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 全国で歯の医療機関を訪れる患者の数は1日に117万人を越えます。一方、日本の歯科医の数は約8万2000人。
歯科医過剰といわれる中、歯の治療をめぐるトラブルも数多く報告されています。今回は虫歯や歯周病、事故などで大切な歯を失った時の治療について紹介していきます。
 歯を失った場合、義歯と呼ばれる人工的な歯を取り付けることで対応します。義歯には大きく分けると次の4つタイプがあります。

1. 差し歯…まだ歯の根元が残っている場合のチョイス。歯の根元を土台にして、人工の歯や金属の歯を被せたり、差し込んだりして固定します。
2. 入れ歯…いわゆる総入れ歯のように、歯が抜けてしまった歯茎の上に人工の歯を乗せるタイプ。部分的な入れ歯の場合、金属のフックやバネを周りの歯に引っ掛けて固定します。
3. ブリッジ…主に一本から数本の歯が抜けた時に選ぶ方法。義歯を取り付けるために周りの健康な歯を削り、そこにキャップを被せるようにして、義歯をはめ込みます。
4. インプラント…歯が抜けてしまった部分の骨に穴をあけ、そこにチタンで出来たボルトを入れて、そのボルトの頭に人工の歯を被せる技術。

この中で最近人気急上昇中なのがインプラント。「第2の永久歯」といわれるインプラントの長所と短所、そしてリスクやトラブルとは…?
 インプラントは、まず歯が抜けた部分の骨にドリルで穴を開け、そこにチタンで出来たボルトを埋め込みます。そのボルトが骨にキッチリ定着するのを待ち、再び歯茎を切開してボルトの頭部に人工の歯をかぶせるための金具を取り付け、そこにセラミックスなどで出来た歯を装着します。手術前の検査から、歯を被せるまでのトータルの期間は約半年。長くて1年かかります。インプラントは骨に固定するのでグラグラせず、入れ歯のような異物感もなし。自分の歯に近い感覚で噛むことができます。また、ブリッジのように、残っている他の歯を削ったりする必要がありませんし、外から見る限り自然の歯と変わらずキレイに仕上がります。

 しかし、そんなインプラントにもデメリットが。まずは高額の費用。医療保険が使えないので、費用はすべて患者の自己負担になります。医療機関によって値段の差が大きく、一本20〜50万円くらいが一般的。中には、10本入れて諸費用込みで1000万円弱を支払ったという人もいるといいます。また、インプラントは寿命の予測が難しいのも事実。ボルトを植えた骨の状態や患者本人のメンテナンスによって、インプラントの寿命が短くなることがあります。10年以上インプラントが持たない人の割合は、全体の約1割。極端な場合は数年でダメになるケースもあるとか。そして、医師によって成功率にばらつきが多いこともデメリットのひとつ。もともと欧米から導入された技術ですが、これまで歯科大学など、教育機関でインプラントについての教育がなかったため、歯科医は独自に知識や技術をつけるケースが多かったのです。そのため医師それぞれの技量の差が大きいといいます。

 そこで大切なのが歯科医選び。安全なインプラント手術のための、いい歯科医選びのポイントとは――。

1. “すぐインプラントを薦めてくる医師”には要注意!…インプラントは診断が一番大切。患者が本当にインプラントに向いているのか、デメリットもちゃんと説明してくれる医師が望ましいです。
2. アフターケアが万全かを調べる!…インプラントは、常に口の中を清潔にしないと寿命が早まってしまいます。少なくとも半年に1回、定期検査を行い、歯磨きの指導を始めとして歯科医が万全にケアをしてくれるかを事前に確認しましょう。
3. セカンド・オピニオン…高額な費用がかかる上に手術のリスクもあるので、セカンド・オピニオンでいろんな歯科医師の話を聞き判断しましょう。
4. 自分自身がいい患者になること…今度こそ歯を大切にしようという決意をすることが大切です。

 

 インプラントに続いて、今、歯を失った人たちのための最新医療技術が生まれようとしています。それは「再生医療」と呼ばれる技術で、乳歯・永久歯に継ぐ、自分の細胞で出来た第3の歯を生やすもの。入れ歯やインプラントの最大の問題は、歯の神経がないということ。歯の神経がないと、脳への刺激が行きません。だからこそ、自分の歯を再生させるということに意味があるのです。再生技術では、患者の腰やアゴの骨の中にある骨髄から、幹細胞と言われる細胞を取り出します。幹細胞とは、歯や歯の神経、骨などに変化できる多様性を持った細胞。取り出した患者の幹細胞を培養して増やし、歯に分化するように指示を与えた上で、患者の歯の骨の中に戻すと…神経の通った新しい歯を形づくり始めるといいます。現在はまだ実験段階ですが、ブタの歯を一本再生させることに成功してます。歯そのものではなく、歯の土台となる骨に関しては、かなりの再生技術が進んでおり、すでに医療現場で患者の治療に活用され始めています。実際、インプラントのボルトを埋めるには、骨がやせすぎていて不可能な患者に対しても、培養された幹細胞をいろんなタンパク質と混ぜて患部に注入することで骨が再生するのです。そこにインプラントを入れ込むという応用技術も登場しています。
 歯は健康とすごく関係があります。番組でも触れましたが、歯が全くない人は健康な歯が揃っている人に比べて、アルツハイマー病になる危険性が3倍、寝たきりになる可能性が10倍も高いといいます。つまり、自分自身の歯を長く使うことは、健康のために大変良いということなのです。そのためには、歯をきちんと磨くことが大切。良い歯医者さんはただ治療するだけでなく、写真やビデオを撮ったり、鏡で歯の状態を患者さんに見せ、治療について十分な説明をしてくれますし、その後の予防法や歯の維持の仕方を教えてくれます。皆さんも単純に歯を削ったり抜くことよりも、少しでも自分の歯を長持ちさせることを第一に考えた上で、良い歯医者さんを選び、十分なインフォームド・コンセントを受けるよう心がけて下さい。
(写真家/医療ジャーナリスト 伊藤隼也氏・談)
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