート状に成長します。これをスキンバンクの皮膚が剥がれたところに貼り付けるという方法で、治療が重ねられるのです。
 続いて紹介するのは、脳死寸前の患者を救う究極の医療。今から27年前、真冬の池に落ちた3歳の子供が、引き上げられ病院に運ばれたときにはすでに死亡していたにもかかわらず、奇跡の復活を遂げました。通常、脳は傷ついたり、酸素の量が少なくなると、死んだ細胞が周りの脳細胞を殺していきます。ところが、真冬の水に浸かって仮死状態になったため、脳細胞の破壊が食い止められ、奇跡的に回復できたのだといいます。この現象がいま、救命医療の最前線で活用されています。その技術は「脳低温療法」。脳の中の温度を32〜34℃に保ち、脳細胞の破壊を防ぐ治療法です。事故による外傷、脳卒中、あるいは心臓のトラブルで酸素が少なくなると、脳細胞は壊れ始めます。このとき、脳内の温度は40〜44℃。この温度を約33℃に下げてやることで、脳が破壊していくプロセスを食い止めることができます。この治療法によって、事故で頭蓋骨が割れて脳の一部が飛び出した患者さえもが救命されているのです。日大板橋病院ではこれまで、脳死寸前の救急患者350人に脳低温療法を施しましたが、180人の救命に成功。そのうち160名を社会復帰させるまでに回復させたという実績があります。
 平成16年から医師の教育制度が変わります。現在の制度では、医学部を出て医師免許を取った後の臨床研修は、義務ではなく目標となっています。しかし、時代の流れと共に、さまざまな問題を抱えるようになりました。多くの研修医は勉強中という名目の下に、月に数万円の給与で働き、さらに生活のために夜間の当直バイトに行くなど悲惨な状況でした。そこで、臨床研修を義務化し、これまで、大きな問題になっていた過重労働や給与問題を解決し、アルバイトを禁止して研修に専念できる環境を国が保障しようということになったのです。そして、2年間で一定の科をある程度広く回り、医師としての基本的診療能力を高める教育を行うことにしました。この背景には、病気は診られても病人を診られないと言われるお医者さんが増えている現状があるようです。つまり、自分の専門の病気は診療できても、患者さんを「病める人」として心のケアを含め、幅広く診察できないお医者さんが増えているということに他なりません。どんな医師を育てたいのかという質問に、厚労省の担当者は「例えば、飛行機の中で急病人が出た時、すぐに自分が医者であると名乗れる人材を育てたい」と言っています。今まで、飛行機の中で名乗らなかったお医者さんが多数いたならば? 大変残念です…。まぁ、これは深読みですけど、いずれにせよ優れたお医者さんを育てるのには、教育が一番大切ですよね。
(写真家/医療ジャーナリスト 伊藤隼也氏・談)
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