あの日、米海軍横須賀基地で香取編集長が目の当たりにした空母キティーホークは、先週木曜日、行き先を明らかにしないまま横須賀を出航し、現在は沖縄近海を航行中です。イラク、そして北朝鮮に対して、睨みを効かせるのがその目的と言われています。この横須賀基地に駐留するのは空母キティーホークを中心とした第七艦隊。アメリカ海軍に5つある艦隊のうち最強と言われるのがこの第七艦隊です。現在、第一艦隊は、大西洋を広くカバーする第二艦隊に吸収されています。第三艦隊は東太平洋とベーリング海などの海域をカバー。第四艦隊はいまは第三艦隊に吸収され、第五艦隊は"世界の火薬庫"と呼ばれる中東を、そして第六艦隊は地中海を守備範囲としているのです。横須賀には1万人の軍人と1000人の軍関係者が駐留しています。その家族を含めると基地およびその周辺には2万人ものアメリカ人が暮らしていることになります。そのため、基地の中はアメリカ国民の生活に支障のないようにすべてが整い、まさに日本の中のアメリカといったようすでした。
そんな中で、ここ1週間イラク情勢はますます慌しい動きを見せています。日本時間29日に行われたブッシュ大統領の一般教書演説では「平和を守る為に戦う。アメリカは全力をあげ、平和の為に戦う」と、相変わらず強硬な姿勢を崩していません。2月中旬にはイラク周辺の軍兵力は18万人を突破すると見られ、空母も全部で4隻配備される見通し。さらにブッシュ大統領は、国連の承認がなくとも単独で軍事行動をとる姿勢をあらわにしています。各国メディアも連日トップニュースでこうした動きを伝えていますが、もはやアメリカとイラクとの戦争は避けられないのでしょうか。もし戦争が起こってしまえば、横須賀で従事する人たちも参加することになります。こうした状況のいま、横須賀基地の兵士達は何を思っているのか…香取編集長は同世代の兵士達に話を聞いてみることにしました。
最初に話を聞いたのは、「クッシング」でミサイル垂直発射塔の管理を担当しているケネスさん(30歳)。「どうして海軍に入ったんですか?」と編集長が質問すると、「ひとつは、海軍で働いていた父や祖父のことを尊敬しているからです。ふたつ目は、世界中の人に会えるから。旅が好きなんです」とケネスさん。また「戦闘経験はありますか?」という質問には「実際の戦闘は一度もありません。湾岸戦争の時、船で近くまではいきましたが…」と答えてくれました。このケネスさん、日本の人々や文化が大好きという方で、「ボクはアメリカが好きです」という編集長に、「アメリカはいろいろ荒れてきているから、日本の方が好きです」なんていう場面も。
アメリカ軍の軍隊は緊急時を除いては志願制。しかし、大統領権限ですぐに徴兵制に切り替えることが出来るのです。そんな緊急時に備え、アメリカでは18歳以上26歳未満の男子は徴兵登録をしなくてはならず、この登録をしないと31歳まで市民権を取ることが出来ません。市民権がないと政府機関で働くことができず、また学生ローンや奨学金をもらう資格を失うなど、様々な面で不利をこうむるといいます。かつて徴兵制が敷かれていた頃のアメリカでは、その時代の有名人も徴兵されました。エルビス・プレスリーも徴兵によって2年間の軍隊生活を送っています(その一方で、モハメド・アリは1967年ベトナム戦争中に入隊を拒否、大きな物議を呼びました)。志願制となった現在、軍の兵士の数は減少の一途。人気はありません。その理由のひとつが給料。最低ランクの2等水兵で基本給はおよそ1000ドル、日本円で12万円程度。仕官クラスでも最低ランクの少尉では基本給が2200ドル、日本円で26万円程度なのです。
ケネスさんに続いて編集長が会ったのはジェニーさん。「クッシング」に装備されている大砲を管理する仕事をしている女性です。香取編集長が「年齢聞いてもいいですか?」と遠慮気味にいうと、「24歳」との答え。自分より若い女性が大砲管理の責任者なんて…と編集長もかなり驚いたようすです。このジェニーさんに、「この船は座礁することがありますか?」などと、冗談で質問したりしていた編集長は、調子に乗って?「レオナルド・ディカプリオとキャメロン・ディアスが付き合ってるって本当ですか?」なんて質問も。それに対してジェニーさんは「ふたりが恋人かどうかって? 確かにウワサはあるけど…。キャメロンは凄い美人だから、すぐにもっと有名な人に乗り換えるんじゃない?」と冷静に答えていたのが妙におかしかったですよね。ちなみに、米兵138万人のうち15%が女性。19万9850人もの女性が、軍の仕事に従事しているそうです。
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