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 ホームページなどを通じて、全国の看護師を対象に実施した番組独自アンケート。
今回は「看護師のホンネSP」と題し、500を超える回答をもとに、医療現場の実態や問題点に関する看護師たちのホンネ・告白を徹底紹介します。
 全国の看護師に向けて番組が独自に行ったアンケートの有効回答数から割り出したデータによると、看護師たちの1カ月あたりの休日数は、平均7.8日。夜勤の数は平均5.1日。中には、1カ月で12回も夜勤をするという報告もあります。月収に関しては、手取りで平均23万8000円。約70%の看護師がこの状況に不満を抱いているという回答がありました。これだけでも、看護師がいかに過酷な条件で働いているかがわかります。中には、夜間は重症の患者を含めた40人あまりの入院患者を、たった2人の看護師でケアしなければならないという施設も。そのため、本来ならば医療ミスを防ぐためのWチェック(看護師がお互いの仕事を確認し合うこと)が徹底できずに、医療ミスを招いた例もあります。今年10月に厚生労働省が発表したニアミス事例は、78%が看護師によるものでした。が、このような過酷な状況では、看護師の負担が多すぎて、事故が絶えないのは当然です。大きな原因のひとつはマンパワー不足ですが、日本の医療現場では未だ解決されていないのが現状です。
 他にも興味深い質問に対する回答があります。「注射を10回打ったら完璧に打てるのは何回?」という質問への回答結果の平均値は8回。逆にいうと5分の1の確率で自信がないということになります。また、看護師たちが勤務する病院で「医療ミスがあったか?」という問いに対し、「はい」と答えたのは67%。そのうち2割のケースは、病院が患者側にミスがあったことを伝えなかったといいます。また「医師によって手術の上手い・下手はあるか?」という問いに対して、87%が「YES」と回答。特に腕の差が出るのは手術時間の長さ、縫合の痕。上手い医師なら整った傷跡で済むところが、下手な医師だと醜い傷跡になってしまうこともあるといいます。また、傲慢な医師に対する怒りも多く、特に看護師を見下した発言は後を絶たないそう。「看護師は医者の言うことを黙って聞いていればいいんだ」といった暴言が飛び交うこともしばしばあるといいます。患者への思いやりがこれっぽっちもない医師もいて、痛みを訴える末期がん患者に対する処置を求めたところ「どうせ死ぬんだから放っておけ。俺はもう帰る時間なんだ!」と言われたケースも報告されています。
 看護師たちの告白によって明かされた、驚くべき事態。これも日本医療の一つの現状なのです。では、患者の知らないところで発生している憂うべき出来事を食い止めるためには? 良識ある医療従事者たちが病院内の意識改革を促す――ここから始めなければならないのかもしれません。
 番組でも紹介したように、看護師の現場は非常に過酷です。ところが、さらに看護師を混乱させる状況があるんです。
 人間がすることは常に完璧であるとは限りません。ですから、安全な医療を実現するためには、人が間違えても危害を与えないようなシステムが必要とされます。ところが、日本の医療現場では「人は間違える」ということを前提としたシステム(=フール・プルーフ)がまだ十分に確立されていません。
 かつて、こんな事故が起こったことがあります。看護師が注射器に詰めた内服薬を、患者さんの鼻から腸に通じているライン(管)に注入すべきだったのに、静脈に挿入してある点滴のラインに誤ってつないでしまったのです。この背景には、注射器が腸につながるラインと点滴用ラインの両方に接続可能だったことがあります。もし、それぞれがまったく違う口径で誤接続が不可能なものであったら…。このような事故は起こりえなかったわけです。
 だからこそ、「人は間違えるもの」という前提に安全なシステム作りをすることが、いま早急に求められています。同時に、医師や看護師も高度な機器を正しく使えるように、日頃から勉強していく努力が求められると思います。何よりも、安全な医療を皆が考える姿勢を持ち続けることが、医療事故を防ぐ第一歩なのではないでしょうか。そして、より安全なシステム構築には莫大なコスト(費用)がかかるという点も無視できません。
(写真家/医療ジャーナリスト 伊藤隼也氏・談)
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